異世界転生チートに反旗を翻せ!

三原 柚木

文字の大きさ
40 / 52
土の大陸編

芽吹く大地

しおりを挟む
 放置していた商人と警備兵を連れて、陽介一行は地上へ戻ってきた。久しい日の光を眩しく思えることが嬉しかった。

 先に戻っていた土の民は、アーシアを弔う儀式の最中だった。枯葉の上に置かれている遺体の手をテラが優しく握ると、ゆっくりと地面に沈んでいった。
 また命が巡り戻ってくることを祈る歌が歌われ、陽介は複雑な心境で事が終わるのを待っていた。

「我が地を戻さねば」
 儀式が終わるや否や、テラは力込めて両腕を地面に突き立てた。乾燥し切った枯れ木には新たな芽が生え、草花が辺り一面に広がった。死に絶えていた土に新たな命が吹き込まれ、成長途中で萎れてしまった作物は瞬く間に実を付けた。

「これが、土の精霊の力……。すっげぇ! あっという間に色々生えてきた!」
 明らかに踏みしめる土の具合が違う。カチカチだったものが、ふかふかに変わったようだった。

「むっ……」
 力を使い切ってしまったテラはフラフラと倒れこみ、陽介がなんとか支えた。
「大丈夫か!」
「急に大きな力を使ったから疲れたのだろう。休ませてやってくれ」
 陽介はテラを空いている家まで運び寝かせ、フラムはほんのり暖かい炎の玉を吐き、その周囲に浮かべた。

「この状況を立て直すには物資も必要ね。ちょっと行ってくるわ」
 リベルタは大鷲の姿に戻り、風の大陸まで飛んでいった。
「私だって」
 アリエッタが歌うと水が集まって、雨のように大地へ降り注いだ。長い間乾いていた地面に染み渡り、潤っていく。

(よかった、アリエッタは自分の意志で歌えるようになったんだ……!)
 陽介は苦しく錆びついた歌声が、清らかな美しさを取り戻したと知って内心笑顔になったが、変に思われたくなくて表情に出さないよう唇をかみしめた。

「私たち、これからどうすれば……」
 聖都から送られてきた訳ありの少女たちは、地上には出てきたものの戻るところもなく、土の民とは距離を置いたところに固まっていた。ビクビクと怯えたままでいる。

「ならここで暮らすのはどうかしら?」
 様子を見に来たサビアは、少女に手を差し伸べた。
「でも、私たちがいたらご迷惑になってしまいます……」
 脱走したと知られたら、聖都で起きていることを話した自分たちは処分されるだろう。一緒にいれば土の民まで巻き込んでしまうかもしれないと思うと、手を取れない。

「私たちはもう奴隷じゃない、あなた達も。生きましょう」
 少女はサビアの手を、涙を拭って握り返した。

 陽介はリベルタが話を付けて運んできた物資の配給をしたり、土の民と一緒になって家を建て直し、ロッチャの指揮下に入った警備兵と畑を耕したりと、まあまあな体力で出来る限界まで復興を手伝った。異世界から来たことを告げ、エルメスを倒し連れ帰ることも話した。

「陽介、向こうの様子を見てきてくれよ」
「任せてくれ! ほらそこ、手を抜くなよ! きっちり見てるんだからな」
「くっそぅ」
 懸命に手伝う陽介にロッチャは信頼を寄せ、商人たちの監視を任せた。警備兵と違い悪知恵のよく回る商人たちは、度々脱走を目論んだり、なんでもいいからくすねようとしたり、外部と連絡を取ろうと隠れてコソコソ行動しようとしたり、没収した金貨を取り戻そうとしたが、監視業務で目と勘を鍛えられた陽介からは逃げられなかった。

 数週間かかったが、聖都からの襲撃も無く平穏無事な日々が続いた。水と食料と炎が確保できるようになり、最低限ではあるが生活が可能という程度まで戻った。テラの体力も回復してきたところで、いよいよ聖都への出発準備も整った。

「さて、と」
 陽介は商人たちを睨みつけて言う。
「連れて行ってもらおうか、聖都まで」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...