ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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フロストハウル編

第119話 クラスでの出し物を決めようというザ・文化祭っていうイベント

 10月の最後の土日に文化祭が行われるということで、少しずつ準備に取りかからなければならなくなった。

 俺のクラスで文化祭実行委員を務めているのは椎名しいなさんだ。
 清楚ビッチとも噂されている椎名さんだが、実は超人として裏で活動している。

 本人が言うには清楚ビッチでもないようだし、噂っていうのは厄介だな。

 今日の6限は文化祭準備に使うことになっている。
 実行委員の椎名さんと真面目系男子のおか虎之介とらのすけが前に立ち、仕切り始めた。

「クラスでの出し物、みんなは何したい?」

 フレンドリーな笑顔で本題に入る椎名さん。

 俺の所属する2年3組はさほど積極的なクラスじゃない。
 こうやって意見を求められて、自主的に手を挙げて発表する生徒は岡くらいだ。

 だが、残念なことにその岡は今回仕切る側。
 彼が意見を出してくれると助かるが、まずは全体に意見を出してもらうことの方が大切だろう。

「あ、本賀ほんが君」

 気まずい沈黙が始まるかと心配していたが、どうやら杞憂だったらしい。

 驚いたことに、人前で発表することが苦手な大輔だいすけが手を挙げたのだ。
 ちなみに、席替えをしているので俺からはかなり遠い。

 俺は1番後ろの右端で大輔は1番前の左端だ。楓香ふうかはそのちょうど真ん中の位置にいる。

 大輔の挙手には、俺だけではなくほとんどの生徒が驚いていた。
 椎名さんもそのうちの1人だが、沈黙を避けられて安心しているようでもある。

「……メイド喫茶が……やりたいです……」

 ボソッと呟く大輔。

 堂々と手を挙げたにしては情けないぞ。

「メイド喫茶いいよね。岡君、黒板に書いてくれる?」

 クラス全体としての反応は良かった。
 特に男子は完全に盛り上がっているし、女子もしたそうな雰囲気をなんとなく出しているような気がする。

「……それと……」

「まだあるの?」

 大輔はまだ座ろうとはしなかった。

 まだ何か言いたそうにしている。
 椎名さんはすぐそれに気付き、大輔が発言しやすいように優しく促した。

「このクラスには才斗さいと白桃しらももさんがいるわけだし……ダンジョンメイド喫茶というか……そういうコンセプトでやりたいです……」

 燃え尽きたように腰を下ろす大輔。

 ここでいきなり俺と楓香の名前を出してくるとは。すっかり油断していた。

「なるほど。ダンジョンメイド喫茶……確かにこのクラスには貴重な・・・高校生冒険者がいるから、他のクラスとの差別化になるかも」

 椎名さんがフォローする間にも、岡は綺麗な字で『メイド喫茶―ダンジョンコンセプト』と板書していく。

「ですが、残念なことに冒険者は2人しかいませんね」

 ここまで発言を控えていた岡。
 ようやく口を開く。

 彼は同じ高校生とは思えないほど丁寧に話す。一応言っておくが、普段クラスメイトと話す時も敬語だ。
 背は俺と同じくらいで、後ろと横を刈り上げた短めの髪型。四角いフレームの眼鏡がトレードマークである。

 冒険者が2人しかいないという岡の発言に、佐藤さとうと椎名さんの肩がビクッと反応した。

「そうだね。でも、2人を全面的にプッシュすれば、ダンジョン冒険者のコンセプトでメイド喫茶できるかも。メイドはやりたい女の子たちがやるとして――」

「椎名さんはどうです?」

「え? わ、私は冒険者じゃないよ……?」

 わかりやすく動揺している椎名さん。
 そういう意味で聞いたわけじゃないと思うが。

「メイドのことですが……椎名さんはメイドをしたいと思いますか?」

「え、あ、うん。人数が足りなかったらしようかなぁ、なんて」

「わかりました」

 岡は黒板に俺と楓香の名前を書き、その隣に大きく看板キャラクターと記した。

「黒瀬さんと白桃さんは、こういう形でもいいですか?」

「……つまり、俺たちは何をすれば……?」

「そうですね……記念撮影に応じるですとか、質問に答えるですとか……そんな感じでしょうか」

「はぁ」

 つまりは見世物になるということか。
 他に何もしなくていいのなら、むしろその方が楽なのかもしれないな。

「わたしはちょっと嫌です。才斗くんと写真撮影するわけじゃないんですよね?」

「来客とすることになりますね」

「むぅー、もしその来客が変態で、わたしの隣で写真を撮りながら、えっちな妄想とかしてたらどうするんですか?」

「それは我慢してください」

 急にクラス全員の前で下ネタを言う楓香。
 俺は慣れているが他はそうでもない。

 そしてその対応をする岡だが、鬼畜すぎないか?

「記念撮影が嫌なら、店でメイドと一緒に接客してくれるだけでいいよ。冒険者のスーツ姿で」

「……わかりました。もちろん才斗くんとの記念撮影もNGですよ!」

「うん、もちろん」

 こういう時は椎名さんのコミュ力というか、場を丸く収める力に本気で感謝する。

 積極的でないクラスの話し合い、急な下ネタ、急な鬼畜発言。
 今日のMVPは間違いなく椎名さんだろう(もちろん大輔の頑張りも忘れてない)。

 というわけで、2年3組はダンジョン冒険者コンセプトのメイド喫茶をすることに決まった。



 ***



「あの時はかなり動揺してたみたいだな」

「しかたないよ。相手は岡君だったから」

 放課後、俺はいつも通り楓香と帰ろうとしていたわけだが、そこに椎名さんが乱入してきた。

 もう学校を出ているので、冒険者関係の話ができる。

 俺は話し合い途中の椎名さんの動揺について指摘していた。

「相手は岡くんだった、ってどういうことですか~? もしかして、岡くんのことが好きだったりして」

「は? 冗談はやめて」

 急に怖すぎる椎名さん。
 表情はガチだ。

「黒瀬君や白桃さんの他にも、この学校には超人がいるってこの前言ったよね」

 真剣な表情のまま、椎名さんが話し出す。
 もしかして、この流れは……。

「私はずっと前から、岡君も超人じゃないかって疑ってる。それも、政府と関係のない、何らかの組織の闇超人ヴィランとしてね」
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