花散る、燃ゆる。

冬愛Labo

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手が離れた瞬間、糸の切れた人形のように龍馬はその場に崩れ落ちた。
荒い呼吸が、静かな、あまりに静かな寝所に酷く卑猥に響く。
それを見下ろしながら、晃はゆっくりと、獲物の喉元を定める蛇のように目を細めた。
「……今日も、よく効いた」
低く、喉を鳴らすような呟き。
龍馬はまだ、先ほどまで視界を塞いでいた布の感触を肌に感じていた。暗闇の中で研ぎ澄まされた嗅覚が、晃の纏う重苦しい沈香の匂いを、逃げ場のない毒のように吸い込んで離さない。
「当主様……あの……私は、」
震える声で言葉を紡ごうとするが、何を乞えばいいのかさえ分からない。
自分が汚されたのか、それとも慈しまれたのか。その境界すら、晃の冷たい指先に溶かされてしまった。
「下がっていい。……この“渇き”は、お前という泥の中でなければ収まらん」
その一言で、部屋の空気が一変した。
視線が、物理的な重さを持って龍馬を圧し潰す。
「私には……そんな、価値など」
「ある」
即座に遮られる。
「お前には、私が決めた価値がある。……お前が壊れるその瞬間まで、私の所有物としての価値がな」
静かな声は、抗うことを許さない絶対的な命令だった。龍馬は言葉を飲み込む。
納得などしていない。けれど、晃の瞳の奥に広がる底なしの闇に、これ以上触れてはいけないと本能が叫んでいた。
「……はい」
消え入るような返事を聞き届けると、晃は優雅な所作で背を向けた。
「子爵から、夜会の招待が来ている」
「……夜会、ですか」
「ああ。……お前も連れて行く」
その名を聞いた瞬間、龍馬の指先がわずかに強張った。
脳裏をかすめるのは、甘く、毒々しい花の香り。そして、晃とはまた違う、執拗に肌を這う熱い感触。
(……あの方も、あそこで僕を待っているのか)
龍馬は気づかない。
公爵の冷徹な笑みも、子爵の待ちわびる狂気も、すべてが自分を閉じ込めるための一つの檻として組み上がっていることに。
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