【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
65 / 103
オスカーの帰郷編

その65 自己嫌悪と屈辱☆

しおりを挟む
 セレナはダークエルフの将軍、シュテルベンと交戦していた。

 交戦といっても、マヤを抱えて逃げ回っているのみ。
 剣を持ち歩いていなかったことが仇となった。こんな何もない田舎の住宅に、誰が攻撃を仕掛けてこようか。

 ――勇者失格。
『どんな状況でも、勇者たる者、剣を持ち歩くべし。命の次に大切なもの、それは人々の希望を守る剣である。それができなければ、勇者失格。夢も希望も、砕け散る』

 〈勇者史〉の授業では、現在に至るまでの勇者の栄光の歴史だけでなく、勇者の心得や勇者としての生き方も学ぶ。その際、〈勇者史〉教師のひじりブライアンが口を酸っぱくして言うことが、『勇者失格』の格言だった。

(剣さえあれば……)

 後悔するように顔を歪めるも――。

(剣があったところで、私はこのダークエルフに勝てるの?)

 敵は五人。
 その中のひとりと武器を取って公平に戦ったとする。それで、自分は勝てるのか。

 戦いの神を信仰しておきながら、まったく戦いの技術が上がっていないことに気づく。勇者学園に入学し、確かにある程度は剣術の腕が伸びたはずだ。

 だが――いつの間にか、怠けていた。
 部活動には入らず、放課後、特に修練を積むことなく、怠惰な日常を送っていた。

(私は……勇者になるために……)

 セレナが勇者学園に入ったのは単なる気まぐれではない。

 幼い頃、父親から何度も読み聞かせられた、英雄譚に出てくる勇者のようになりたい。英雄譚に登場する勇者は必ずしも男性というわけではなかった。
 凛々しく、美しい女性の勇者。

 セレナの持つ憧れは、ゼルトル勇者学園への入学願望をより強固なものとした。

 平民は貴族と異なり、入学競争が激しい。
 体力だけでなく、知性や人間性も問われる厳しい入学試験を勝ち抜いた今、こうして勇者候補の学生となっている。

 だが、隣にいる西園寺オスカーという存在はすでに勇者級の、いや、並みの勇者を上回るほどの実力を持っていた。そんなオスカーに惚れ、隣に立ちたいという感情が現れたのはいいだろう。

(でも……こんなんじゃ、オスカーの隣には立てない……あの生徒会長の方が、よっぽど――)

 ――オスカーに相応しい。

 そんな表現をしようとしたが、思いとどまる。

 セレナが生徒会長アリアに対して抱く気持ちは、尊敬とライバル心。
 アリアは頭が良く、それでいて強い。美人で、全体をまとめる統率力がある。そんなアリアの告白を断ったオスカーが、何ひとつ彼女に誇るものがない自分セレナに振り向いてくれるのか。

 襲ってくる激しい自己嫌悪。そして怒り。

(こんなところで、逃げ回っているわけにはいかない!)

 セレナの中で、何かが吹っ切れた。
 小さな少女マヤを守ることも忘れていない。だが、それ以上に、自分の実力をはっきりと証明したい――宝石エメラルドのような緑の瞳の中に、静かな炎が燃える。

「おやおや、足を止めましたか。愚かですね。戦いを選んでも死ぬだけですぞ」

「マヤちゃんは将来、私の義理の妹になるの! あんたなんかに、義妹いもうとは渡さないから!」

「つまり、お前は西園寺オスカーと婚約している、ということですか?」

 マヤはセレナのすぐ後ろにいる。
 狂気を感じさせるダークエルフ達を視界に入れないよう、目を固くつぶって。

 シュテルベンは、面白くなってきた、と言わんばかりに口角を上げ、呼吸を荒くする。将来の結婚相手を目の前で殺せば、相当な絶望を盟主タナトスに届けることができるだろう。

「まだ――まだ婚約はしてない」

「怖い女ですね。勝手に結婚まで話を進めていたとは……それ、ヤンデレってやつですぞ」

「私があんたをぶっ殺したら、婚約するから!」

 何の確証もないし本人の同意もないが、自信満々に言うセレナ。

 シュテルベンは身震いした。

(この女……思っていた以上にヤバいですぞ)

 セレナが先制攻撃を仕掛ける。
 考える暇など与えない、不意をついた一撃。

 戦いの神ミノスを信仰することによって、得ることとなった神能スキル――その名も〈性能調整スペックアジャスメント〉――たった三十秒だけだが、自分が利き手で触れた相手と同じ戦闘性能スペックにまで引き上げることができる。

 戦いの際、そもそもの攻撃力や防御力が劣っていては、技量で勝っていても戦闘に勝つことはできない。
 パワーや防御、スピードの弱点を補完することのできる、有能な神能スキル

 制限時間の三十秒は、利き手で相手に触れるという条件を達成してから、という意味だ。
 極端な話、ずっと相手に触れることができれば、無制限で神能スキルを使うことができる。激しく体を動かす戦闘バトルにおいて、そのような芸当ができるかは定かではないが。

「――ッ!」

 まず、セレナは拳を使った。
 一番近い位置にいたダークエルフの顔面を右拳で殴る。

 それにより、一時的にダークエルフの腕力パワー速度スピードを得た。

 その力を使って、左で構えていたダークエルフに殴りかかる。

 その拳の秘める威力は、今のダークエルフ達のパワーと大差ない。攻撃の的となったダークエルフは、後頭部から地面にめり込み、ぐたっとして動かなくなった。

「お前……本当はゴリラか何かか?」

 シュテルベンは驚きを隠せなかった。
 可哀想な少女だとばかり思っていたが、そういうわけでもなかったらしい。

 ダークエルフ一体は倒した。
 残りは四体。
 この要領で戦い続ければ――。

「痛っ――!」

 セレナがうめき声を上げる。
 会心の一撃を繰り出した右拳から湯気が出ている。

(容量オーバー……)

 彼女の神能スキルは、どんな敵のスペックにも合わせることが可能だが、体にかかる負担はとてつもなく大きい。

 例えば、セレナがオスカーのスペックに合わせようと、〈性能調整スペックアジャスメント〉を使ったとしよう。
 するとどうなるか。

 ――セレナの体が耐えられない。
 運が良ければ気絶で済むかもしれないが、運が悪ければ膨大なエネルギーが体内で錯乱して破裂し、死に至るだろう。

 今回の敵であるダークエルフも、例外ではなかった。
 タナトスによって強化されたダークエルフの戦闘性能スペックは、セレナの体には容量が大き過ぎたのだ。

「ねーね!」

 マヤの表情が暗くなる。
 彼女の命はセレナに託されているのだ。そんな戦士セレナが負けてしまえば、マヤが生き残ることはない。

「マヤちゃん、大丈夫。きっと――」

「勢いを失いましたぞ」

 シュテルベンの矢が至近距離から放たれる。
 外れるはずがない。

 矢の軌道は、まっすぐセレナの心臓へ。一瞬で回避できるはずもない。

(どうして――)

 セレナに恐怖心はない。

(――私は――)

 あるのはただ、ひとつ。

(――どうして私は、こんなに弱いの⁉)

 ――もっと強く、なりたい。

 激しい想い。
 弱い自分を打ち破り、オスカーのように、強く――。

『待たせて悪かった』

 矢が散った。

 シュテルベンが興奮した様子で叫ぶ。

「素晴らしい! メインゲストの到着ですぞ!」

 セレナ、そしてマヤを救ったのは、またしてもオスカーだった。

親友セレナマヤは、俺が守る」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...