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 私は誰かと狭い廊下を歩いていた。 

 幅は2.5メートル程。片側は外の見える大きな窓ガラス、もう片側は小部屋があるのか、ドアが等間隔で並んでいる。大きな窓のお陰で暗くはないが、静かで陰気臭さが漂う場所だ。 

 ドアは頑丈そうで、外から中の様子を伺い知る事は出来ない。 

(何の施設だろう…) 

 共に歩いてる誰かが、私に話しかける。 

「お前の姉さんだが、」 

 窓に結露を見つけ、今が寒い時期だと気づく。 

「助からなかった。運が悪かったとしか、言いようが無い」 

 やはりな、と私は無言で納得する。誰かは続けた。 

「仮にもう少し早かったとしても、間に合わなかっただろう」 

 通路の突き当りに、ガラス貼りの部屋があった。中には、テーブルと椅子、石油ストーブ、腰の高さ程の棚が備え付けられている。 

(管理人室、か) 

 促され入室すると、管理人室を挟んだ向こうにも、同じ廊下と部屋が見えた。ところが。何気なく見た脇の方にも、同じ物があった。 

(何なんだ、この建物。中心にこの部屋があって、そこから丁度120度になるように、3つの廊下と小部屋が配置されてる!不気味…) 

 私の表情を読んだのか、誰かはまた口を開く。 

「察しの通り、ココは応接室じゃない。監視の為の詰め所さ」 

「監視?」 

「ええ。おかしな事があったらすぐに駆け付けられるように、全部の小部屋の中心にある」 

 むしろ、監視されてるのはこっちの方みたいな圧迫感を感じる、嫌な部屋だ。 

(そもそもここは何の施設なのだろう。刑務所?病院?) 

「…姉は、どうしてここに入れられたんでしょう?」 

「入れられたのではなく、入るべくして入った。決まっていたのさ」 

 私に姉の記憶は無い。それはそうだ。存在を知った私が、ここを突き止めた時、もう姉はこの世から居なくなっていたのだから。 

「姉は何か言ってませんでしたか?」 

「お父さんの事、気にしていたな。と言っても一言二言だが」 

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