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ギャンブラー聖女×ギャンブラー吸血鬼
01
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カン、カン、カン、とウィールのふちにボールが当たる。この瞬間は、いつだってドキドキしてたまらない。全てがスローモーションのように見えて、早くボールが落ちてくれ、と願いながらも、自分の賭けた番号に落ちないのならまだ周っていてくれ、と思ってしまう。
カツン、とボールが落ちた音が、賑やかなカジノの中でもひと際響いて聞こえたような気がした。
――黒の十七。
それを見た瞬間、わたしは立ち上がって「ッシャァ!」と、聖女らしからぬ雄たけびを上げて、ついでに拳を突きあげた。
対して、隣に座る男は頭を抱えて「うわああ!」と情けない叫びを口からこぼした。
赤の十六、黒の十七、八の十八。ストリートで賭けたわたしの手元には、十二倍になって、賭けたチップが帰ってくる。男のチップは全回収。
気分がいい。
わたしは沈み込む男の肩に手をまわした。
「いや~残念だったわね、ダリルぅ。今日もわたしの勝ちよ。ちょうど血が足りなくなってきた頃なんじゃないの?」
ちょっと煽る様に言えば、男――ダリルはキッとこっちを睨んでくる。わたしより十歳程年上に見える彼だが、敗者の睨みなんか全く怖くない。
気がよくなってけらけら笑っていると、わたしの元へ一人のバニーガールがやってきた。
「ウィクトア様、少々よろしいでしょうか。【黒】が海上に目視されたそうです」
「――! 分かった、すぐ行く」
わたしはダリルをからかうのをやめ、パッと立ち上がる。
世界の海を航海する、どこの国にも所属しない、魔法仕掛けの船、ゴルトアウルム号。その船に乗り、海に出現する【黒】を浄化するのが、聖女としての、わたしの仕事だ。国お抱えの聖女は、大抵は街や森などの場所にしか行けない。しかし、【黒】は世界のどこにでも発生するので、海上にも、当然発生する。
ほとんど一年中あちこち海を周っているゴルトアウルム号は非常に都合がいいのだ。
「これ、あげるわ」
わたしは、数枚チップをポケットにいれ、残りをダリルが座っているのとは逆側の席に座る客に押し付けた。聖女としての生活は保障されているし、欲しいものは大抵手に入る。ギャンブル特有の高揚感が好きなだけで、お金が欲しいわけじゃないのだ。
「――じゃあ、わたしは一仕事してくるから。わたしの部屋で、『いい子』で待ってるのよ?」
わたしはダリルの耳元でささやいた。
「いいから早く行け」と顔を赤くしながらこちらを睨むダリルに投げキッスをし、わたしは甲板へと向かうのだった。
カツン、とボールが落ちた音が、賑やかなカジノの中でもひと際響いて聞こえたような気がした。
――黒の十七。
それを見た瞬間、わたしは立ち上がって「ッシャァ!」と、聖女らしからぬ雄たけびを上げて、ついでに拳を突きあげた。
対して、隣に座る男は頭を抱えて「うわああ!」と情けない叫びを口からこぼした。
赤の十六、黒の十七、八の十八。ストリートで賭けたわたしの手元には、十二倍になって、賭けたチップが帰ってくる。男のチップは全回収。
気分がいい。
わたしは沈み込む男の肩に手をまわした。
「いや~残念だったわね、ダリルぅ。今日もわたしの勝ちよ。ちょうど血が足りなくなってきた頃なんじゃないの?」
ちょっと煽る様に言えば、男――ダリルはキッとこっちを睨んでくる。わたしより十歳程年上に見える彼だが、敗者の睨みなんか全く怖くない。
気がよくなってけらけら笑っていると、わたしの元へ一人のバニーガールがやってきた。
「ウィクトア様、少々よろしいでしょうか。【黒】が海上に目視されたそうです」
「――! 分かった、すぐ行く」
わたしはダリルをからかうのをやめ、パッと立ち上がる。
世界の海を航海する、どこの国にも所属しない、魔法仕掛けの船、ゴルトアウルム号。その船に乗り、海に出現する【黒】を浄化するのが、聖女としての、わたしの仕事だ。国お抱えの聖女は、大抵は街や森などの場所にしか行けない。しかし、【黒】は世界のどこにでも発生するので、海上にも、当然発生する。
ほとんど一年中あちこち海を周っているゴルトアウルム号は非常に都合がいいのだ。
「これ、あげるわ」
わたしは、数枚チップをポケットにいれ、残りをダリルが座っているのとは逆側の席に座る客に押し付けた。聖女としての生活は保障されているし、欲しいものは大抵手に入る。ギャンブル特有の高揚感が好きなだけで、お金が欲しいわけじゃないのだ。
「――じゃあ、わたしは一仕事してくるから。わたしの部屋で、『いい子』で待ってるのよ?」
わたしはダリルの耳元でささやいた。
「いいから早く行け」と顔を赤くしながらこちらを睨むダリルに投げキッスをし、わたしは甲板へと向かうのだった。
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