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フロストハウル編
第116話 最初から気付かれていたというどんでん返し
昼休みは時間の制限や周囲の目を気にしたりする必要があったが、放課後は違う。
本人は望まないかもしれないが、もう少し詳しい話を聞きたい。
帰りのホームルームが終わると、やっぱり椎名さんはすぐに教室を出た。
俺と関わり合いになるのが嫌なのかもしれない。
だが、仮にそうだとしたら、1つ気になることがあった。
「どうしてこの前、俺に接触してきたんだ?」
校門の近くで話を切り出す。
学校を出れば好きなだけ深い話ができるだろう。
椎名さんは観念したのか、逃げるような素振りを見せることなく俺に向き直った。
「この前って何のこと?」
「俺の正体がバレてすぐ、交際を迫ってきた時があっただろ」
少し恥ずかしいな。
だが、論点はおかしくない。
椎名さんは俺に関わりたくなさそうなスタンスだった。それなのに、この前は積極的に俺と関係を持とうとしてきたわけだ。
自分が超人であると知られて、都合が悪くなったというのが俺の見立てである。
「私と付き合いたいの?」
「そんなことは言ってない」
「そんなの、ただの気まぐれだから。黒瀬君が冒険者だと知って、ちょっと付き合ってみるのも悪くないかなって」
「本気でそう言っているようには見えないな」
「……わかるの?」
わかる。
椎名さんの顔がまったく笑ってない。感情が見えない。
「才斗くーん!」
「――ッ」
ここで、廊下で撒いたと思っていた楓香が後ろから現れた。
少し悠長に話しすぎていたらしい。
浮気だと勘違いされると困るので、この際はっきりと説明した方が良さそうだ。
俺たちに追いついた楓香の表情は恐ろしいほどに笑顔だった。張り付いたような、無理やり作るそれだ。
変な誤解を与えてしまっているのは確実だろう。
「これはどういうことですか?」
「椎名さんとは――」
「才斗くんがいつの間にか消えてたので、友達に聞いたら、椎名さんを追いかけていたとかで――」
「誤解だ。椎名さんを追いかけてたのは事実だが、実は――」
「椎名さんは清楚ビッチだって言ったじゃないですか! 才斗くんはわたしの体だけ見ていればいいんですぅ!」
そのセリフに、椎名さんがドン引きするのがわかった。
こっちにも変な誤解をされたような気がする。
「白桃さん、さっき私のこと、清楚ビッチって言った?」
さらには静かな声で問う椎名さん。
これはある意味、修羅場ではなかろうか。
「みんな言ってますよ! 椎名さんがいくら男好きだったとしても、わたしの才斗くんだけは渡しません!」
「……」
踏み込んではいけない領域に足を踏み入れてしまったかのように、この場がシーンと静まり返る。
椎名さんが怒っているのは間違いないし、楓香が勘違いしているのも確実だ。
この状況を俺が鎮めようとすれば、さらに2人の亀裂は大きくなり、収集がつかない事態になるのがオチだ。
つまり、ここでの俺の最善の行動は何もしないこと、何も言わないこと。
椎名さんは教室では絶対に見せないような闇堕ちしたような表情を作ると、無言のまま近くのベンチまで俺たちを誘導した。
何か深い話が始まるような気がする。
俺としても、ここで椎名さんの事情を把握しておきたい。ゼロナからは彼女について詳しく聞き込みをするように頼まれているからな。
それが任務のためなのか、単に椎名さんを狙っているからなのか。そこら辺はわからない。
「座って」
椎名さんの隣に楓香、その隣に俺が腰掛ける。
「まず誤解を解きたいんだけど、私は別に男好きでもないし、黒瀬君のことが気になっているわけでもない。そこだけは知ってほしいな」
「むぅー、でもいろんな男子を誘惑して、えっちなことをしてるって聞きましたよ」
「噂って勝手に大きくなるから、そんな適当な噂より、私の言葉を信じてほしいよ」
「……それもそうですね」
椎名さんの表情はリアルだった。
自分の知らないところで広がっていく噂に、本気でうんざりしているような、疲弊しきった顔をしていた。
楓香もその表情を見て考えを改めたらしい。
「楓香、俺からも言っておくが、俺が椎名さんに接触しようとしたのは、彼女が超人だからだ」
「超人?」
「ダンジョンに行かない冒険者と言った方がわかりやすいか」
「え!? 椎名さんが!?」
俺の顔と椎名さんの顔を交互に二度見する楓香。
なんだか可愛いな。
「黒瀬君の言う通り、実はこの前、私が夜の活動してる時にたまたま見つかっちゃって」
「夜の活動って、どんな活動ですか? やっぱりえっちなことですか?」
楓香の頭の中には下ネタしか浮かんでこないらしい。
淫乱ピンク美少女だ。
「私たちみたいな超人は、夜に活動を開始する。常人離れした力を使って、強盗したり殺人したり……そんな連中に好き勝手させないようにするのが私の活動」
「何かの組織に所属してるのか?」
「ううん、私はフリー契約みたいな感じだから、所属してるっていうよりは、ただ雇われてるって感じかな」
「政府に?」
「うん」
政府に関与しているなら、あとで少し調べればどうにかなりそうだし、警戒する必要もないだろう。
ゼロナからは連絡先を交換するように言われているが……状況をより混沌に近付けるだけな気がする。
これくらいで引いておいた方がいいのかもしれない。
「それじゃあ、俺たちはこれで――」
「それと黒瀬君」
「どうした?」
話を切り上げて退場しようとする俺を、急に呼び止めてくる椎名さん。
「この学校の生徒の中にも、私みたいな超人はたくさんいるよ。私はこれまで男子生徒だけじゃなくて女子生徒にも、超人の疑いがあれば接触を続けてきた」
「この学校に……?」
「たくさん人はいるんだから、いてもおかしくはないよね。この際だから言うけど、黒瀬君が【ウルフパック】の冒険者だってことは、入学した時から知ってたんだ」
本人は望まないかもしれないが、もう少し詳しい話を聞きたい。
帰りのホームルームが終わると、やっぱり椎名さんはすぐに教室を出た。
俺と関わり合いになるのが嫌なのかもしれない。
だが、仮にそうだとしたら、1つ気になることがあった。
「どうしてこの前、俺に接触してきたんだ?」
校門の近くで話を切り出す。
学校を出れば好きなだけ深い話ができるだろう。
椎名さんは観念したのか、逃げるような素振りを見せることなく俺に向き直った。
「この前って何のこと?」
「俺の正体がバレてすぐ、交際を迫ってきた時があっただろ」
少し恥ずかしいな。
だが、論点はおかしくない。
椎名さんは俺に関わりたくなさそうなスタンスだった。それなのに、この前は積極的に俺と関係を持とうとしてきたわけだ。
自分が超人であると知られて、都合が悪くなったというのが俺の見立てである。
「私と付き合いたいの?」
「そんなことは言ってない」
「そんなの、ただの気まぐれだから。黒瀬君が冒険者だと知って、ちょっと付き合ってみるのも悪くないかなって」
「本気でそう言っているようには見えないな」
「……わかるの?」
わかる。
椎名さんの顔がまったく笑ってない。感情が見えない。
「才斗くーん!」
「――ッ」
ここで、廊下で撒いたと思っていた楓香が後ろから現れた。
少し悠長に話しすぎていたらしい。
浮気だと勘違いされると困るので、この際はっきりと説明した方が良さそうだ。
俺たちに追いついた楓香の表情は恐ろしいほどに笑顔だった。張り付いたような、無理やり作るそれだ。
変な誤解を与えてしまっているのは確実だろう。
「これはどういうことですか?」
「椎名さんとは――」
「才斗くんがいつの間にか消えてたので、友達に聞いたら、椎名さんを追いかけていたとかで――」
「誤解だ。椎名さんを追いかけてたのは事実だが、実は――」
「椎名さんは清楚ビッチだって言ったじゃないですか! 才斗くんはわたしの体だけ見ていればいいんですぅ!」
そのセリフに、椎名さんがドン引きするのがわかった。
こっちにも変な誤解をされたような気がする。
「白桃さん、さっき私のこと、清楚ビッチって言った?」
さらには静かな声で問う椎名さん。
これはある意味、修羅場ではなかろうか。
「みんな言ってますよ! 椎名さんがいくら男好きだったとしても、わたしの才斗くんだけは渡しません!」
「……」
踏み込んではいけない領域に足を踏み入れてしまったかのように、この場がシーンと静まり返る。
椎名さんが怒っているのは間違いないし、楓香が勘違いしているのも確実だ。
この状況を俺が鎮めようとすれば、さらに2人の亀裂は大きくなり、収集がつかない事態になるのがオチだ。
つまり、ここでの俺の最善の行動は何もしないこと、何も言わないこと。
椎名さんは教室では絶対に見せないような闇堕ちしたような表情を作ると、無言のまま近くのベンチまで俺たちを誘導した。
何か深い話が始まるような気がする。
俺としても、ここで椎名さんの事情を把握しておきたい。ゼロナからは彼女について詳しく聞き込みをするように頼まれているからな。
それが任務のためなのか、単に椎名さんを狙っているからなのか。そこら辺はわからない。
「座って」
椎名さんの隣に楓香、その隣に俺が腰掛ける。
「まず誤解を解きたいんだけど、私は別に男好きでもないし、黒瀬君のことが気になっているわけでもない。そこだけは知ってほしいな」
「むぅー、でもいろんな男子を誘惑して、えっちなことをしてるって聞きましたよ」
「噂って勝手に大きくなるから、そんな適当な噂より、私の言葉を信じてほしいよ」
「……それもそうですね」
椎名さんの表情はリアルだった。
自分の知らないところで広がっていく噂に、本気でうんざりしているような、疲弊しきった顔をしていた。
楓香もその表情を見て考えを改めたらしい。
「楓香、俺からも言っておくが、俺が椎名さんに接触しようとしたのは、彼女が超人だからだ」
「超人?」
「ダンジョンに行かない冒険者と言った方がわかりやすいか」
「え!? 椎名さんが!?」
俺の顔と椎名さんの顔を交互に二度見する楓香。
なんだか可愛いな。
「黒瀬君の言う通り、実はこの前、私が夜の活動してる時にたまたま見つかっちゃって」
「夜の活動って、どんな活動ですか? やっぱりえっちなことですか?」
楓香の頭の中には下ネタしか浮かんでこないらしい。
淫乱ピンク美少女だ。
「私たちみたいな超人は、夜に活動を開始する。常人離れした力を使って、強盗したり殺人したり……そんな連中に好き勝手させないようにするのが私の活動」
「何かの組織に所属してるのか?」
「ううん、私はフリー契約みたいな感じだから、所属してるっていうよりは、ただ雇われてるって感じかな」
「政府に?」
「うん」
政府に関与しているなら、あとで少し調べればどうにかなりそうだし、警戒する必要もないだろう。
ゼロナからは連絡先を交換するように言われているが……状況をより混沌に近付けるだけな気がする。
これくらいで引いておいた方がいいのかもしれない。
「それじゃあ、俺たちはこれで――」
「それと黒瀬君」
「どうした?」
話を切り上げて退場しようとする俺を、急に呼び止めてくる椎名さん。
「この学校の生徒の中にも、私みたいな超人はたくさんいるよ。私はこれまで男子生徒だけじゃなくて女子生徒にも、超人の疑いがあれば接触を続けてきた」
「この学校に……?」
「たくさん人はいるんだから、いてもおかしくはないよね。この際だから言うけど、黒瀬君が【ウルフパック】の冒険者だってことは、入学した時から知ってたんだ」
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