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猫かぶり聖女×奴隷吸血鬼
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ようやく、教団長と面会することが出来るようになった。しかも、ヴィヴィーナは本当に面会予約をとってきた。出来ると思ってなかったんだけど。
ノックをして、わたしは教団長の執務室に入る。――汚い。あちこち国外に飛び回っているというから、てっきり使用人が綺麗に片付けたと思ったのだが、びっくりするほど散乱していた。
でも、ちらっと見れば、ゴミや本、書類や衣類などは散乱しているけれど、ちりやほこりが積もっている様子はない。ということは、帰ってきてからすぐに荒らした、ということか。
この人はこういう環境じゃないと生きていけないのか、とたまに思う。
「――……シャシャ、話があるそうだね」
ものが散乱している中心点にあるソファに寝そべっているのは教団長だ。仰向けになって、腹の辺りに指を組んで手を置いている。長い脚は、結構な長さが飛びでていた。
「毒を盛られました」
わたしは単刀直入に教団長に言う。
少し遅れて、わたしの言葉を受理できた教団長が、ガバッと起き上がる。ひらり、と彼の目元に置かれていたハンカチが床に落ちる。普段、くっきりとクマが出ている目元が、今日は一段と濃い気がした。
「被害状況は」
「一時期、聖女の力が使えなくなったわ。でも、ドドが毒を盛られてるって気が付いてからは、別のものを食べるようにしてたから、ある程度は回復したと思う。とりあえず傷を癒せることは確認済み」
「ていうか、わたしが部屋にこもりきりになっているって報告出てないの?」と思わず聞き返してしまった。
「……聖女の力を使うような仕事が入っていないから、休養を取らせている、という話は聞いた」
「そいつ、切った方がいいんじゃない?」
どう考えても犯人とグルだ。仮に騙されただけだったとしても、わたしに確認もせず、まるっと信じるような間抜けは教団長の補佐に向いていない。
というか、わたしの仕事を把握しきれていない教団長も教団長――と、言いたいところだが、この人はこの人で可哀想だからなあ。
本来ならば、ディディアン聖国を治めるのは聖女の役目。歴代の教団長はあくまで補佐であり、代理だった。でも、わたしがスラム出身で、貴族の出身でない上に、一般的な平民としての教育すら受けていないので、代わりに国のトップに立つ羽目になっているのだ。
だから、歴史を重んじる人間や、聖女至上主義の人間からは結構疎まれている、運のない人なのだ。
わたしが悪いとは思わないけど、全く同情しないわけでもない。把握しておけ、と思うことはあれど、でも、口にはしない。そんな余裕がないのを知っているから。
ノックをして、わたしは教団長の執務室に入る。――汚い。あちこち国外に飛び回っているというから、てっきり使用人が綺麗に片付けたと思ったのだが、びっくりするほど散乱していた。
でも、ちらっと見れば、ゴミや本、書類や衣類などは散乱しているけれど、ちりやほこりが積もっている様子はない。ということは、帰ってきてからすぐに荒らした、ということか。
この人はこういう環境じゃないと生きていけないのか、とたまに思う。
「――……シャシャ、話があるそうだね」
ものが散乱している中心点にあるソファに寝そべっているのは教団長だ。仰向けになって、腹の辺りに指を組んで手を置いている。長い脚は、結構な長さが飛びでていた。
「毒を盛られました」
わたしは単刀直入に教団長に言う。
少し遅れて、わたしの言葉を受理できた教団長が、ガバッと起き上がる。ひらり、と彼の目元に置かれていたハンカチが床に落ちる。普段、くっきりとクマが出ている目元が、今日は一段と濃い気がした。
「被害状況は」
「一時期、聖女の力が使えなくなったわ。でも、ドドが毒を盛られてるって気が付いてからは、別のものを食べるようにしてたから、ある程度は回復したと思う。とりあえず傷を癒せることは確認済み」
「ていうか、わたしが部屋にこもりきりになっているって報告出てないの?」と思わず聞き返してしまった。
「……聖女の力を使うような仕事が入っていないから、休養を取らせている、という話は聞いた」
「そいつ、切った方がいいんじゃない?」
どう考えても犯人とグルだ。仮に騙されただけだったとしても、わたしに確認もせず、まるっと信じるような間抜けは教団長の補佐に向いていない。
というか、わたしの仕事を把握しきれていない教団長も教団長――と、言いたいところだが、この人はこの人で可哀想だからなあ。
本来ならば、ディディアン聖国を治めるのは聖女の役目。歴代の教団長はあくまで補佐であり、代理だった。でも、わたしがスラム出身で、貴族の出身でない上に、一般的な平民としての教育すら受けていないので、代わりに国のトップに立つ羽目になっているのだ。
だから、歴史を重んじる人間や、聖女至上主義の人間からは結構疎まれている、運のない人なのだ。
わたしが悪いとは思わないけど、全く同情しないわけでもない。把握しておけ、と思うことはあれど、でも、口にはしない。そんな余裕がないのを知っているから。
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