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フロストハウル編
第115話 可愛ければ誰でもナンパするという女好き
「才斗くん、どうかしましたか?」
「あ、いや……なんでもない」
昨日のことは楓香に話してない。
まさか椎名さんが超人だったとは……。
椎名さんとは高校生になってからの付き合いだ。クラスが同じになったのは2年生が初めて。1年の時は接点なんてなかった。
とはいえ、同じクラスになって半年。
すぐ近くに同類がいたなんて、思いもしなかった。
楓香が転校してきて一瞬で彼女の正体に気付いたのは、組織の腕時計をしていたからに過ぎない。
昼休みになると、一緒に弁当を食べる楓香には少し用事があると言って教室を出る。
4時限終わりの俺の視線に気付いた椎名さんが、慌てた様子で教室を出たのだ。
「待て」
「黒瀬君、ストーカーだよ」
「俺はストーカーじゃない」
椎名さんの腕をつかみ、そのまま空き教室に引っ張る。
乱暴だが、今回ばかりは仕方ない。
「彼女がいるのに、か弱い女の子を教室に連れ込むなんて」
「お前はか弱くないだろ」
「そうだけど、みんなにとっては、私はか弱い女の子だと思うけど?」
「……」
「それに対して、黒瀬君は男の子だし、Sランク冒険者だってこともみんな知ってる」
「こっちはお前の正体をみんなにバラしてやってもいいんだ」
「みんなが信じると思う? ……って、もういいか」
ここで椎名さんが小さく溜め息をつく。
いつもそこまで彼女のとこを見ているわけじゃないが、印象はまったく違う。
実は超人だったという裏の顔を持っていただけあって、愛想のいいクラスの女の子、というのはただの設定だったのかもしれない。
「私の負けだよ、黒瀬君」
降参しました、とでも言うように両手を上げている。
今度は俺が溜め息をついた。
「昨日はどうして逃げた? 何かやましいことでもあるのか?」
「それはその……気が動転してたというか、パニクってたというか……」
「まあ、そうだろうな」
「信じてくれるの?」
「もう1人の女から話は聞いた。その話が本当なら、椎名さんは窃盗犯を捕まえようとしてたんだろ?」
静かに頷く椎名さん。
ここで、俺の腕をギュッと強く握ってくる。
「ねえ、黒瀬君なら逃げた私をまた捕まえることだってできたはずだよね? どうして捕まえなかったの?」
「なんでだろうな」
「え?」
「知り合いだったから、学校で会えるとか思っていたんだろう」
俺の曖昧な説明に、椎名さんが首を傾げる。
大まかそんな感じだが、事実は少し違った。
***
「椎名さん?」
椎名を捕まえ、目が合い、椎名は本気で驚いていた。
こんなところで俺に見つかるとは思ってなかったんだろう。
ダンジョン冒険者は基本的にダンジョンに潜る。夜の街をうろつくことはあんまりない。
「あの、その、私は別に――」
逃げられるはずもないのに、逃げていく椎名さん。
さっきの走りが本気なんだとしたら、彼女の実力はCランク冒険者並みだ。
椎名さんは追いかける立場だった。
だから仮に彼女が対象に危害を加えるつもりで走っていたのなら、対象がゼロナに捕まった今、そこまで心配する必要はないのかもしれない。
追いかける素振りなく椎名さんを眺めていると、ゼロナが前を入っていた女性を拘束しながら近付いてきた。
「さっきの娘とは知り合い?」
「クラスメイトなんだ」
「……才斗、ぼくはきみが羨ましい。きみはこの世で最も幸運な人だ」
「何言ってるんだ?」
ゼロナが夜の闇の中で笑顔を作る。
月の光に照らされ、その笑みはより幻想的になっていた。
「あの娘の名前は?」
「椎名奈菜だが」
「椎名奈菜……可愛かった。きみの彼女のミズ・白桃ほどではないが、奈菜ちゃんも最高に――」
「まじか……」
「軽蔑するような目では見ないでほしいね」
「軽蔑するわけじゃない。ただ……ゼロナってとにかく女好きなんだな」
「女性なら誰でもいいというわけではない。可愛くて、そしてとにかく可愛い娘が――」
「なるほど……」
***
実際はゼロナに椎名さんを会わせたくなかったから。
それに尽きる。
同性愛者であることは珍しくもない。
だが、それにしても、だ。
可愛い娘大好きすぎだろ、俺の新しいパートナーは……。
「あ、いや……なんでもない」
昨日のことは楓香に話してない。
まさか椎名さんが超人だったとは……。
椎名さんとは高校生になってからの付き合いだ。クラスが同じになったのは2年生が初めて。1年の時は接点なんてなかった。
とはいえ、同じクラスになって半年。
すぐ近くに同類がいたなんて、思いもしなかった。
楓香が転校してきて一瞬で彼女の正体に気付いたのは、組織の腕時計をしていたからに過ぎない。
昼休みになると、一緒に弁当を食べる楓香には少し用事があると言って教室を出る。
4時限終わりの俺の視線に気付いた椎名さんが、慌てた様子で教室を出たのだ。
「待て」
「黒瀬君、ストーカーだよ」
「俺はストーカーじゃない」
椎名さんの腕をつかみ、そのまま空き教室に引っ張る。
乱暴だが、今回ばかりは仕方ない。
「彼女がいるのに、か弱い女の子を教室に連れ込むなんて」
「お前はか弱くないだろ」
「そうだけど、みんなにとっては、私はか弱い女の子だと思うけど?」
「……」
「それに対して、黒瀬君は男の子だし、Sランク冒険者だってこともみんな知ってる」
「こっちはお前の正体をみんなにバラしてやってもいいんだ」
「みんなが信じると思う? ……って、もういいか」
ここで椎名さんが小さく溜め息をつく。
いつもそこまで彼女のとこを見ているわけじゃないが、印象はまったく違う。
実は超人だったという裏の顔を持っていただけあって、愛想のいいクラスの女の子、というのはただの設定だったのかもしれない。
「私の負けだよ、黒瀬君」
降参しました、とでも言うように両手を上げている。
今度は俺が溜め息をついた。
「昨日はどうして逃げた? 何かやましいことでもあるのか?」
「それはその……気が動転してたというか、パニクってたというか……」
「まあ、そうだろうな」
「信じてくれるの?」
「もう1人の女から話は聞いた。その話が本当なら、椎名さんは窃盗犯を捕まえようとしてたんだろ?」
静かに頷く椎名さん。
ここで、俺の腕をギュッと強く握ってくる。
「ねえ、黒瀬君なら逃げた私をまた捕まえることだってできたはずだよね? どうして捕まえなかったの?」
「なんでだろうな」
「え?」
「知り合いだったから、学校で会えるとか思っていたんだろう」
俺の曖昧な説明に、椎名さんが首を傾げる。
大まかそんな感じだが、事実は少し違った。
***
「椎名さん?」
椎名を捕まえ、目が合い、椎名は本気で驚いていた。
こんなところで俺に見つかるとは思ってなかったんだろう。
ダンジョン冒険者は基本的にダンジョンに潜る。夜の街をうろつくことはあんまりない。
「あの、その、私は別に――」
逃げられるはずもないのに、逃げていく椎名さん。
さっきの走りが本気なんだとしたら、彼女の実力はCランク冒険者並みだ。
椎名さんは追いかける立場だった。
だから仮に彼女が対象に危害を加えるつもりで走っていたのなら、対象がゼロナに捕まった今、そこまで心配する必要はないのかもしれない。
追いかける素振りなく椎名さんを眺めていると、ゼロナが前を入っていた女性を拘束しながら近付いてきた。
「さっきの娘とは知り合い?」
「クラスメイトなんだ」
「……才斗、ぼくはきみが羨ましい。きみはこの世で最も幸運な人だ」
「何言ってるんだ?」
ゼロナが夜の闇の中で笑顔を作る。
月の光に照らされ、その笑みはより幻想的になっていた。
「あの娘の名前は?」
「椎名奈菜だが」
「椎名奈菜……可愛かった。きみの彼女のミズ・白桃ほどではないが、奈菜ちゃんも最高に――」
「まじか……」
「軽蔑するような目では見ないでほしいね」
「軽蔑するわけじゃない。ただ……ゼロナってとにかく女好きなんだな」
「女性なら誰でもいいというわけではない。可愛くて、そしてとにかく可愛い娘が――」
「なるほど……」
***
実際はゼロナに椎名さんを会わせたくなかったから。
それに尽きる。
同性愛者であることは珍しくもない。
だが、それにしても、だ。
可愛い娘大好きすぎだろ、俺の新しいパートナーは……。
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