ぼくの百合子先生ー恋人は担任女教師

漱石

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第十九章 百合子の母早苗(3)百花繚乱(女達の過去と罪)

                                    
  百合子の部屋で、早苗が、その怒りを爆発させるのではないかと、緊張が高まっていたその時、隣のなつみの部屋では……。

  三人の女性が、壁に耳を当て緊張した表情で、互いの顔を見あわせていた。
  その女性達とは、一人はO市市長滝本真鶴四十五歳。一人は○○学園教頭夫人、小坂桜依五十歳。
  そして、最後の一人は、○○学園英語教師斎藤なつみ二十四歳だ。

 「…もう我慢できないわ。百合子さんを助けないと」
 真鶴は、百合子の部屋をノックした。いや、叩いた。
  ドンドン!
 「百合子さん、ドアを開けて!お母さまを説得してあげるから」
  「はい?」百合子の声がし、ドアが開いた。
  最初に真鶴市長が、続いて、小坂桜依、最後に斎藤なつみが、警官隊よろしく百合子の部屋に“突入“した…。

                                   1
 早苗は、突然何の前触れもなく、アパートの他人の部屋をノックするならまだしも、ドンドンと強く叩き、叫び、入ってきた女達に驚いて言葉もなかった。
 女達は、自分と娘との間に仁王立ちするかのように立ちふさがった。
  早苗は、激怒した。
  「なんなのですか、あなたたちは!無礼にも程があるでしょう」
  
  真鶴は、政治家特有の柔和な笑みを浮かべて挨拶した。
  「失礼しました。私、こういうものです」
  真鶴は、ハンドバッグから名刺を出した。
  早苗は、真鶴の名刺を読んで目を丸くした。
  「O市市長、滝本真鶴」
  「はい、知り会えて光栄です」
  続いて、早苗の前に、免許証を提示したのは、年配のしとやかな女性だった。
  「私は、○○学園教頭の小阪崇の妻、小阪桜依と申します。お初にお目にかかります」
  早苗は、また息が止まる思いがした。
 「教頭先生の奥様、娘の上司の…」
  「そういうことになりますわね」
  「失礼しました。知らぬこととはいいながら、娘がお世話になっております」
  早苗は立ち上がり、お礼をした。

 最後に斎藤なつみが名刺を丁寧に出した。
  「百合子先生の同僚の教師です。英語科を担当しています」
  早苗は、ようやくほっとした気分になるが、百合子を凝視した。
  百合子は、健太を抱きしめながら、わけがわからないといった顔で、首を横に振った…。
                                      ☆
    百合子、早苗、真鶴、桜依、なつみの五人は、小林ハイツの屋上の談話室に上がっていた。
  すでに日は落ちて、冬の夜は闇の帳を降ろしていた。
  談話室の柱時計は、夜の七時を回っていた。
  百合子となつみが、近所のWナルドに走り、ハンバーガーを大量に買ってきた。それで全員で夕食となった。
  早苗は、娘への怒りはとうに消えていた。
  逆に、娘百合子が、母親である自分も気づかぬうちに、教師として、女性として愛されている現実が、涙が出るほど嬉しかったのである。談話室は、いつしかキャンプ場のガールスカウトのテントの中のような雰囲気だった。

  最初に弁護に立ったのは意外にも桜依だった。
  百合子がおずおずと言った。
  「お母さん、帰らなくてもいいの。お父さん大丈夫?」
  「いいのよ。今日はお友達と羽目を外すって言ってたから」

 桜依が、改めて口を開いた。
  「あのー、旦那様、百合子さんのお父様のお名前は、「三上龍二」とおっしゃいませんか」
  「そうですが、主人をご存じですの」
  早苗が言った。
 桜依は、少女のように手を合わせて言った。
  「私、大学院で三上教授の授業を受けてました」
 「まあ、そうですの」早苗は、上機嫌に笑った。
  「教え方が上手くて、優しい先生でした」
   桜依は、ここで表情を変えた。
  「実は、私、○○学園の教師だったんです。で、今の主人は、学園の番長で、手のつけられない不良でした…」
  桜依は、小坂との馴れ初めを話して聞かせた。レイプされそうになったことも包み隠さず話して聞かせた。早苗も真剣に聞いていた。
   「…で、小坂と結婚して、今はとても幸せですわ。小林健太君はとても真面目な少年です。少なくとも、私の旦那様より優秀ですわ」
 早苗は黙ってうなずいた。
                         ☆
  次に話し出したのは、市長だった。
  「私は、小林健太くんとは深くは話していません。しかし、百合子先生とは、修学旅行やある集まりや私の娘のことで、、迷惑をかけたことがあります。つい、先日も…」
  百合子が赤くなる。
  「これは、市長としてではなく、一人の母親として、女性として百合子さん、百合子先生は、すばらしい女性です。その百合子先生が愛した小林健太君はすばらしい少年なのだと私は思っています」
  真鶴の話は終わった。
  
  なつみが最後に話し出した。
  「百合子先生のお母様、これから私がお話することは、ある意味聞き捨てならないことだと思います。でも、正直に話します。もし、お怒りになるのなら、私を打ってください。教師を辞める覚悟でお話します」
  「なつみ…」百合子はわかっていた。なつみが何を話すのかを…

                                  2
  「わ、私は…同性愛者です。そして…私は百合子先生を、百合子さんを、愛しています。なんども百合子先生と、レズ・セックスしています。最初は、私は卑怯にも、小林健太くんとの写真をネタに、脅して無理やりに…。ごめんなさい。でも、百合子先生は、私を受け入れてくれました。だから、だから。私は誓ったんです、自分に。百合子先生と小林健太君を一生かけて守ることを。百合子先生は、本当に小林健太君を愛しています。憎むなら、お嬢さんを汚した私を憎んでください」
  百合子は、なつみを抱き寄せた。
「いいのよ、なつみ。私だってあなたとのセックスを望んだのよ。健太くんがいながら…」
  談話室に音がなかった…

  早苗が泣きながら話し出した。
 「みなさん、ありがとうございます。娘、百合子のことをこんなにも大事に思ってくださって。娘は幸せものです。聞けば、健太さんは、幼い頃崖崩れでご両親をなくされたとか…にわかに二人の仲を認めることはできませんが、私も、百合子より若い高校生の頃、主人と出会って、主人は、私に生まれて初めて恋したと、結婚した後に聞きました。
  教育実習最後の日、あの人は、大きな体を小さくして、『これが最後のラブレターです。返事は要りません。捨ててください』と、背を向けたあの人に、私は、十六の高校生の“小娘“なのに、『六通目も七通目のラブレターは私が書きます』と言って抱きつきました。その夜結ばれて、結婚してできたのが百合子です」
  「女には、いや人間には秘密があるものですね」
  「お母さん!」百合子は、早苗に抱きついた。
  女たちは立場も事情も超えて抱き合って泣いた。
  ………
  時間は、十時を回っていた。三が日の三日、寒さは厳しくなっていた。
  「では、百合子さん。お母様は、私が責任持ってご自宅まで送ります」
  真鶴が言った。
  「よろしくお願いします」百合子は頭を下げた。
  「百合子、それじゃ、またね。あ、それと、健太さんと仲良くするのはいいけれど、
  「赤ちゃん」だけはだめよ。私、まだ四十六よ。五十前に“おばあちゃん“なんて言われたくないわ。わかった?」
  早苗は、真鶴に振り返り、「市長さんにこんなことお願いするのはだめなんでしょうけれど…市長、私、市長が好きになりました。
  プライベートの時は、「真鶴」と呼んでも構いませんか?」
  「良いですとも。私の方からお願いするつもりでした。桜依もお願いされています」
  小坂桜依は、早苗に一礼した。
  三人は、市長の私用車に乗って、小林ハイツを後にした。

  「ねえ、百合子」なつみは指を百合子の指に絡める。ハイツの三階だった。
  「なあに、なつみ」
  「明日で、お正月休み最後の日だから、百合子の部屋でセックスしましょう」
  「いいわ。健太くんには内緒よ」
 
  夜の十二時を時計の針が回ろうとする時、二人の美女が裸でキスしていた。
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