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三話「DIYって楽しいやん」
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リリアとクリスの助力もありながら、なんとか住処を見つけたルイは、さてこれからどうするか、と頭を抱えていた。ギルド内の一時保護シェルターで寝泊まり出来るようになったが、ここに居られるのは一か月が限度である。それまでに正式な家と職を見つけなければいけない。
ジョブが勇者や魔術師、武闘家なんかであればすぐさまパーティーからのオファーが来るそうだが、ホストのルイには関係のないことだ。何よりスキルの飲料生成、これが謎すぎるうえに使い道が分からない。そう言った理由から、ルイ自身もどうしていかわからず、異世界に飛ばされてから一週間が経過した。
手元には四十万ゴールド。オリシャンが八本ほど降ろせるな、なんて考えながらも、やはりどうしていいかわからない。
「ホストやるっても、ここにはホスクラなんてないわけやし……俺が作るしかないってことか」
ローザリア王国では酒類に対する規制はなく、街のいたるところに酒場は存在するとリリアが語っていた。「あぁ見えてクリスさんの酒癖は最悪なのよ」とぼやいていたため、アルコールに対する抵抗感はないと見て取れる。酒場があるのなら、同じ酒類を提供するホストクラブも場所さえあれば営業出来ないものだろうか。
ここにはホストクラブやキャバクラ、そういったものの概念さえ存在していない。となると、とりあえず営業してみるのが手っ取り早いのではないか? と足りない頭でルイは思い立った。
—酒出せるんやったら、とりまいけるやろ!
そこからは早かった。異邦人でもレンタルできる、かつ無理のない家賃で営業できる空き店舗はないか、そうクリスに相談を持ち掛けた。
結論から言うと、あるにはあった。
隙間風が入り、扉の建付けも悪い、言ってしまえばボロい平屋の物件が。しかしメインの大通りからもそう離れてはいない、立地としては好条件だった。オーナーは気さくな女性で、ブラウンの短髪と燃えるような瞳が意志の強さを表している。ルイの拙い起業案にも「聞いたことないみせだな、いいじゃん、やってみたら!」と豪快に笑ってみせた彼女の名はソニアという。この辺りの土地をいうつか所有しているそうで、「ソニアに気に入られたらとりあえず安心ね」とリリアがってのけるほどには影響力がある人物のようだ。
家賃は一月十万ゴールド。いくらボロいとはいえ破格の値段だそうで「あんた、運良すぎない……?」とリリアが不審がるほどだった。
平屋ではあるが、カウンターの奥には四畳半ほどのスペースがあるおかげで、バックヤード兼ルイの居住空間としてどうにかやっていけそうな物件だった。
ソニアに前金として二か月分の家賃を支払い、家の修繕をするための材料を売っている店を紹介してもらった。魔導士を雇えば簡単に綺麗にできるが、そうなると三十万ゴールドはする、とのことだったのでルイ自身がこつこつと修繕していくしかなく、二週間ほどをついやした。隙間を埋めて、ペンキで店内を塗装して、今にも穴が開きそうな部分には木材を当ててトンカチを片手に釘で固定した。はたしてこれはホストの仕事なのか、おそらくはNOであろう。しかしルイ自身は「DIYじゃんテンション上がる―!」とぬかしながらペンキで頬を汚していた。
黒を基調に塗装を施し、ランタンで各テーブルを灯せるように魔道ランプを五つほど購入して、五卓ほど席を用意した。それで十五万ゴールド。手元にはこれまた十五万ゴールド、店舗を作ったにしては安上がりではあるが、これでは酒の仕入れができない。
「酒出せへんホスクラなんて……綺麗なミナミみたいなもんやん」
ルイの呟きは、自身が改装した店舗に静かに沈んでいった。
「どないしよ……、ソニアの姉貴に店紹介してもらうにしてもな……」
覇気のない顔をしたルイは、そのまま床に腰を下ろした。やはりアホはアホ、先のことは考えていなかった。
「水でも飲みたいな、水、どっかから湧いてこーへんかな。いでよ水!」
ルイは叫んだ。その瞬間、ルイの手中には五百ミリリットルのペットボトルが現れた。
「え!? 水!? ラッキー!」
アホである。なぜ水が現れたのか考察もせず、ただ水が出てきてラッキー、で済ませられる能天気さは天性のものだろう。それが吉と出るか、凶とでるのか、ルイ自身にも、誰にも分かるものではない。
「……もしかして、これってスキルか?」
ようやく自身のスキルの存在を思い出したルイは、試しに他の飲料も生成できるのか試みた。
「ビール! コカレロ! 角瓶! フィリコ! エンジェル! 鏡月! 黒霧! テディ! モエ! ドンペリ!」
矢継ぎ早に叫びまくったルイの足元には、先ほど口にした酒たちがずらっと並んでいた。その様子は異常というか、ホストクラブでこの酒たちに全て出くわすとなると三桁会計になることは必須だ。その感覚が染みついているルイとしては、この状況は顔が真っ青になりそうだった。
「ま、まじか」
ホストクラブでの料金も恐怖であるが、これだけスキルを使用しても顔色を変えない、体力の消耗も魔力の消耗も感じさせない塁の方が異常であることに気が付かないのは本人だけだった。
ジョブが勇者や魔術師、武闘家なんかであればすぐさまパーティーからのオファーが来るそうだが、ホストのルイには関係のないことだ。何よりスキルの飲料生成、これが謎すぎるうえに使い道が分からない。そう言った理由から、ルイ自身もどうしていかわからず、異世界に飛ばされてから一週間が経過した。
手元には四十万ゴールド。オリシャンが八本ほど降ろせるな、なんて考えながらも、やはりどうしていいかわからない。
「ホストやるっても、ここにはホスクラなんてないわけやし……俺が作るしかないってことか」
ローザリア王国では酒類に対する規制はなく、街のいたるところに酒場は存在するとリリアが語っていた。「あぁ見えてクリスさんの酒癖は最悪なのよ」とぼやいていたため、アルコールに対する抵抗感はないと見て取れる。酒場があるのなら、同じ酒類を提供するホストクラブも場所さえあれば営業出来ないものだろうか。
ここにはホストクラブやキャバクラ、そういったものの概念さえ存在していない。となると、とりあえず営業してみるのが手っ取り早いのではないか? と足りない頭でルイは思い立った。
—酒出せるんやったら、とりまいけるやろ!
そこからは早かった。異邦人でもレンタルできる、かつ無理のない家賃で営業できる空き店舗はないか、そうクリスに相談を持ち掛けた。
結論から言うと、あるにはあった。
隙間風が入り、扉の建付けも悪い、言ってしまえばボロい平屋の物件が。しかしメインの大通りからもそう離れてはいない、立地としては好条件だった。オーナーは気さくな女性で、ブラウンの短髪と燃えるような瞳が意志の強さを表している。ルイの拙い起業案にも「聞いたことないみせだな、いいじゃん、やってみたら!」と豪快に笑ってみせた彼女の名はソニアという。この辺りの土地をいうつか所有しているそうで、「ソニアに気に入られたらとりあえず安心ね」とリリアがってのけるほどには影響力がある人物のようだ。
家賃は一月十万ゴールド。いくらボロいとはいえ破格の値段だそうで「あんた、運良すぎない……?」とリリアが不審がるほどだった。
平屋ではあるが、カウンターの奥には四畳半ほどのスペースがあるおかげで、バックヤード兼ルイの居住空間としてどうにかやっていけそうな物件だった。
ソニアに前金として二か月分の家賃を支払い、家の修繕をするための材料を売っている店を紹介してもらった。魔導士を雇えば簡単に綺麗にできるが、そうなると三十万ゴールドはする、とのことだったのでルイ自身がこつこつと修繕していくしかなく、二週間ほどをついやした。隙間を埋めて、ペンキで店内を塗装して、今にも穴が開きそうな部分には木材を当ててトンカチを片手に釘で固定した。はたしてこれはホストの仕事なのか、おそらくはNOであろう。しかしルイ自身は「DIYじゃんテンション上がる―!」とぬかしながらペンキで頬を汚していた。
黒を基調に塗装を施し、ランタンで各テーブルを灯せるように魔道ランプを五つほど購入して、五卓ほど席を用意した。それで十五万ゴールド。手元にはこれまた十五万ゴールド、店舗を作ったにしては安上がりではあるが、これでは酒の仕入れができない。
「酒出せへんホスクラなんて……綺麗なミナミみたいなもんやん」
ルイの呟きは、自身が改装した店舗に静かに沈んでいった。
「どないしよ……、ソニアの姉貴に店紹介してもらうにしてもな……」
覇気のない顔をしたルイは、そのまま床に腰を下ろした。やはりアホはアホ、先のことは考えていなかった。
「水でも飲みたいな、水、どっかから湧いてこーへんかな。いでよ水!」
ルイは叫んだ。その瞬間、ルイの手中には五百ミリリットルのペットボトルが現れた。
「え!? 水!? ラッキー!」
アホである。なぜ水が現れたのか考察もせず、ただ水が出てきてラッキー、で済ませられる能天気さは天性のものだろう。それが吉と出るか、凶とでるのか、ルイ自身にも、誰にも分かるものではない。
「……もしかして、これってスキルか?」
ようやく自身のスキルの存在を思い出したルイは、試しに他の飲料も生成できるのか試みた。
「ビール! コカレロ! 角瓶! フィリコ! エンジェル! 鏡月! 黒霧! テディ! モエ! ドンペリ!」
矢継ぎ早に叫びまくったルイの足元には、先ほど口にした酒たちがずらっと並んでいた。その様子は異常というか、ホストクラブでこの酒たちに全て出くわすとなると三桁会計になることは必須だ。その感覚が染みついているルイとしては、この状況は顔が真っ青になりそうだった。
「ま、まじか」
ホストクラブでの料金も恐怖であるが、これだけスキルを使用しても顔色を変えない、体力の消耗も魔力の消耗も感じさせない塁の方が異常であることに気が付かないのは本人だけだった。
応援ありがとうございます!
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先が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^^)
ありがとうございます!
二話は1/6更新予定なので是非二話も読んで頂ければ嬉しいです!