超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

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第2章 学園下克上編

37. バレるフラグは回収させない

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「何故にですか…?」

 これからログハウスを秘密の練習場として使うのに、いきなり一戦を申し込んできたフレイ。
 レベル差ではこちらが当然勝つが、それでも強敵に挑んでみたいという魔族としてのさがなのか…。フレイはこの間俺に助けられて情けないと感じ、強き者を義として重んじる黒竜こくりゅう族としての意地なのか…。このままでは明け渡さないというか、そこ俺のログハウスなんですが…??

「わかったよ、一戦付き合えばいいんだろ?」
「おっ流石オルタ!分かってんじゃん!」

 俺の了承にクラス全員が驚いた。

「ええ!?オルタ、辞めた方が…」
「そうだよ!怪我だけじゃ済まないって!」

 クラスの皆は心配して声をかける。世間的には魔族の方が圧倒的に戦闘力が高いというのが常識だ。
 だが…前世で死ぬほど"アウェイクスピリットオンライン"をやり込んでいた俺に関係のない話。戦闘力が高いという事は、要はレベルが高い事だ。そのレベルさえ超えてれば、人種族でも勝てる事はある。

「心配すんなって、俺に任せとけ」

 心配している皆に、俺は宥めるように言った。そして、フレイと対峙する。

「それじゃ行くわよ、オルタ!」
「…来い!」

 俺とフレイは、一切の油断もしないまま真っ向からこぶし同士をぶつける。
 そりゃもう周りに風圧が発生するほど、それからは拳と足蹴りのぶつかり合い。

「なんだよアイツ、魔族と互角に張り合ってるぞ…」
「オルタ君…」
「そういえばアイツ、体術も得意だって言ってたな…」
「バカいうな!体術で魔族についてけるか!?」

 目の前の超戦士が如くの戦いに、唖然としながらみている皆。当然魔術師は冒険者や兵士に比べ、体術を使用する機会は少ない方だろう。だが、"アウェイクスピリットオンライン"でもある通り、この世界でも身体強化魔術は存在する。それをフルに発揮して、目の前の最強と謳われる黒竜こくりゅう族と格闘しているのだ。

「(このままじゃ埒が明かない、これはどうする…!)」
「!」

 フレイが何か行動する。これは…魔術の準備だ!

『炎よ、焼き払え――――フレイムボール!!』

 出たッ!火属性が得意な黒竜こくりゅう族の十八番『フレイムボール』。一般的な基本魔術の『ファイアーボール』を3個同時に発射できる上位魔術。一気に3つも飛び出てクラスメイトは驚くが、俺は慌てない。

土術どじゅつ、ソイルウォール!!』

 地面に両手を叩きつけ、そこから数人分を守れる土の壁を立てる。『フレイムボール』はそれに直撃するが、土の壁は崩れるどころかびくともしていない。

「防いだ!」
「やるわね…!でもこれはどう!?」

 こちらからでは相手の姿が見えない。次の魔術に対応する為、俺はフレイの言葉に耳を全集中して聞き逃さないようにする。

『炎の竜よ、あの壁を壊せ!――――ドラゴンブレス!!』
「!」

 来た。さっきの『フレイムボール』の更に上位である『ドラゴンブレス』!先程とは違い、炎自体がまるで竜の姿をしたように土の壁に襲い掛かる。威力は段違いで、俺の土の壁ソイルウォールを派手な音と共に壊した。あまりの威力に女子たちは悲鳴を上げる。

「ど、どうなったんや…?」
「オルタ…!」


「―――――結界分身キューブクローン
「!?」

 破壊によって出た土煙から現れたのは、2のオルタ・クリムゾンだった。
 突然の出来事に、その場全員が驚愕する。

「えっ!オルタが2人!?」
「あれって、分身なのか…!?」

 フレイは考える。自身の経験則で分身を囮に使う魔術師は幾度となく見ている。
 分身自体を作り出す魔術は珍しい部類であり、咄嗟に反応が遅れた。2人のオルタ・クリムゾンはそれぞれ肉弾戦を繰り出してくる。

「くっ、しぶといわね!でも…!」

 フレイだって負けていない。肉弾戦ならば、人間に擬態している黒竜こくりゅう族も得意分野であった。戦闘部族はたとえどのような姿になろうと、戦闘技術を怠っていないよう訓練しているからだ。

「ぐわっ!」
「捕まえた…なッ!?」

 一人のオルタの頭を掴み、そのまま地面に叩きつける。しかし、パリンッ!と軽い音が響いて体中が透明な立方体のクリスタル状に変化して消え失せた。これは分身体だ。

「捕まえた!」
「なッ!無駄なことを!」

 動揺している間に、今度はオルタがフレイの足首を掴む。
 フレイはそれに向かって『ファイアーボール』を繰り出すが、当たった衝撃と同時に先程と同じく立方体のクリスタル小結界の群衆となって飛び散る。これも分身体…じゃあ本物は何処にと思った刹那。

「動かない!?」

 足に違和感を覚えたフレイは下を見る。
 そこには、先程分身が破壊された時に構築した立方体のクリスタル小結界が、自分の両足を拘束するように張られていたのだ。あの足首を捕らえた時、詠唱も無しに早業で仕込んだのである。

結界拘束キューブ・ロックだ、隙あり!!」

 フレイが焦っているその隙に、オルタの右手には既に水属性を仕込んだ衝撃立方体キューブ・インパクトが出来上がって、それを彼女に当てようとした。

「なめないでよね!!」
 
 最後の悪足掻わるあがきと言わんばかりに、フレイも自分の手に火魔術を凝縮する。まさか、自爆覚悟でこっちと相殺する気か!?

『フレイムボール!!』
衝撃立方体キューブ・インパクト!!」

 二つの魔術がぶつかりあい、お互いの身体に張っている魔術防壁をガリガリと削っていく。しかし…

「とんでけえええ!!」
「うわあああああ!?」

 威力に分があったのか、フレイが10メートル先まで飛ばされた。これは勝負ありだ。

「あいたた…やっぱり強いわね、オルタ」

 倒れながらも両手を上げながら降参するフレイ。
 危なかった…!まさか最後は、直接魔術防壁を無理やり削るような作戦とは。エフェクトが発動してたから良かったけど、皆に俺の身体からレインボーオーブを落とされるのを見られるところだったぞ…!?

「自爆覚悟か、全く自重しろよ(色んな意味でな!)」

「すげえ…!黒竜こくりゅう族を倒しちゃった!」
「いや倒したっていうより、負けを認めたようだぞ?」
「さっきの魔術も何?また新魔術!?」

 勝負が終わり、最初から最後までヒヤヒヤしながら見ていたクラスメイト。各々がオルタの心配している中…

「オルタ君!大丈夫だった!?」

 俺がケガをしているのが心配だったのか、メリューさんが回復魔術をしてくる。
 うん、心も体もしんみりとぽかぽかと暖かさが伝わってくるよ。

「大丈夫だよメリューさん、破られたのは魔術防壁だけだし」
「それでも心配してますよ!もうギリギリの戦い方でしたし!」
「なになに~あなた達付き合ってんの~?」
「「ち、違います!!」」

―――――

「成程、みんなのレベルアップの為にね」

 事情を聞いたフレイは納得した。

「まぁ事情は分かったわ。みんながオルタみたいに強くなりたいのも理解できた。確かに、オルタのやり方で練習すれば強くなるのは確実だわ」
「ほ、本当なのか?」
「えぇ、もしかしたら…私達黒竜こくりゅう族に追いつけるくらいにね」

 オルタの常識が、魔族に通用できる事実にクラスメイト達は驚きを隠せずにいた。魔族相手に戦えるとなれば、使わない手はない。それに、先程見せつけられた戦いが証拠であり興奮を覚えたのは無理もない。

「あー、それとオルタ、については大丈夫なの?」
「へっ?オルタ、取引って何のこと?」
「えっいやその…」
「近々、コイツとの組織と物品の取引するのよ」
「「「はぁー!?!?」」」

 フレイのヤツ、国家機密事項を堂々とバラしやがって…。
 もうすぐその日がやってくるというのに、何事も起きなければいいがと思っているが。その日はとんでもないことになるとは、まだ誰も思っていなかった…。
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