ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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フロストハウル編

第124話 メイドに萌え萌えキュンされるドラゴンウルフ

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 西園寺さいおんじの次に一般客として現れたのは、2人のだった。

 ほぼ同時の到着。
 上級冒険者である2人が息を切らすほどの徒競走かけっこが、清明せいめい高校の廊下で行われていた。

「私が1番」

「いいえ、どう考えてもお姉さん(私)が1番でちゅよね、才斗さいとちゃん?」

 天音あまね姉さん及び真悠まゆ姉さん。
 この2人が仲良くなることはなさそうだ。

 美人すぎる年上のお姉さんから強い圧を受ける俺。

 店の裏方スタッフとして酷使されている男子生徒たちは、この様子を羨ましそうに眺めている。大輔だいすけもそのうちの1人だ。

「実は……もう先客がいるんだ」

 教室の入り口をゆびさす。
 2人の視線は教室の中へと注がれた。

 そこには、教室の中でメイド姿の椎名しいなに萌え萌えキュンされている男が――。

「さ、西園寺社長……どうして……」

 真悠姉さんは口をポカンと開け、放心状態に。

 先を越されていたことへのショックか、威厳ある社長が萌え萌えキュンされていることへのショックか……。
 一応西園寺のふにゃふにゃな姿を知ってはいるものの、俺や剣騎けんきほど見慣れているわけじゃない。

 それに、今日の西園寺は通常の威厳モードだ。
 引き締まった表情で萌え萌えキュンを受ける西園寺は、どこかシュールというか、見てるこっちが恥ずかしくなるというか……。

 一方で天音姉さんは目を見開いて驚きを示していた。

 表情で感情を語らないタイプの姉さん。
 そんな姉さんでも、さすがにこの光景には度肝を抜かれたか。

「まだ9時50分なのに……」

 小振りな口から漏れる一言。

 それを聞き、姉さんの驚愕の意味がなんとなくわかる。

 実際のところ、西園寺がここに来たのは9時40分だった。
 一般公開は10時からと言っていたわけだが、西園寺の威厳に負けて速攻で教室に入れてしまったのだ。

 10分前に来れば大丈夫だろうと思っていたのか。
 20分前に来ていた西園寺に負けたことが悔しいのかもしれない。



 ***



 ――まさか、西園寺龍河ドラゴンウルフ本波真悠アルテミスまで来るとは……。

 おかの頬を汗が伝う。

 白桃しらもも楓香ふうかの暗殺を命じられ、文化祭で任務を遂行すると宣言した岡。

 白桃暗殺の鍵は、彼女と黒瀬くろせを引き剥がすこと。
 それさえできれば、岡の実力で白桃を処分できる。

 岡の超人としてのランクはB。そのため、ランクは裏切らないという考えにのっとっると、白桃を仕留めることは十分可能だ。

 出店のスタッフの役割分担はしっかりと考えてある。

 黒瀬と白桃のどちらかがいなくてはコンセプトに反するので、冒険者2人の休憩は交代制。
 つまり、その間に2人が引き離されるわけだ。岡自身の休憩時間は白桃とかぶるように設定したので、準備は万端だった。

 しかし、ここで現れた【ウルフパック】のSランク冒険者2名。

 白桃が1人になるタイミングがあることに変わりはなさそうなのでそこは問題ないが、強者の目が多くなるというのはさらなる警戒が必要だ。

『キミの高校の敷地内に空間転移装置を用意しておく……白桃楓香をそこに放り込みさえすれば、キミの・・・勝利だ』

 ヴェルウェザーの不気味な笑いを思い出し、ポーカーフェイスの下で身震いする岡。

 他にも複数人、暗殺者組織【アサシン】から暗殺者が文化祭に紛れ込んでいると聞いている。
 彼らの目的は白桃ではないそうなので、バックアップにはさほど期待できない。

 ――まずはドラゴンウルフに帰ってもらいたいのですが……。

 岡は教室内で萌え萌えキュンされている西園寺を見ながら、本気で彼の退場を願った。



 ***



 11時になり、俺の休憩時間が回ってきた。
 彼女ガールフレンドである楓香と文化祭を楽しみたかったが、休憩時間が被ることはない。

「安心してください、才斗さいとくん。そのうち抜け出してきますからね!」

「それはダメだよ。わかってるよね?」

「あ……」

 怖い顔で楓香の後ろに立つ椎名しいな
 楓香でさえも固まってしまうほどの冷たい表情。

 責任者リーダーとして背負っているものもあるだろうから、ここはカップルのわがままを通すわけにはいかないよな。

 というわけで、一緒に文化祭を回る相手は――。

さい君の行きたいところはどこだ?」

「才斗は実の姉と回るべき」

「ちょっと、実の姉は私よ」

 父親のような雰囲気をかもし出している西園寺。
 俺の腕を強引に取って歩く天音姉さん。
 そんな実の姉に突っかかる、血の繋がりなど一切ない真悠姉さん。

 そして――。

「べ、別にあんたと一緒に文化祭回りたいわけじゃないんだからね」

 その後ろを怒ったような顔でついてくるツンデレ美少女、佐藤さとう
 長い黒髪はツインテールにしている。いつもはだいたいポニーテールだが、文化祭ということで特別仕様なのかもしれない。

 本来の髪と瞳の色は青と聞いている。
 ちなみに、佐藤が冒険者であるということは椎名にバレていなかった。

「メイド服じゃないんだな」

「あんな姿で廊下とか歩けるわけじゃないでしょ! ふざけてるわけ?」

「そういえば、佐藤の萌え萌えキュンは見てないな」

「あんなの、あたしは絶対にしないから!」

 萌え萌えキュンはツンデレの天敵だ。
 メイド服を着てくれただけで奇跡ってところだろう。

「それで、今からどこ行こうと思ってるわけ? 暇だし、あたしもついていくから」

 そのツンデレだけはブレないな。

 佐藤の言葉を受けて、他の3人も指示を待つように俺を見た。
 どうやら俺の行きたいところを最優先してくれるらしい。とはいえ、特に行きたいところがあるわけでもないんだが。

 だったら――。

「体育館に行ってみるか。11時からスペシャルゲストの講演会が始まってるらしい」

「スペシャルゲスト?」

 天音姉さんが反応する。
 小さく頷き、わかる範囲で答えた。

「スペシャルゲストが誰かは実行委員しか知らないらしい。凄い人が来るってやけに期待を高めてたから、本当に凄い人なのか気になるんだ」

「そこまで期待させるってことは、話題の芸能人か冒険者ってところね」

 今度は真悠姉さん。
 というか、真悠姉さんが「でちゅね」口調でしゃべってないのを聞くのは久しぶりだ。

 期待を膨らませながら体育館に向かう。

 芸能人はよくわからないから、できれば冒険者であってもらいたい。凄い冒険者っていうことは、【バトルホークス】あたりのSランク冒険者になるのか?

 体育館入り口。

 スペシャルゲストのマイクを通した声が聞こえてくる。

 それは間違いなく聞き覚えのある声だった。

 この声はまさか……。
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