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フロストハウル編
第126話 なめられすぎて年齢を下に見られているという哀れな大阪人
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黒瀬ら高ランク冒険者が体育館に向かっている間、岡には暗殺のチャンスが巡っていた。
元々は休憩時間に白桃を始末しようと考えていた岡だが、厄介者がまとめてどこかに行ってくれた今、どうにかして白桃を連れ出し――。
「お、なんや楓香ちゃんやないか。才斗はどないしたん?」
「青木さん?」
新たな客として現れたのは、大阪を拠点に活動するSランク冒険者、青木真一だった。
彼もまた、才斗の文化祭ということで東京の清明高校までやってきたのだ。
山口と一緒に回ろうと考えていた青木だったが、残念なことに山口は重要な会議のせいでここにはいない。
この瞬間、岡に到来したチャンスは消え去った。
「才斗くんはちょうど休憩中で、西園寺さんとかと回ってます」
「楓香ちゃんは休まれへんの?」
「冒険者役として才斗くんかわたしが残らないといけないんですよぉ。本当は才斗くんと一緒に文化祭を回って、本物のカップルのイチャイチャを全校生徒に見せつけたいんですけど」
「……なるほど。今日も相変わらず元気やなぁ……」
白桃の黒瀬才斗への愛は止まらない。
青木はそれを十分に理解していたので、話題をメイド喫茶のことへと強引に持っていくことにした。
「そんで、おれもメイド喫茶楽しんでええってことやな?」
「別にいいですけど、メイドにさわったり、メイドの太ももを見て変に興奮しちゃって、そのまま頭の中でエロい妄想に発展させたりしないでくださいね」
「いろいろとブレへんなぁ」
ある意味感心する青木。
白桃の下ネタには最近少しずつ慣れてきた。
「今から入っても全然ええけど、才斗が帰ってきてからの方が面白そうやな……いや、でも……それやと社長もいるんか……」
「西園寺さん、そんなに怖いですか?」
「何言うてるの? 怖いに決まっとるやん! もしかして、副社長もここにおるとか――」
「一ノ瀬さんは来てませんよ。来ないとも言い切れませんけどね。社長も副社長も年上ですし、威厳があるから怖がるのはわかりますけど――」
「いや、社長はともかく、副社長より年上やで、おれ。29と32や」
「え……32歳?」
「ほら、今初めて知ったみたいな顔したやん! 聞いたことはあるはずやけど、関わっていくうちに忘れていって――」
「本当に32歳なんですか? 大丈夫です? 結構みんなからなめられてるみたいですけど」
青木の実年齢に驚いているのは白桃だけではなかった。
このやり取りを聞いていた周囲のクラスメイトたちも、口をポカンと開いて驚愕している。
岡や椎名もその中のうちの1人だ。
その様子を見て、青木はもの凄く深い溜め息をついた。
「冒険者としてのランクが上がれば上がるほど、老化するスピードが遅くなる性質があるらしいんやけど……別におれがなめられるのは若い容姿のせいやないもんな」
「勝手に山口さんと同い年くらいって思ってました」
「いやいや、剣騎とは10歳差や。ほんまに困るなぁ。まあ、若く見られるのは別にいいんやけど」
緩い関西弁を話しながら、頭をかく青木。
実際のところ、冒険者の社会ではさほど年齢は関係ないとされている。
年功序列という考え方など一切ない、実力至上主義の世界だ。
年齢がバラバラな【ウルフパック】の幹部たちの関係性からもわかるだろう。西園寺が敬われているのは、彼が社長かつ1番の実力者だからだ。
「青木さん……」
「なんや?」
「年齢が実は32歳だっていうの、もっと積極的に言っていった方がいいと思います……」
***
気付けば、俺、西園寺、真悠姉さんの3人もトークショーに参加させられていた。
雷電がノリで言った「せっかくだし、みんなでしゃべった方が楽しいっしょ」というセリフが全ての元凶だ。
「別に黒瀬も来てとか言ってないしー」
「そうか。なら俺は降りる」
「才斗ちゃんが降りるなら私も降りるしかないわ」
「同意見だ」
「いやいや普通に冗談だから!」
降りますの連鎖反応に焦る雷電。
いい気味だ。
正直人前で話すとか勘弁してほしかったのだが、まあいい。せっかくだし、雷電が言っていたことよりもちゃんとした内容を話そうじゃないか。
「なんと、このステージに日本有数のSランク冒険者が4名も並ぶという現象が起こっています! これはかなり貴重な光景ですよ!」
放送部の女子生徒が全体を盛り上げる。
だが、俺たちの登場によってすでに会場の熱気は最高潮に達していた。
「左から、先日の最強冒険者決定戦では準優勝という偉大な成績を収められた西園寺龍河さん! そして日本最強の治癒師とも称される本波真悠さん!」
西園寺の紹介では女性の、真悠姉さんの紹介では男性の歓声の割合が多かったような気がする。
さて、それなら俺はどういう割合になるのか。
個人的には半々くらいがいい。
「最後に、この清明高校に通う2年生でありながら、日本最年少Sランク記録保持者の黒瀬才斗さんです!」
俺への歓声は西園寺や真悠姉さんにはまったく及ばなかった。
そもそも俺はこの学校の生徒だし、スペシャルゲストとは言えないからな。ちなみに女性からの歓声の方が気持ち多めな感じがした。
***
「本当に氷室澪奈は現れるんでしょうか?」
「それは間違いない。ずっと張り込みを続けてきただろ。自信持てって」
清明高校の正門のすぐ近く。
少し前のある夜と同じように、2人の男が陰に隠れて様子をうかがっていた。
青ひげの目立つ中肉中背の男と、細身でノッポの男だ。
ノッポの男の不安げな呟きに対し、自信ありげに答える青ひげの男。
「今日は待ちに待った作戦の決行日。オレの作戦は完璧だから絶対上手くいく!」
「そうですね。ですが、やっぱり相手はあのフロストハウルですし……」
「おい、やっとあの屈辱を晴らす時が来たんだぜ? もう後戻りなんてできねぇんだ」
ここで、青ひげの男が人差し指ほどの大きさの、コンパクトな注射器を取り出した。中には赤い液体が入っている。
「これをあいつの体内にぶち込めば、あいつは我を忘れ、暴走し、この高校をぶっ壊す。そして日本を騒がすビッグニュースになって、フロストハウルは刑務所行きってわけよ」
元々は休憩時間に白桃を始末しようと考えていた岡だが、厄介者がまとめてどこかに行ってくれた今、どうにかして白桃を連れ出し――。
「お、なんや楓香ちゃんやないか。才斗はどないしたん?」
「青木さん?」
新たな客として現れたのは、大阪を拠点に活動するSランク冒険者、青木真一だった。
彼もまた、才斗の文化祭ということで東京の清明高校までやってきたのだ。
山口と一緒に回ろうと考えていた青木だったが、残念なことに山口は重要な会議のせいでここにはいない。
この瞬間、岡に到来したチャンスは消え去った。
「才斗くんはちょうど休憩中で、西園寺さんとかと回ってます」
「楓香ちゃんは休まれへんの?」
「冒険者役として才斗くんかわたしが残らないといけないんですよぉ。本当は才斗くんと一緒に文化祭を回って、本物のカップルのイチャイチャを全校生徒に見せつけたいんですけど」
「……なるほど。今日も相変わらず元気やなぁ……」
白桃の黒瀬才斗への愛は止まらない。
青木はそれを十分に理解していたので、話題をメイド喫茶のことへと強引に持っていくことにした。
「そんで、おれもメイド喫茶楽しんでええってことやな?」
「別にいいですけど、メイドにさわったり、メイドの太ももを見て変に興奮しちゃって、そのまま頭の中でエロい妄想に発展させたりしないでくださいね」
「いろいろとブレへんなぁ」
ある意味感心する青木。
白桃の下ネタには最近少しずつ慣れてきた。
「今から入っても全然ええけど、才斗が帰ってきてからの方が面白そうやな……いや、でも……それやと社長もいるんか……」
「西園寺さん、そんなに怖いですか?」
「何言うてるの? 怖いに決まっとるやん! もしかして、副社長もここにおるとか――」
「一ノ瀬さんは来てませんよ。来ないとも言い切れませんけどね。社長も副社長も年上ですし、威厳があるから怖がるのはわかりますけど――」
「いや、社長はともかく、副社長より年上やで、おれ。29と32や」
「え……32歳?」
「ほら、今初めて知ったみたいな顔したやん! 聞いたことはあるはずやけど、関わっていくうちに忘れていって――」
「本当に32歳なんですか? 大丈夫です? 結構みんなからなめられてるみたいですけど」
青木の実年齢に驚いているのは白桃だけではなかった。
このやり取りを聞いていた周囲のクラスメイトたちも、口をポカンと開いて驚愕している。
岡や椎名もその中のうちの1人だ。
その様子を見て、青木はもの凄く深い溜め息をついた。
「冒険者としてのランクが上がれば上がるほど、老化するスピードが遅くなる性質があるらしいんやけど……別におれがなめられるのは若い容姿のせいやないもんな」
「勝手に山口さんと同い年くらいって思ってました」
「いやいや、剣騎とは10歳差や。ほんまに困るなぁ。まあ、若く見られるのは別にいいんやけど」
緩い関西弁を話しながら、頭をかく青木。
実際のところ、冒険者の社会ではさほど年齢は関係ないとされている。
年功序列という考え方など一切ない、実力至上主義の世界だ。
年齢がバラバラな【ウルフパック】の幹部たちの関係性からもわかるだろう。西園寺が敬われているのは、彼が社長かつ1番の実力者だからだ。
「青木さん……」
「なんや?」
「年齢が実は32歳だっていうの、もっと積極的に言っていった方がいいと思います……」
***
気付けば、俺、西園寺、真悠姉さんの3人もトークショーに参加させられていた。
雷電がノリで言った「せっかくだし、みんなでしゃべった方が楽しいっしょ」というセリフが全ての元凶だ。
「別に黒瀬も来てとか言ってないしー」
「そうか。なら俺は降りる」
「才斗ちゃんが降りるなら私も降りるしかないわ」
「同意見だ」
「いやいや普通に冗談だから!」
降りますの連鎖反応に焦る雷電。
いい気味だ。
正直人前で話すとか勘弁してほしかったのだが、まあいい。せっかくだし、雷電が言っていたことよりもちゃんとした内容を話そうじゃないか。
「なんと、このステージに日本有数のSランク冒険者が4名も並ぶという現象が起こっています! これはかなり貴重な光景ですよ!」
放送部の女子生徒が全体を盛り上げる。
だが、俺たちの登場によってすでに会場の熱気は最高潮に達していた。
「左から、先日の最強冒険者決定戦では準優勝という偉大な成績を収められた西園寺龍河さん! そして日本最強の治癒師とも称される本波真悠さん!」
西園寺の紹介では女性の、真悠姉さんの紹介では男性の歓声の割合が多かったような気がする。
さて、それなら俺はどういう割合になるのか。
個人的には半々くらいがいい。
「最後に、この清明高校に通う2年生でありながら、日本最年少Sランク記録保持者の黒瀬才斗さんです!」
俺への歓声は西園寺や真悠姉さんにはまったく及ばなかった。
そもそも俺はこの学校の生徒だし、スペシャルゲストとは言えないからな。ちなみに女性からの歓声の方が気持ち多めな感じがした。
***
「本当に氷室澪奈は現れるんでしょうか?」
「それは間違いない。ずっと張り込みを続けてきただろ。自信持てって」
清明高校の正門のすぐ近く。
少し前のある夜と同じように、2人の男が陰に隠れて様子をうかがっていた。
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ノッポの男の不安げな呟きに対し、自信ありげに答える青ひげの男。
「今日は待ちに待った作戦の決行日。オレの作戦は完璧だから絶対上手くいく!」
「そうですね。ですが、やっぱり相手はあのフロストハウルですし……」
「おい、やっとあの屈辱を晴らす時が来たんだぜ? もう後戻りなんてできねぇんだ」
ここで、青ひげの男が人差し指ほどの大きさの、コンパクトな注射器を取り出した。中には赤い液体が入っている。
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