カメレオン小学生

ウルチ

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1章

目の前で知り合いが困ってたら助けるのは当然だ

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「それで、お前、燃えた服はどうするつもりだ?」

受ける必要のない魔法で上半身裸に近いくらい服が焼けてしまっていた。
そこまで威力が無いと思ったが、冒険者用の服では無かったので、耐えられなかったらしい。

「無くなった物はしょうがないからこのままだな」
「それ一着しかないのにか」
「…流石にマズイか」
「ったりめぇだ馬鹿野郎。なんで人間のお前の方が常識ねぇんだ」
「許容範囲ってのがおかしくなってるみたいだね。ちゃんと意識するよ」
「はぁ、先が思いやられるな」

それからすぐにダンジョンを出た。
服は焼けているのに無傷な俺を見ても特に騒ぎ立てる様なこともなく、スルーされる。
受付に行くと一瞬不安そうな顔をされるが、問題ない様子を見ると普通に対応してくれる。

「すみません。3階の店で売っている服はいくら位で買えますか?」
「そうですねぇ、だいたい3000円もあればインナーは買えると思いますよ。」
「3000円…」

実は今回の稼ぎはビニール袋が燃えてしまったためポケットに入れられた分しか回収出来ていないのだ。
全部売ってギリギリ届くかどうか。

「だからあなた達みたいなのとは組みません!近寄らないで!」

突然の大声とともに魔力が膨れ上がった。
そちらを見てみると、昨日の講習会で出会ったレイナが今にも絡まれた男達に魔法を放とうとしている。

「いや、それはダメだろ」

講習会で冒険者同士の私闘は禁止とあった。
気が付けば俺はここに割って入っていた。

「レイナ、私闘はダメだ。資格剥奪ってのになるぞ」

レイナも絡んでいた男達もポカンとした表情を浮かべている。
先に我に返ったのはレイナだった。

「ちょっと!何があったの!?怪我はしてない?」
「魔法がどんなもんか食らってみたら服が耐えられなかった」
「何やってるのよ…怪我はしてないのね?」
「どこにも損傷は無いよ」
「魔法も避けられねぇクソ雑魚はすっこんでろ!この娘は俺達が先に目を付けたんだぞ!」
「知るか」
「なんだと!?」

特に煽ったつもりは無かったが、自分に都合のいい展開が続くことにイライラしていたんだろう。
殴られた。

「それで満足か?」
「くっ。そんな訳あるか!」

立て続けに拳を振るい続けるチンピラ。
そろそろ反撃しようかと思った時だった。

「お前ら何をやっている!」

鋭い声音が響いた。
そちらを見ると、全身鎧を身につけた女性が居た。

「また、お前らか。次問題を起こせば後は無いと私は言ったはずだが?」
「これは問題じゃねぇっすよ。教育的指導ってやつっす」
「と言っているが?」
「嫌がる女を無理矢理連れて行こうとしたところを止められて振るう暴力が教育と呼ぶのなら」
「それは、教育とは呼ばんな」
「てめぇ…」
「おい、流石にヤバイって!ここは退こう!」
「チッ、覚えてやがれ」
「二度と来るんじゃないわよ!」
「ありがとうございました。鎧の方」
「いや、気にしなくていい。これも仕事の様なものだからな」
「そうですか」
「あぁ、君達もああいう手合いには注意したまえ」

そういうと全身鎧の女性は去っていった。

「リオン、助けてくれてありがとう」

レイナは少し照れくさそうにお礼を言ってきた。

「知り合いが目の前で困ってたら助けるのは当然だ。」
「それでもだよ」
「そうか。でもレイナもあんなに声を荒らげて怒るタイプだとは思わなかったよ」
「そ、そこは突っ込まないで欲しかったなぁ。それよりもリオンは早く服をどうにかしないと!」
「そういえばそうだった」
「そこはもっと気にしないと!」
「一応これから買いに行く予定だったんだよ」
「それならさっきのお礼に私が買ってあげる!」
「流石にそれは悪いよ。換金すれば足りるはずなんだ。あっ、換金」

途中で飛び出してしまったことを思い出して慌ててカウンターへと戻る。

「すみません。途中で居なくなってしまって」
「大丈夫ですよ~。見えてましたので~」

それから魔石から換金されたお金を受け取る。

「Fランクの魔石が20個だったので、4000円になります」
「4000円…」

受け取ったところでレイナが近づいてくる。

「服、買ってあげるよ?」
「よろしくお願いします…」
「素直でよろしい」

こうして3階へと行き服を買って貰った。
あの程度のことのお礼としては貰い過ぎだ。

何か返さなくては。
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