おお勇者よ、封印を解くとは何事だ!?

半熟紳士

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第8話 エアリの目的

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 結局、あの誤解は未だに解けなかった。。

 それどころか、どこかのアホのせいでさらに面倒な事態になった気がしてならない。

「ほほう、ここがお主らの住んでいる部屋か。少し狭いが、隠れ家としては悪くないの。」

 ベッドにごろりと横になりながら、どこかのアホは言った。

「そりゃ、魔王様にしてみれば狭い部屋だろうけどもさ・・・・・・て言うかそれ僕のベッドだからな。さっさと降りろ。」

 この宿屋はいわゆる冒険者専用の宿だ。

 かなりオンボロで狭いけど、安さを全面的に売り出している宿なので贅沢は言えない。

 が、やはり四畳半の部屋に2人きりというのは中々に狭い。

 部屋の中では主にベッドが僕の定位置になっているのに、今はエアリに占領されてしまっている。

 しょうがないので、僕は床にそのまま腰を下ろしているんだけど、はやり不本意だ。

 本来だったら、エアリと僕は別々の部屋になることが望ましいのだけれど、エアリの希望でまさかの相部屋になってしまった。

 1つの部屋に2人が住むと、1.5倍の料金がかかる。別々の部屋になるよりは割安なんだが・・・・・・

 これは何というか、精神衛生上よろしくない。

 宿屋のおばちゃんの『ガンバンな、少年!』という謎の声援や、同業者達の恨みがましい目線やらが、鮮明に思い出される。

 ぜってーあらぬ誤解を受けてんな、アレ・・・・・・

 今日はもう遅いから、明日なんとしても誤解を解かねばならない。

 て言うか、どんだけ誤解されてんだ僕。

 誤解されまくる星の下にでも生まれたのか?

「そう言うな。妾はお主に話さなければならないことがあるから来たのじゃぞ? 聞きとうないのか? 妾の武勇伝を。」

「武勇伝はそこまで聞きたくないけどな。」

 マジでいらねえ。

「ぬ? じゃあ何が聞きたいのじゃ?」

 翼をぱたぱたさせ、はにゃ? と首をかしげるエアリ。

「やっぱり、おまえの目的を知りたいな。」

「目的・・・・・・つまり、解き放たれた妾が何をしたいのかを聞きたい、と?」

「そう言うこと。僕はおまえの臣下だろ? それくらい知る権利はあると思うんだが?」

 今更だけど、エアリは魔王なのだ。

 と言うことは、僕達人族は敵と見なしている可能性も高いのである。

 なにせ、彼女を封印したのは他ならぬ人族なのだから。

「それもそうじゃのう・・・・・・お主の言うことはもっともじゃ。じゃがのー そのことが原因で蛍が妾を裏切る可能性もあるわけじゃろ?」

「当たり前だろ。そんなのに協力したら、死刑確定だからな。僕が望むのは安定した生活なんだ。危ない橋は渡らない派なんだよ。」

「ふむう・・・・・・危ない橋は渡りたくなるものじゃがのう・・・・・・じゃがの蛍、お主が妾を解き放っちまった時点で十分アウトじゃぞ?」

「・・・・・・そうだった。」

 ガクーンと項垂れた。

「そうじゃないか、もうこのアホの封印を解いちゃったじゃんか・・・・・・」

「アホとはなんじゃいアホとは!」

 跳んできた枕を受け止めた。

 思ったよりも、軽い衝撃。

 どうやら、エアリの筋力値はそこまで高く無いらしい。

「まあよい。教えてやろう、妾の目的をな。」

 立ち上がり、僕を見下ろすエアリ。

 その姿は、王に相応しい威厳に溢れている・・・・・・んだけど、ボロ宿&ベッドの上というのがイマイチ締まらない。

「妾は、この世界に散らばった覇王具すべての回収を目指しておる。」

 エアリの言葉に、僕はしばし固まった。

「・・・・・・えーっと、エアリ。覇王具ってアレだろ? この世界に108個あるっていう超強力な武具だろ?」

 覇王具

 それは、全ての攻撃を跳ね返す楯だったり

 それは、万物を切り裂く大剣だったり

 それは、街を一つ焼き払うゴーレムだったり

 平たくいってしまえば『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』×108、だ。

 すべてランクAの、反則級武器。

 ゲームだったら間違いなく運営から調整を食らう代物ばっかりだ。

 余りの強さから、それを巡る争いを防ぐため、人族最大の王国『ユステイツ』が管理している。

「然り、じゃが少し間違っておるな。覇王具は108あると言われているが、本当は115あるのじゃ。」

「ひゃ、115? その7つは、どこにあるん・・・・・・あ!」

 いた。

 僕の目の前に。

 いつの間にか座ってあぐらをかいているエアリは、ニヤリと不敵に笑った。

「『七つの大罪』――ゴワンフルティ、ラージュ、トレークハイト、エンビディア、グリード、アロガンツ、そしてラスト。どれもこれも、目に入れても痛くない奴らばかりよ。」

「入れたら死ぬよな・・・・・・」

 まあ比喩だろうけども。

「えーっと、洞窟でサーモン・ハンターを倒したのがラージュだっけ?」

「うむ。フルバーストでぶっぱしたら国一つ吹っ飛ばせるやつじゃ。もっとも、そんなことしたら、廃熱のために1ヶ月は使えぬがの。」

 すっげえ物騒な代物だな。

「あと、コレも覇王具じゃ。」

 そう言ってエアリは、着物の裾をつまみ上げる。

「覇王具トレークハイト。余りの着心地の良さから、指導者は政を怠り、数多の国を滅ぼした『傾国の布』を使って作られておる。」

「・・・・・・なるほど、だからエアリはそんな性格なのか。」

「コレは素じゃばかもん! ・・・・・・妾ほどの王になると、この程度はどうと言うことはないんじゃ。」

「でもさ、聞く限りただの服だよね? 着心地を除いちゃえば。」

「ふっふっふ。それだけでは無いぞ? 物理的ダメージを半減、魔法によるダメージも3分の1までシャットアウトじゃし、呪術に至っては完全に無効化する。」

「うへえ・・・・・・」

 布だろそれ?

 魔法とかは分かるけど、なんで物理攻撃にまで強いんだよ・・・・・・

「その他にも、すっごいのが色々あるんじゃが・・・・・・それはまたの機会じゃな。」

 少し残念そうに呟くエアリだが、僕は開いた口が塞がらない。

「ただでさえ強力な覇王具を、7つも持ってるって・・・・・・魔王とは言え、すごいな。」

「は? 当然じゃろう。覇王具はすべて妾が作らせ、妾の所有物じゃったのだからな。」

 さも当たり前のことのように、エアリは言った。

 ・・・・・・え?

「はああ!? え、ちょい、どう言うことだよ!?」

 枕を放り投げ、エアリに詰め寄る。

「そのまんまじゃよ。今世界に散らばってしまった108の覇王具は、すべて妾のものなのじゃ。」

 嘘だろ・・・・・・?

 あんなデンジャラスなものがすべてエアリの物だった・・・・・・?

「でも、エアリは魔王だったんだろ? 115もあんなものを作る必要があったのか?」

 エアリは、気まずげに尻尾をいじりながら続けた。

「あったのじゃよ。・・・・・・東の国のソルレヴェンテ家は、代々夢魔の家系でな。身体能力では他の魔王達の後塵を拝してきた。」

「でも、夢魔って幻影を使って戦うんだろ?」

 強いのになると、幻影のみで相手を殺すことも出来るそうだ。

 身体能力が必要になるとは思えない。

「じゃが、妾は、夢魔としてもへっぽこじゃった。妾が出来るのは、相手の夢を覗いたり、様々な夢を見せるという、児戯程度のものしかできんかった。貧弱な身体、夢魔としても半人前。それなのに、後継者は優秀な妹ではなく妾だったのじゃ。」

 当時は訳が分からんかったよ、とエアリは自嘲気味に呟いた。

「それは、すっごいプレッシャーだな・・・・・・」

「ああ、そうじゃ。そのことを知った他国は、今が攻め時と戦の準備を始めおった。そこで妾は考えた。他の国にぎゃふんと一泡吹かせられるようなことはできんものか、とな。」

「まさか、それって・・・・・・」

 この話の流れが、大体読めた。

「そう、そのための覇王具じゃ。劣った妾と他の魔王共の力量の差を埋めるには、最強の武器が必要だった・・・・・・と言うわけじゃ。」

「なるほど・・・・・・でもさすがに115は多すぎないか?」

「うむ。ぶっちゃけ、7つで十分じゃったの。」

 気まずげに、エアリは目をそらした。

「でしょうね! いくら何でも多いと思ったんだよ!」

「じゃって、頑張ってる職人達の姿を見ちゃったらのう・・・・・・今更中止とは言えんじゃろう?」 なんでそんなところでお人好しが発動しちゃったんだろうか。

「まあよいじゃろう!? 結局全て役に立ったんじゃし! けっかおーらいじゃい!」

 だだっ子のように言い訳するエアリ。

 可愛いけど、やってたことは全然可愛くねーんだよな・・・・・・

 本当に、なんでこいつの父親は、エアリを後継者に選んだんだろう。

 親バカか?

 まあ、エアリの親なら十分にある気がするけど。
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