【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
41 / 103
魔王セト襲来編

その41 謎の少年☆

しおりを挟む
「グレイソンしゃま、どうしてこまってるのです?」

 柱の影に隠れて討伐隊の様子を見ながら、冷や汗をかいているグレイソン。そこにクルリンの声が投じられた。

「どうにかしてあの門をくぐりたいんだけど、その方法がなかなか見つからないんだ」

「ふぇ?」

「だから、この学園を出てオスカーのところに――」

「むぅ。そんなの〈水追跡アクアチェイス〉すればかんたんに出られるのです」

 クルリンが軽い口調で言う。

 隣にいるミクリンが目を丸くし、グレイソンは訳がわからないというように首を傾げた。

「あたちとミクリンの神能スキル水追跡アクアチェイス〉なら、あの騎士きちにみつからずに外に出られるのです」

「確かに、わたし達がグレイソン君とセレナさんをそれぞれ相棒パートナーに指定すれば、四人でこの学園を出られるかもしれません。条件・・も満たしていますし」

 解決の糸口が掴めた、という風に表情を明るくする双子姉妹。

 水の女神ネプティーナを信仰する二人に発現した神能スキル水追跡アクアチェイス〉では、自分以外にひとりだけ、その効果を共有することができる。
 それを使えば、あとは討伐隊を追跡すればいいだけなのだ。

「発動時に追跡する人を目視していることと、その人の名前フルネームを知っていることが条件なんですが、今回は相手が有名人で助かりましたね」

 追う対象者は好都合なことに名の知れた有名人達。
 しっかりと神能スキルの発動条件は満たしている。

 双子姉妹の様子を見て、グレイソンははっとした。

(――ッ。そうだ、オスカーが不可能・・・な指示をするわけがない。この二人の神能スキルを考えて、みんなで協力することを……)

 思わず笑みがこぼれる。

(それなのに、僕は勝手に独りで頭を抱えて……)

「ねえ、私はまだ納得してないんだけど。だって、オスカーが魔王を討伐しに行ったなんて、そんな――」

「セレナっちはしーなのです。あたちはやる気まんまんなのです!」

 セレナの不満の声を相殺そうさいしたクルリンの言葉。

 チャンスが巡ってきた。
 ちょうど今、生徒会の幹部をはじめとする討伐隊を〈水追跡アクアチェイス〉で追えばいいのだ。

「よし、二人とも、頼んだよ」



 ***



 ゼルトル勇者学園から組み込まれた魔王セトの討伐部隊は、王都の〈王国通り〉に無事辿り着いた。

 やる気に満ち溢れた〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の幹部五人。
 その後ろから彼らを見守るように構えている教師十名。

 戦う相手は邪知暴虐の魔王セトだ。

 数々の都市を暴れ回り、崩壊を引き起こしてきたという。魔王の中では新米で、まだ自分の力がどれほどなのか試している段階であると、王国の情報機関は公表していた。

「おいおい、ありゃ何だ? ふざけてんのか?」

 刈り上げた赤髪が目立つ天王寺てんのうじエイダンが、〈王国通り〉で繰り広げられている衝撃の光景に驚愕と苛立ちを見せる。

「魔王と単独で戦っている、だと?」

 エイダンの後ろで指揮を執る予定だった九条くじょうガブリエルも、理解が追いつかずに後退あとずさりする。

 これには討伐部隊の全員が言葉を失った。
 選ばれし十五名ほどの実力者でまとまって勝負を挑んだとしても、勝てるかわからない相手――魔王セト。そんな存在に、たった独りで挑む少年・・を目にしたのだ。

 魔王セトは二Мメルトルを超えるほどの体格。それに対し、少年は百六十CМセーチメルトルほどと小柄だ。

 だが、少年はその体格差をむしろ有利に扱っている。

 低いところから正確に斬撃を繰り出し、体をくるっと回転させて魔王の攻撃をかわす。
 離れていても圧を感じるほどの膨大な魔力の波。魔王セトから放たれる紫の魔力オーラと、少年から放たれる黄金色の魔力オーラが激しくぶつかり合っている。

 彼らの目には、少年は魔王セトと互角に・・・戦っているように見えた。

「あの金髪の・・・勇者、見たことあるか?」

 隣で目を細めて観戦している立花たちばなに、〈剣術〉教師の桐生きりゅうが聞いた。

 立花がわからないとでも言うように首を振る。

「小柄で金髪の勇者はたくさんいるが……あの格好は……貴族か?」

 魔王セトと攻防を繰り広げる少年は、貴族の格好をしていた。
 金持ちではないと手に入れられないような腕輪や指輪。先の尖った革製の靴。

 討伐部隊がいる角度からだと、少年の顔が見えない。金髪であることしか、容姿の特徴は掴めなかった。

「そういうことだったのね、オスカー」

 少年の戦いぶりを微笑みながら見守る月城つきしろルーナは、少し前に中庭で会った少年の姿を思い浮かべた。
 その少年の後ろ姿は、髪色こそ違えど、目の前で戦いバトルを繰り広げる少年の姿と一致していた。

『君が望むのなら、近いうちに教えてやろう。西園寺さいおんじオスカーが何者なのか』

 オスカーの台詞セリフを思い出し、頬を薄紅色に染める。

(からかうだけのつもりで近づいてみたのだけど、ワタシを本気・・にさせたようね)



 ***



 神能スキル水追跡アクアチェイス〉を解除し、さっと建物の裏に身を潜めたグレイソン達四人。

 彼らも彼らで、魔王セトと少年との戦いバトルに心を奪われていた。
 
 グレイソン、ミクリン、クルリンの三人は、当然ながら少年の正体をわかっている。
 いくら強いとはいえ、オスカーが魔王に匹敵するほどの実力の持ち主とは思っていなかった三人。

 改めて、オスカーという異次元の存在に畏怖の念を示す。
 グレイソンは身近にいる「強者」の威厳を感じ、その背中の遠さに溜め息を漏らした。

 そして、セレナは。
 少年の正体がオスカーであると半分気づきならがも、頭の中で何度もその発見を否定していた。

(あり得ない。そんな――オスカーが――あんなに――)

 一学期期末テストにて、彼の座学における実力はわかっている。

(だけど、こんなのって――)

 情報の処理が追いつかない。
 本当は実技ももう少しできるのではないか。普段は手を抜いているのではないか。理由はわからないが、やればそれなりにできる生徒なのではないか。

 オスカーの実力への認識はその程度だった。 
 それ以上に、いつも傍にいてくれる存在、としての価値は大きい。コミュニケーションが苦手なセレナにとって、オスカーの存在がどれほど支えになるか。
 
「セレナさん、危ない!」

 気づけばセレナはふらふらと建物の裏から出ていた。

 だがそこは、魔王セトの攻撃射程圏内。
 狙われたら即終了の領域だ。

 グレイソンが慌てて引き戻そうとするが、セレナは何かに突き動かされていた。

(確かめたい。あれが本当に、オスカーなのか)

 顔を確認するまでは確信できない。あの少年は黒髪ではなく、金髪なのだ。本当はプロの勇者で、この疑念はただの勘違いなのかもしれない。

 ――どうしても、オスカーの顔が見たい。

 その時、魔王セトの超高速の斬撃が、セレナの胸めがけて飛んできた。グレイソンが彼女を守ろうと飛び出す。だが、このままでは間に合うはずもない。

(――私、ここで死ぬんだ)

 セレナは死を覚悟した。

 自分の愚かな行動で、命を落とす。目を固く閉じて、自分の肢体が切断される瞬間をおとなしく待った。

 だが、いつまでたっても、死ぬ瞬間は訪れない。
 時が止まったかのように感じた。恐る恐る目を開ける。

『お前に死んでもらったら俺が困る』

 そこには、貴族の格好をした、黒髪の少年・・がいた。

 〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉や教師陣からは死角となる道の片隅。
 彼はその時だけ、本来の黒髪に戻したのだ。魔王セトの遠距離攻撃を弾き返し、セレナを守った。

「「オスカー」」

 涙を目に溜めるセレナと、助けに飛び出したグレイソンの声が重なる。だが、それはほんの一瞬だった。まるで幻だったかのように、オスカーの姿が消える。

 セレナは膝から崩れ落ちた。



 ***



 学園からの討伐部隊は本来戦闘に加勢するはずであるのにも関わらず、黙って少年と魔王の戦いバトルを見ていることしかできなかった。

 入る隙がない。

 王国を揺るがす魔王と、それに勇敢に立ち向かう少年。

 そこに参戦することが可能な者は僅か。

「あれはヤバい。サイコーじゃないか」

 生徒会副会長、白竜はくりゅうアレクサンダー。

 そして――。

「やはり実力を隠されておりましたね」

 生徒会長、八乙女やおとめアリア。

 他が剣を構えたまま動けないでいる中、二人はどこか愉快そうに微笑み、剣を鞘に収めている。少なくとも、この二人、そしてルーナは確信・・していた――あの少年が西園寺オスカーである、ということを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。

エース皇命
ファンタジー
 異世界に来て3年がたった。  オレの所属する勇者パーティ、イレギュラーズは相変わらず王都最強のパーティとして君臨している。  エルフのクリス、魔術師のジャック、猫耳少女ランラン、絶世の美女シエナ。  全員チート級の強さを誇るけど、どこか抜けていて、アホ全開である。  クリスは髪のセットに命をかけて戦いに遅刻するし、ジャックは賢いもののとことん空気を読まない。ランランは3歩あるくだけで迷子になるし、シエナはマイペースで追い詰めた敵を見逃す。  そんなオレたちの周囲の連中もアホばかりだ。  この世界にはアホしかいないのか。そう呆れるオレだったけど、そんな連中に囲まれている時点で、自分も相当なアホであることに気づくのは、結構すぐのことだった。  最強のアホチーム、イレギュラーズは今日も、王都を救う! ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...