【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
62 / 103
オスカーの帰郷編

その62 みんなで囲む食卓

しおりを挟む
 五年ぶりに会った母と息子。

 お互いに話すことはいっぱいあった。

 意外にも、気まずくなってどちらかが黙り込む、なんてことが起こらなかったのである。
 神殺しのことは伏せたが、ゼルトル勇者学園に入学し、数少ない友人と共に当たり障りのない学園生活を送っている、ということを伝えた。

 セレナはそれに対して何か言いたそうだったが、空気を読んで口を閉じたまま。

 かあさんはセレナのことが相当気に入ったらしく、付き合ってしまえばいいのに、ということを何度も繰り返し主張してきた。

「こんな可愛い女の子、他にいないと思うよ」

「お母さん、それは言い過ぎですって」

「セレナちゃん、どうかオスカーのことお願いね」

 いつの間にか仲良くなってないか?
 セレナも俺の母さんをまるで自分の義母かのように扱っている。母さんも同じく、セレナのことを義理の娘のように思っている節があった。

「少し重い話にはなるが……俺には世界から定められた宿命があるんだ」

 和気あいあいとした空間の居間リビングに、真剣シリアスな声が放たれる。

 だが、この言葉は完全に消失した。
 二人の話し声が、俺の声を相殺してしまったからだ。

『オスカーったら、十二歳で急に家出して――』

『オスカーはこの前の試験で――』

 共通の話題は俺のことしかないから仕方ないことかもしれない。だが、できれば西園寺さいおんじオスカーの話はほどほどにしておいて欲しかった。

 マヤも母の膝の上でつまらなそうにしている。
 彼女はとてもよく母さんに似ていた。
 茶髪で黄金色の瞳。
 母さんに対しては豊かな表情の変化を見せているようだが、兄である俺に対して見せる表情は、軽蔑。ただそれだけ。

 俺に恨みでもあるのだろうか。
 彼女の中に不吉な悪魔が宿っていないか心配だ。実は闇の世界の住人だという可能性も否めない。マヤには最大限の警戒をしておこう。

「母さん」

 二人の話題もそろそろ尽きようかと思われた時。
 俺は気を取り直して口を開いた。

 言葉に影響力を持たせるのに、相手が話し疲れるのを待ってから話し始める、という手段もある。

 今回は素直に聞いてくれた。
 女性二人の注目が俺に注がれる。ちなみに、マヤはまったく反対方向を向いていた。

「この五年間、何の連絡もせず申し訳なかった。実家に帰ろうと思い立ったとしても、こうして迎え入れてもらえるのかがわからず、今日まで先延ばしにしてしまっていた……」

 世界で誰よりも優しい母さんが、温かく微笑む。

「いつ、どんな姿で帰ってきたとしても、オスカーが安心できる場所だから。この家は。また好きな時に帰ってきなさい」

 本当に、なんだこの人は。

 もっと叱ってもいい。
 こんな無責任で自由な息子なんか、放っておけばいい。

 だが、彼女も俺と同じで変わっている。
 自分の罪を告白してしまいそうになった。神を殺し、力を得たことを。

「実は俺……」

 言えない。
 言葉が出ない。

 しなやかに受け止めてくれることはわかっていた。だが、軽蔑されてしまうことが怖かった。母さんの顔にその片鱗が見えてしまうだけで、俺は深い悲しみに包まれるだろう。

「いや、なんでもない。良かったら、今日と明日はここに泊めて欲しいんだが――」

「泊めるも何も、ここはオスカーの家なのよ」

「そうか……それもそうだ」

 ぎこちなく笑い合う。
 長い間忘れていた「家族」というものを、思い出したような気がした。

「今日はお父さんが新鮮な野菜とお肉持って帰ってきてくれるから、ご馳走にしよっか」

 この言葉に一番反応したのは、俺の宿敵マヤだった。



 父は意外とあっさり俺の帰還を受け止めた。
 ゼルトル勇者学園の学生であると知って驚いてはいたものの、感情的に怒ったり、泣いたりする、なんてことは起こらない。

 彼は四十二歳で、薄毛が目立ち始め、すっかりおっさんになろうとしているようだったが、相変わらず元気そうだ。

 楽観主義は父から遺伝したんだろう。
 父は薄毛を脱皮と表現していた。実に愉快だ。

「それで、その子とはどこまで進んでんの?」

 仕方ないことだが、またセレナを恋人だと勘違いされてしまった。
 それにしても、最初の質問にしてはなかなか攻めているような。

「セレナは俺の友人だ。席が隣ということもあって親交を深めていった」

「よろしくお願いします。二階堂セレナといいます。オスカーの将来の嫁です」

「おぉ! いいね! で、どこまで進んでんの?」

 子供ガキのような男だ。

(セレナにそんなこと聞くなよ……)

 セレナもセレナで、将来の嫁などといった勝手な発言は控えて欲しい。本気の勘違いをされてしまうかもしれない。

「まだ頬にキスしかしてません。でも、そのうち唇にキスして、それ以上のことをしたいと思ってます」

「おぉ! 欲望に忠実ってのはいいね!」

 そこはあまり推進して欲しくない。

 一体、セレナに何があった? ある時から急に吹っ切れたようにアプローチしてきているような気がするが……。

(俺はそれが……嬉しい、のか?)

 よくわからないが、特に嫌とは思わなかった。それが不思議だ。



 元々の家族三人と、新たに増えた家族であるマヤ、そして友人のセレナ。
 この五人が食卓を囲むという、貴重なのかよくわからない光景。

 食卓を安くて薄暗い照明ランプが照らし、茹でた野菜と焼いた肉を、シンプルな味付けで頬張る。

 俺にはちょうどいい食事だった。
 今のような食事スタイルを始めたのは家を出てからになるが、元々俺の家の料理は質素だったことを思い出す。西園寺オスカーという少年が暮らすことに最適化されていた、ということなのかもしれない。

「セレナちゃん、好きなだけ食べてね」

「はーい」

 母さんとセレナは息が合うらしい。
 もうすっかり仲良しの嫁姑――そんな雰囲気だ。

「ママ、パパ」

 マヤが手をパチパチしながら満面の笑みで言う。
 勿論、俺の方は一切見ずに。

「ママ、パパ」

 二歳ともなれば、これくらい話すのは普通か。
 今後さらに多くの単語を操れるようになってくると、俺を好きなだけ罵倒することも可能になってくる。

「ママ、パパ、ねーね」

 ?
 聞き違いか?

 マヤはセレナの方をちゃんと向き、ねーね、と言った。先ほどから何度かセレナが「ねーね」を言わせようと試みていたが、成功したらしい。

「ママ、パパ、ねーね」

 どうやらセレナにはデレデレ。羨ましいとは思わない。

「ママ、パパ、ねーね、おじさん」

 最後は衝撃的だった。
 おじさん、なんていう言葉をどこで知ったのかは不明だが、俺はおじさん認定されてしまったらしい。明後日十七歳になる若き少年だというのに。

「悪いが妹よ、俺は西園寺オスカーだ。言ってみろ」

 意地悪なことを言ってみる。
 宿敵なのだから当然だ。

「おじさん」

 そう言う時だけ、なぜか彼女の顔から笑顔が消える。
 実はマヤが俺に殺された神の生まれ変わりで、兄に対して最大の憎しみを持っている、なんていう設定があるんだろうか。

 そうだとすれば一大事だ。

 その後も、マヤにとっての西園寺オスカーは、おじさん、だった。



 ***



 実家での暮らしはすぐに慣れた。
 というのも、実家なのだから当然だ。

 驚いたことに――いや、今はそう驚くことでもないが――セレナの方がこの家に馴染んでいる。家事の手伝いも率先してしているし、マヤともよく遊んでいる。

 俺がマヤに近づこうとすれば、彼女は意地でも涙を絞り出そうとするため、兄と妹の戯れは許されなかった。残念だとは思ってない。

「もう私の妹って言ってもいいんじゃない?」

「そうだな」

 セレナの調子に乗った台詞セリフを興味なさそうに流す。

「彼女にとっての俺は、急に現れたおじさん・・・・だ。兄でも何でもない」

 よほどのことがない限り、マヤは俺を認めないだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。

エース皇命
ファンタジー
 異世界に来て3年がたった。  オレの所属する勇者パーティ、イレギュラーズは相変わらず王都最強のパーティとして君臨している。  エルフのクリス、魔術師のジャック、猫耳少女ランラン、絶世の美女シエナ。  全員チート級の強さを誇るけど、どこか抜けていて、アホ全開である。  クリスは髪のセットに命をかけて戦いに遅刻するし、ジャックは賢いもののとことん空気を読まない。ランランは3歩あるくだけで迷子になるし、シエナはマイペースで追い詰めた敵を見逃す。  そんなオレたちの周囲の連中もアホばかりだ。  この世界にはアホしかいないのか。そう呆れるオレだったけど、そんな連中に囲まれている時点で、自分も相当なアホであることに気づくのは、結構すぐのことだった。  最強のアホチーム、イレギュラーズは今日も、王都を救う! ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...