おお勇者よ、封印を解くとは何事だ!?

半熟紳士

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第1話 こんな異世界転生はイヤだ! 前編

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「おめでとうございます! 金ケ崎蛍《かねがさきけい》さん! あなたはたった今死にました!」

 ぱんぱかぱーんとふざけたファンファーレと共に、目の前の――多分女神様であろう人物はこうのたまった。

 初対面だが、ものすげー腹が立つ。

 いきなりなんだ? たった今死にました?

 それでファンファーレ?

 なにがぱんぱかぱーんだバカ野郎。

人の命なんだと思ってんだ。

 ・・・・・・と、突っ込みたいのをぐっとこらえ、周囲の状況を確認する。

「・・・・・・何も無いな。」

 僕と女神っぽい不審人物と僕達が座っている椅子以外、そこには見事なくらい何も置いていなかった。

 アニメだったら低予算と疑われるか、手抜きとネットで叩かれるかの二者択一を迫られるほどの空白っぷりだ。

 空白って言うのは、何も無いより、ほんの少し何かあったほうが空白度が増すというどうでも良い知識を得た。

 て言うかどこよここ。

「あぁ!? 失礼ですね! ここは愚か者には絶対見えないっていうアレな仕様なんですよ!つまりあなたは愚か者と言うことです!」

「人が死んだことにおめでとうって言うアンタもアンタだろ!?」

「えー? そうですか? あの時私は心の底からあなたを祝福したつもりだったんですけど。」

「祝福すんなや! 僕の生前が惨めみたいだろそれ!」

「え? 惨めだったじゃないですか。」

 そう言うと自称女神は、広辞苑並みの厚さを持つ本をパラパラとめくった。

「一日中学校に行かずにネットゲーム三昧で、気まぐれで外に出たら、昔仲の良かった女の子が嫌いなヤツといちゃいちゃしているのを目撃。夕日をバックに泣きながら走っていたら、居眠り運転のトラックにぶつかり川に落下。犬神家の一族みたいに足だけにょっきり水面から出て、なんだこいつふざけてんのかと思われ誰にも助けてもらえずそのまま・・・・・・」

「うぎゃああああああああああ! やめろ! やめてくれ!」

 死ぬ! 恥ずかしすぎて死ぬ! いやもうとっくに死んでるんだけどね!

「前にトラクターに轢かれたと思ったショックで死んだという人がいたそうですが・・・・・・それに並ぶほどの惨めな最期ですね! プーッ」

 容赦なく流れ込んでくる笑い声に、たまらず耳を塞いだ。

「トラックにぶつかった傷は腕を折ったくらいで済んだのに、犬神家やってふざけてると思われちゃったので誰にも助けてくれなかったみたいです。哀れですねー 惨めですねー 負け犬確定ですねー」

 ニヤニヤと笑いながら、女神はペラペラと続ける。

 あんまりなことに、これら全部僕の頭に直接響いてくる。

 つまり、防ぐ手立てが無い!

 最悪すぎる!

「うるせー! 自分が負け犬ってことはとっくに分かってんだよ!」

 あまりにうるさいので殴った。

 ぬいぐるみを殴ったような軽い感覚と共に、「ブベラッ」と自称女神も吹っ飛んだ。

「いててですよ・・・・・・神様始めて半年、ぶん殴られたのはあなたが初めてです。」

「バリバリの新入りかよ!?」

 なんで先輩神様はこんな奴《クズ女神》をのさばらせてんだ?

 さっさと左遷させろ。

「・・・・・・んで、そろそろ本題に入りたいんだけど。」

「えー? まだいたぶり足りないんですけどー」

「知るかあ!」

 ちっと舌打ちをした後、自称女神は椅子に座り直した。

「えーっと、あなたが金ケ崎蛍さんで間違いないですか?」

「逆に間違いだったらさっきの前振り一体なんだったんだ状態になるよな?」

「そこはアレですよ。謝ればなんとかなりますって。」

「なんないよ・・・・・・て言うか、アンタ本当に女神なのか?」

 背丈も僕の半分くらいしか無いし、白衣着てるしで、女神感ゼロだ。

「失礼ですね! 私は新入りですけどちゃんとした女神ですよ!」

 どうやら、神様世界の「ちゃんとした」は、僕達の世界と正反対の意味を持っているらしい。

「それでは、改めまして自己紹介を・・・・・・私の名前は女神アズサ。若くして死んだ人間の魂を異世界に転生させる仕事をしています。」

「はあ・・・・・・は? 異世界転生?」

 コイツ、ナニイッテンノ?

 異世界転生ってあれだろ? さえない主人公が剣と魔法の異世界で大活躍ってやつだろ?

 何回もその手のラノベは読んでるけど、そうか、僕もその一員に足を突っ込みかけているのか・・・・・・

 いきなりあんなことを言われたからうっかり忘れてたけど、僕は今かなり貴重な経験をしていることになるんだよな。

 文字通り、一生に一度あるか無いかの体験な訳だし。

「いや、は? じゃないですよ! 死んで、女神と会ったら、それはもう異世界転生するしか無いじゃないですか!」

「初耳だよそんな方程式!?」

 拳を握りしめて力説すんな。

「しょうがないじゃないですかーもう誰を異世界転生するかって会議で決まっちゃったんですよー」

 ・・・・・・ああ言うのってノリで決めてる訳じゃないのか。

 だからってなあ・・・・・・

「まあ私がごり押ししたんですけどね。」

「おいィィィィィ! 何やってんだアンタ!」

 何推薦してくれてんだよ。

 しかもごり押しって・・・・・・

 うれしさのあまり泣けてくる。

「まあまあ、そう怒らないでくださいよ。」

「怒らいでか! そもそも僕はスポーツ何もやってないんだよ!? そんなんで異世界転生するなんてしたら、スライムに瞬殺される自信があるよ!」

 悲しい自信ですねーと、女神。

「でもですよ蛍さん。異世界転生と言えば、何か忘れていませんか・・・・・・?」

 ・・・・・・あっ

「チートか!」

 そうだすっかり忘れていた。異世界転生と言えばチートがつきものじゃないか。

「そう、チートです。私達はギフトと呼んでいますけどね。それは、山を一撃で吹っ飛ばせるライフルや、触れただけで竜が死ぬ竜殺しの剣や、自由に人の心を操れる帽子等々・・・・・・それらのチート能力をひっさげた転生者の皆さんは、異世界で多大な戦果をあげられ、英雄としてもてはやされました――」

「おお・・・・・・」

 この胡散臭い女神はともかく、そのギフトは中々魅力的だ。

「――ですが、それはある問題を引き起こしてしまったのです。」

 先程の悪魔みたいな笑顔から一転、眼鏡をかけ直した。

 さっきまではイカれたロリマッドサイエンティストみたいだったのに、今ではチビの天才科学者に見える・・・・・・うん、やっぱり女神には見えないわ。

「確かにギフトは、腐ったミカンのような人間にも一騎当千の力を与えることが出来ます。ですが、その使い手の心が優れているとは限りませんよね?」

「そりゃまあ・・・・・・」

「力を振りかざし住民に害を与える者、仲間との輪を乱す者。その他諸々な問題が二重三重になってしまったんですよ。」

「・・・・・・あれ? でもギフトの使い手ってあんたたちが選ぶんじゃあ?」

「はい。大体私がごり押しで選んでいます。」

「全部あんたのせいじゃないか!?」
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