【完結】僕たちのアオハルは血のにおい ~クラウディ・ヘヴン〜 

羽瀬川璃紗

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ハルシネイション・ヘヴン

紺野輝暁

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 移動中の車内で、穂香は無言でタブレット端末とスマホをいじり倒していた。


 向かった紺野邸、輝暁が2歳になる息子を抱っこしつつ、出迎えた。

「へえ、おたくが望の彼女?」

「はい」

 輝暁は目を細め、穂香を見る。違和感を覚えたが、輝暁はすぐに口を開く。

「誘拐じゃねえわけ? あいつ有名人じゃん」

「身代金の要求どころか、悪戯電話すら無えよ」

 皇介の言葉に、輝暁は面倒くさそうに頭を掻いた。
 穂香が尋ねる。

「飲み会が終わってから、望を見かけたり連絡は取りませんでしたか?」

「見てねえし、連絡も取ってねえよ」


 輝暁はそう答えたが、望の携帯に履歴があるのは事実だ。話を早く終わらせたいのが見え見え。


 少しムッとした広空だが、穂香が動く。

「…最低!!」

「は?」

 3人は思わず穂香を見た。

「やっぱり謝って無かったんだ!」

「穂香さん? どうしたの?」

 皇介が問うと、穂香はまくし立てた。

「居なくなった前日? 多分、飲み会が終わってすぐの頃でしょうよ、夜中のイイ時間に電話来たの。
『地元の先輩怒らせた、かくかくしかじか』って! こっちは寝てたのよ⁈ そしてウジウジ『どう謝ったらいいかな?』って相談よ⁈
すぐ謝ればって言ったら、『いや遅いからもう寝てるかも』とかって…。じゃあ明日の朝イチで謝りなよって、眠いとこアドバイスしたのに、紺野さんに連絡一切無しって…!
夜中あんなに気にしてたくせに、寝て起きたら忘れたのね。
…何なのアイツ!!」

 身振り手振りを交え、本当にあった事の様に穂香のアドリブが炸裂した。

 演技力に少し引いた広空と皇介をよそに、輝暁は少し笑った。

「ははっ。望、女々しいトコおたくに見せんだね」

「…やだ。すみません、私ってば」

 穂香が目で訴えて、皇介が言った。

「テルさん、本当に望から何の連絡も無かったの?」

「あー…、そういや来てたかな」

 輝暁はそう言うと、息子を抱いたまま携帯を出して操作した。

「…コレだな」


 見せられた画面には、7月17日午前11時半過ぎの望からのキャリアメール。

 『調子乗って嫌な気分にさせてごめんなさい』の本文。対人関係はマメな望らしい内容だった。


 輝暁は続けた。

「俺、この時丁度起きて風呂入ってたトコだったからさ。上がって少しして、別に怒ってねえよってメールして。
…まさか行方不明になるなんて。メールじゃなくて電話すりゃあ良かった」

「…私も、こんな事になるとは思わなくて。時間を戻せるものなら、って思ってます」

 穂香も目を伏せる。輝暁の息子が床に降りたがったので、輝暁は玩具を渡して降ろして遊ばせた。

「1つ聞いていい? 何で赤峰さんと星野さんは、こっちで色々聞き回ってんの?」

 穂香が質問に答える。

「天番があてにならないからです。スランプ同士で逃避行したとか、実はデキてて駆け落ちしたとか、そういう風にしか考えてないみたいなので」

 輝暁は感心したように頷いた。

「成程ねえ。こっちに来てる時に居なくなったなら、こっちの人に訊いた方がいいって感じ?」

「私はそう思ってます」

「東京の方のさ…、知り合いは全部当たった? 俺からすりゃ東京の知り合いの方が怪しいわ。
パンピ一般人だとしてもバックに何がついてるか判んねえじゃん? ヤーさんとか宗教とか」

 皮肉めいた笑みを浮かべた輝暁へ、皇介が反論する。

「望や真姫は人を見る目あるよ。少なくとも変な奴とはつるんだりしない」

「…だといいな」

 輝暁の言い方に妙な引っかかりを抱くも、広空は尋ねた。

「望と真姫は、居なくなった時に2人で居たと思いますか?」

「じゃねえの? 俺は真姫は望の巻き添えをくったと思うよ」

「巻き添え?」

「望を狙う奴が居たんじゃないかってこと。真姫はたまたま一緒に居たんで、彼女と勘違いされてんじゃねえ?」

 輝暁に皇介が意見する。

「相手が何にせよ、車の周りに争った跡が無えらしいよ?」

「だーかーら、油断してだよ。東京のよく知ってる奴がやべえ奴連れて来てさ!」

 輝暁はアイスコーヒーを口にし、続けた。

「彼女さんには悪りいけど、望の人間関係、本当にクリアなの?」




 輝暁の言動と態度が気になる。車に乗り、エンジンをかけると、唐突に穂香が言った。

「アイス食べたい」


 確かに今日は昨日に比べ暑い。3人はコンビニへ向かった。


「車、汚しちゃうと悪いから、ベンチで食べよ?」

 穂香の提案で、3人は店外のベンチに座った。暑いけど、取り敢えず日陰。
 ソーダ味の氷菓を食べつつ、穂香が尋ねる。

「曇天のコンビニってココだけ?」

 最中アイスを食べつつ、皇介が返事する。

「そうっすよ」

「ココの人達は買物どうしてるの?」

「テルさんち行く途中にあった小さいスーパーと、農協直営のスーパーと、あとはふもとの方にある何件か。
基本的には車無えと買い物厳しいっすね」

「…いいじゃん。ウチなんて最近まで無かったぞ」

 コーラ味の氷菓を食べつつ、広空は苦笑する。


 雨天は資本経営の出店が、つい最近まで見送られていた(『隔離対策』は、7年前にやっと撤廃)。


 目の前の道路を、中学生数人が自転車で通る。穂香が言った。

「『ふもと』へ?」

「でしょうね。他のルートもありますけど、ココが近道」

「皇介くんは、実家帰った時、地元の友達んち行くなら歩き?」

「場所によりますよ。テルさんちとか、同じ集落なら歩くけど、スーパーより向こうなら車かな」

「…車使う時は必ずココ通る?」


 広空はその言い方に疑問を覚えた。何を確認してるんだ?

 皇介は気にせず答えた。

「まあ、1番広い道路ですしね」

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