【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
86 / 105
勇者祭編

その86 静かな怒り

しおりを挟む
 エイダンの拳が親友グレイソンの美しい顔面に迫っていた。

 近くにいる者は恐怖で動けない。
 担任スワンも慌てて止めようとするが、絶対に間に合わない。

 グレイソン自身は攻撃を受け止める気満々だ。

 だが、エイダンを見くびってはいけない。奴は片手ひとつで建物を木っ端微塵にできる怪力の持ち主なのだから。

 ――拳が、当たる。

 数秒後に広がる惨い光景を前に、机に伏せて時間の経過を待つ生徒もいた。

 だが――。

 ――この教室には、俺がいる・・・・

「「「「――――――」」」」

 無風。

 エイダンの拳にかけられた勢いが、完全に死んでいる。

 怯える生徒達が恐る恐る顔を上げた。
 グレイソンの端正な顔が吹き飛んでいるのではないか。その心配など必要ない。

「――俺の友人に手を出そうものなら、俺はお前を殺す・・――」

 俺は二人の間に立っていた。

 エイダンの右拳を握り締め、氷結した瞳で彼を睨みながら。

 緊張が解けたのか、グレイソンが自分の椅子に、尻もちをつくような形で腰掛ける。

「……ぁんだと……?」

 エイダンは何が起こったのかわからず、呆然としていた。

 俺に拳を握られていることにも気づいていない。
 ただ、目の前には俺がいた。そして、標的グレイソンはまったくの無傷だ。その事実だけがこの光景を通して彼に伝えられる。

「お前は本当に愚かだな」

「……」

「一週間の謹慎期間で何を考えた? 何のための謹慎期間なのか、自分がどうして罰則をもらったのか、その程度も考えることができなかったのか?」

「……」

「お前のような者が実力者を気取るな。それとも、生徒会の幹部だから何をしても許されると思っているのか?」

「……おめぇ、どうやって――ッ」

 エイダンの拳を強く握り締める。
 ありったけの力を込めた。上手く加減できない。この時、俺は確かに怒っていた。つい我を忘れ、エイダンの拳を潰していた・・・・・

 真っ赤な血が地面に滴り落ちる。

 ハッと我に返って手を開くと、エイダンの拳は大量の血を纏って死んでいた・・・・・。骨が砕け、肉が千切れ、もはや原形をとどめていない。

『きゃぁぁぁああああ!』

 グレイソンの後ろの席の女子生徒、夏目なつめヘイゼルが悲鳴を上げた。いつもは比較的静かな生徒であるだけに、その驚愕と動揺は全体に伝わっていく。

 対して、俺は静かだった。

 激情に駆られ、加減を間違えてしまったのは大きな失態だ。だが、治療すれば元通りになるという確信はある。
 そう判断し、持ち前の冷静さを取り戻した。

「俺が兄弟の事情に首を突っ込むのは間違っているのかもしれない――」

 悲惨な右手を見て、明らかに余裕を失ったエイダンの前で。

 俺は言葉を紡ぐ。

「――余計なことを言うようだが、ひとつ、お前に伝えなければならないことがある」

 ――お前は最低の兄だ。

 そう続けた。

 テオが顔を上げ、意識を取り戻したかのように勢い良く近づいてくる。兄と同じ紅色の瞳に浮かんでいるのは、俺を心配するような穏やかな灯火。
 正直、俺より右手を潰された兄を心配した方が良さそうだが、この場面でそんなことは言えない。

西園さいおん――オスカーくん……ごめん……おれのせいで――」

「謝る必要はない。誰よりもテオのことを思っていたのはグレイソンだ。彼に礼を言ってくれ」

「僕はそんな大したことはしてないよ。最後はまたオスカーに助けてもらったし……えーっと、その、またっていうのは……」

 グレイソンは気づいた。

 今、この状況。
 西園寺さいおんじオスカーが実力を見せてしまっているということに。

 どうにか誤魔化そうとするも、言葉が上手くまとまらず、慌てふためいている。

「グレイソン、もう大丈夫だ」

「オスカー、でも――」

「俺のことは気にするな。今日の英雄はグレイソンだ。俺はあの場面で黙っていることしかできなかった」

 俺とグレイソンはお互いに微笑み合う。

 ほんの一瞬だけ、二人だけの空間になった。

 勿論、すぐに修羅場に戻ったが。

『西園寺、天王寺てんのうじ兄弟、一ノ瀬いちのせの四人は、今すぐ職員室に来なさい』

 途端に後ろから通った声が投げられる。

 ――白鳥しらとりスワンだった。
 ホームルームでの様子からは考えられないほど、言葉に覇気があり、教師らしい・・・。表情も引き締まり、本来の美貌が遺憾なく発揮されていた。

 ハーフアップにした純白の長髪に、二十四歳の若々しく透き通った白い肌。

 思わず見惚れてしまうほどの凛々しさと共に、担任スワンは俺と天王寺兄弟、グレイソンを呼び出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。

エース皇命
ファンタジー
 異世界に来て3年がたった。  オレの所属する勇者パーティ、イレギュラーズは相変わらず王都最強のパーティとして君臨している。  エルフのクリス、魔術師のジャック、猫耳少女ランラン、絶世の美女シエナ。  全員チート級の強さを誇るけど、どこか抜けていて、アホ全開である。  クリスは髪のセットに命をかけて戦いに遅刻するし、ジャックは賢いもののとことん空気を読まない。ランランは3歩あるくだけで迷子になるし、シエナはマイペースで追い詰めた敵を見逃す。  そんなオレたちの周囲の連中もアホばかりだ。  この世界にはアホしかいないのか。そう呆れるオレだったけど、そんな連中に囲まれている時点で、自分も相当なアホであることに気づくのは、結構すぐのことだった。  最強のアホチーム、イレギュラーズは今日も、王都を救う! ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...