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フロストハウル編
第131話 いい感じのシーンで邪魔が入るというアレ
最強の社長西園寺がたった一撃で戦線離脱した。
「ちょっと黒瀬……これ、もしかしてヤバい感じ?」
「……だな」
隣に立つ雷電の表情が一気に青ざめる。
西園寺の圧倒的なパワーを知っているだけに、この状況はかなりのピンチだ。
とはいえ、俺はまだ冷静な思考を保てていた。
剣騎が言うには、さっきのような規格外の攻撃を受けると西園寺はさらに強くなる。だとすれば、オート回復とかいう反則能力を発動させながら、誰もが恐れる冒険者として戦線復帰してくれるに違いない。
西園寺が俺を信じてくれていることと同じように、俺もまた西園寺の強さに関しては絶対的な信頼を置いていた。
だが、俺たちも彼と同じSランク冒険者。
いつまでも無敵の社長に助けられているばかりではいられない。
青ざめた顔から一瞬で雷電の表情が引き締まったのも、きっと同じことを考えているからだと思う。
「しゃちょーが戻ってくるまでどれくらいかかる?」
違った。
雷電は完全に西園寺の戦線復帰を期待していた。
「知るわけないだろ、そんなこと」
「だってぇ、黒瀬ってしゃちょーのオキニじゃん」
「それとこれとは関係ない。俺たちだけであいつを――ッ」
「――ひぇ!」
悠長に話している場合ではなかった。
剣すら使わないノッポの男は、ブーストがかかったかのような速さで俺にまで腹パンを繰り出してくる。
当然、西園寺ですら回避できなかった一撃に俺が対応できるわけがない。
シャドウライドで影に入り込む隙なんてものはなかった。
西園寺と同じ軌道をたどり、西園寺が突き破ったことでできた穴を通過し、体育館の外に放り出される。
それだけで全身はボロボロだ。
頭から足先まで、激痛が俺を襲う。
「才斗ちゃん!」
「真悠姉さん……」
呆気なく敗北した俺を助けるために、真悠姉さんが駆けつけてきた。さっと膝枕され、治癒を施される。その間、俺の顔面は真悠姉さんの温かい下乳に包まれていた。
愛情ある膝枕と治癒により、少しずつ意識が遠のいていく。
このまま意識を手放してしまったら、どうなるんだろう。
西園寺が全てを片付けて、もう大丈夫だ、と優しく言ってくれるだろうか。
「さ、才くぅん!」
「……え!?」
とか思っていると、西園寺が俺の体を必死に揺さぶってきた。
涙目で、顔もぐちゃぐちゃである。
ひとまず無事なことには安心したが、どうして雷電の加勢に行かないんだ?
困惑のおかげで、俺の眠気が一瞬にして消え去る。
「社長、雷電は――?」
「お、オレ、今自信を失ってるんだ……」
「――は?」
「どうしよう!? あんな一撃は聞いてないって! オレのせいで、みんなが死んじゃうよぅ!」
これは……かなり重症だ。
下乳のせいで表情までは見えないが、真悠姉さんもドン引きしていることだろう。西園寺のふにゃふにゃな一面を知っているとはいえ、このていたらくは……。
「社長、しっかりしてください!」
「で、でもぉ……」
「俺はまだ戦えます。体育館にはまだ、雷電も、姉さんも、佐藤もいる! ここで俺たちが逃げ出したら、誰もヤツを止められません!」
「……」
西園寺の涙が止まる。
弱気になり、濁っていた瞳の中に、瞋恚の炎が浮かび上がった。
一気に収束される大量のオーラ。
西園寺の体に周囲の魔力が集まっていく。
「私としたことが、部下にみっともない姿を見せてしまった」
「社長……」
みっともない姿なら、これまでに何度も見ているが。
まあ、ここまで情けない姿を見たのは初めてだったな。
だが、今の状態の西園寺は最高に心強い。負ける気がしなかった。
真悠姉さんに支えられながらゆっくりと立ち上がり、今も激しい戦いが行われているであろう体育館を見据える。
「本波真悠、君は天音ちゃんと佐藤勝海と共に、体育館から避難しろ。我々以外誰も体育館に残すな」
「はい」
「体育館は粉々になるだろう。修理代を請求されるかもしれないが、まあいい」
体育館が粉々になる。
それはもしや、西園寺のあの最強の必殺技が見れるということだろうか。
発動条件があるとかいう話だったが、その条件が全て整った、ということを示唆しているんだろうか。
「才君、覚悟はできてるか?」
西園寺が俺に覚悟を問う。
答えは決まっていた。
俺だって、西園寺に負けない活躍をしたい。西園寺が必殺技を出さなくてもいいくらいに、俺があの男を追い詰めたい。
「はい、行きまし――」
気合いを入れて再び戦場に舞い戻ろうというところで、俺の言葉は中断される。
「――雷電!」
軌道はまったく同じだった。
まっすぐ飛ばされた雷電が、その着地地点である俺の現在の立ち位置に突っ込んできた――そういうことだ。
俺がクッションとなり、雷電の小柄で柔らかい体が守られる。
目を開けると、すぐ目の前に雷電の小さな顔があった。
そして――。
「「あ……」」
雷電の唇は、俺の唇とピッタリくっついていた。
「ちょっと黒瀬……これ、もしかしてヤバい感じ?」
「……だな」
隣に立つ雷電の表情が一気に青ざめる。
西園寺の圧倒的なパワーを知っているだけに、この状況はかなりのピンチだ。
とはいえ、俺はまだ冷静な思考を保てていた。
剣騎が言うには、さっきのような規格外の攻撃を受けると西園寺はさらに強くなる。だとすれば、オート回復とかいう反則能力を発動させながら、誰もが恐れる冒険者として戦線復帰してくれるに違いない。
西園寺が俺を信じてくれていることと同じように、俺もまた西園寺の強さに関しては絶対的な信頼を置いていた。
だが、俺たちも彼と同じSランク冒険者。
いつまでも無敵の社長に助けられているばかりではいられない。
青ざめた顔から一瞬で雷電の表情が引き締まったのも、きっと同じことを考えているからだと思う。
「しゃちょーが戻ってくるまでどれくらいかかる?」
違った。
雷電は完全に西園寺の戦線復帰を期待していた。
「知るわけないだろ、そんなこと」
「だってぇ、黒瀬ってしゃちょーのオキニじゃん」
「それとこれとは関係ない。俺たちだけであいつを――ッ」
「――ひぇ!」
悠長に話している場合ではなかった。
剣すら使わないノッポの男は、ブーストがかかったかのような速さで俺にまで腹パンを繰り出してくる。
当然、西園寺ですら回避できなかった一撃に俺が対応できるわけがない。
シャドウライドで影に入り込む隙なんてものはなかった。
西園寺と同じ軌道をたどり、西園寺が突き破ったことでできた穴を通過し、体育館の外に放り出される。
それだけで全身はボロボロだ。
頭から足先まで、激痛が俺を襲う。
「才斗ちゃん!」
「真悠姉さん……」
呆気なく敗北した俺を助けるために、真悠姉さんが駆けつけてきた。さっと膝枕され、治癒を施される。その間、俺の顔面は真悠姉さんの温かい下乳に包まれていた。
愛情ある膝枕と治癒により、少しずつ意識が遠のいていく。
このまま意識を手放してしまったら、どうなるんだろう。
西園寺が全てを片付けて、もう大丈夫だ、と優しく言ってくれるだろうか。
「さ、才くぅん!」
「……え!?」
とか思っていると、西園寺が俺の体を必死に揺さぶってきた。
涙目で、顔もぐちゃぐちゃである。
ひとまず無事なことには安心したが、どうして雷電の加勢に行かないんだ?
困惑のおかげで、俺の眠気が一瞬にして消え去る。
「社長、雷電は――?」
「お、オレ、今自信を失ってるんだ……」
「――は?」
「どうしよう!? あんな一撃は聞いてないって! オレのせいで、みんなが死んじゃうよぅ!」
これは……かなり重症だ。
下乳のせいで表情までは見えないが、真悠姉さんもドン引きしていることだろう。西園寺のふにゃふにゃな一面を知っているとはいえ、このていたらくは……。
「社長、しっかりしてください!」
「で、でもぉ……」
「俺はまだ戦えます。体育館にはまだ、雷電も、姉さんも、佐藤もいる! ここで俺たちが逃げ出したら、誰もヤツを止められません!」
「……」
西園寺の涙が止まる。
弱気になり、濁っていた瞳の中に、瞋恚の炎が浮かび上がった。
一気に収束される大量のオーラ。
西園寺の体に周囲の魔力が集まっていく。
「私としたことが、部下にみっともない姿を見せてしまった」
「社長……」
みっともない姿なら、これまでに何度も見ているが。
まあ、ここまで情けない姿を見たのは初めてだったな。
だが、今の状態の西園寺は最高に心強い。負ける気がしなかった。
真悠姉さんに支えられながらゆっくりと立ち上がり、今も激しい戦いが行われているであろう体育館を見据える。
「本波真悠、君は天音ちゃんと佐藤勝海と共に、体育館から避難しろ。我々以外誰も体育館に残すな」
「はい」
「体育館は粉々になるだろう。修理代を請求されるかもしれないが、まあいい」
体育館が粉々になる。
それはもしや、西園寺のあの最強の必殺技が見れるということだろうか。
発動条件があるとかいう話だったが、その条件が全て整った、ということを示唆しているんだろうか。
「才君、覚悟はできてるか?」
西園寺が俺に覚悟を問う。
答えは決まっていた。
俺だって、西園寺に負けない活躍をしたい。西園寺が必殺技を出さなくてもいいくらいに、俺があの男を追い詰めたい。
「はい、行きまし――」
気合いを入れて再び戦場に舞い戻ろうというところで、俺の言葉は中断される。
「――雷電!」
軌道はまったく同じだった。
まっすぐ飛ばされた雷電が、その着地地点である俺の現在の立ち位置に突っ込んできた――そういうことだ。
俺がクッションとなり、雷電の小柄で柔らかい体が守られる。
目を開けると、すぐ目の前に雷電の小さな顔があった。
そして――。
「「あ……」」
雷電の唇は、俺の唇とピッタリくっついていた。
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