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フロストハウル編
第133話 自分が超人であることを告白してしまうナナサン革命
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体育館からの爆音を聞き、すぐさま下足室に向かった椎名奈菜。
彼女は剣の所持こそしているが、黒瀬才斗たちのようにナノテクで形状を変えて持ち運ぶことなどできない。
さらにはスーツに一瞬で変身することも不可能だ。
そのため、メイド服姿のままで下まで降りてくることとなった。
「これは……」
下足室からはちょうど2つの戦いの現場を確認することができる。
体育館と下足室前の受付ブース。
椎名が下足室に着いた時には、もうすでに2つの戦いの火蓋が切られていた。
――何が起こってるの?
体育館の中での戦いは見えないが、壁が大胆に破壊されていることはしっかりと確認できた。そして、受付ブースでは銀髪の麗人と暴走する白髪の男が剣を打ち合っている。
パッと見る限り、Cランクの実力を持つ椎名では対応できない、次元の違う戦いだ。
――あれは……Sランク同士の戦い……?
Sランク冒険者は有名だ。
だから顔と名前はほとんどの国民に知られている。
しかし、今下足室前で戦いを繰り広げている2人は完全に無名だった。表向きには存在が隠されている超人だったとしても、Sランクほどの実力を持つ者など聞いたことがない。
冒険者としてダンジョンに潜り続けていないと、それほどまでのレベルには到達できないからだ。
「……あああああぁぁぁぁぁあああああ!」
絶叫が轟く。
多くの一般人が校舎内か校外に逃げたようだが、逃げ残り――近く動画を撮るために逃げようとしなかった愚かな男子生徒が手を切断されたらしい。
銀髪の麗人が彼を守るようにして立っているが、ほんの一瞬間に合わなかった。
――あの人は……。
強烈な既視感。
銀髪の隠れSランク冒険者なんて存在と会ったことがあるのなら、絶対に忘れるはずはない。そう思ってその既視感を誤魔化そうとしたが……ここで気付く。
夜の任務中、黒瀬と行動を共にしていた女超人である、と。
チラ見した程度だったが、品のある端正な顔立ちが脳にはっきりと刻み込まれていたらしい。
こんな非常事態に黒瀬や西園寺龍河らのSランク冒険者は何をしているのか。
椎名の中に一瞬の焦燥感と苛立ちが募ったが、体育館をもう一度見て納得する。
――あの人たちはあっちで戦ってるんだ……。
Sランク並みの戦いを目の前に、椎名は非力だ。
教室から動かないようにと言った白桃を呼ぶことも考えたが、彼女もまた、自分と同じCランク。
Cランクが2人になったところで、Sランクには触れることすらできない。
これほどまでに強烈な無力感を感じたことはなかった。
身近に起こるはずのない激しい戦闘を目の当たりにして、悲鳴を上げ、逃げ惑う一般人。
今の椎名は、そんな一般人と大して変わらない。
「――ッ」
だとすれば、今自分にできることは何か。
戦いに参加しても足手纏いになるだけ。負傷した男子生徒の治療をしてやることだってできない。
「ちょいと道開けてや」
下足室に駆け込んでくる一般人。
彼らを押しのけ、外で行われている戦いの方へと向かっている男がいた。
下足室前でどう動くべきか考えている椎名に、青木の声がかかる。
「青木さん!」
「お、その格好……才斗と同じクラスの娘か。ここで何しとるん? 危険やから――」
「この状況で、私たち一般人にも何かできることはありますか?」
「……」
椎名と青木は面識があったわけではない。
しかし、Sランク冒険者としての青木真一を知る椎名は、必死で彼に助言を求めていた。
小さなことでもいい。
超人としてではなく、一般人として。
自分にできることを探していた。
「そうやな……戦いはおれたち冒険者がなんとかする。そのうち体育館からも人が逃げてくるはずや。その人たちの誘導を頼んでもええか?」
「はい!」
元気よく返事をする椎名。
青木は女子高生に頼られたことが誇らしかったのか、自信に満ちた表情のまま、氷室に加勢しにいった。
「美人なお姉さん、危険やから離れな。ここから先はSランク冒険者の仕事や」
その結果、あとで恥をかくムーブをかましてしまったのである。
***
体育館から流れてくる、パニック状態の一般人たち。
頭から血を流した負傷者や、ショックを受けて声を出せないでいるような子供まで。
椎名はそんな人たちを校内に誘導すべく、メイド姿のまま近付いていった。
「椎名? こんなところで何してるわけ?」
「佐藤さんこそ……体育館で何があったの?」
ここで椎名と佐藤が合流する。
普段仲良く話すような間柄ではないものの、同じメイド喫茶のメイド役としての交流はあった。しかし、実はお互い超人であるということは知らない。
佐藤も椎名も、自分が超人という事実は周囲に隠しているため、黒瀬と白桃以外には伝えないように心がけていたのだ。
「見たらわかるでしょ。変な男が襲ってきたの!」
「……それで、黒瀬君たちが戦ってるってこと?」
「あれは私たちの手に負える相手ではない。まずは一般人を全員出すことを優先すべき」
ここで、黒髪ロングの美人が口を挟んでくる。
メイド喫茶にも客として来ていた美女だ。
「あなたは……黒瀬君のお姉さん?」
「私は天音。才斗の実の姉」
実の、の部分を強調して自己紹介する天音。
しかし、この状況でそんなことはどうでもよく――。
「黒――才斗君たちは中で戦ってるんですか?」
椎名の必死な質問に天音が頷いた。
「私もすぐに行く。あなたは早く逃げた方がいい」
「すぐに行くって……もしかしてお姉さんも冒険者なんですか?」
天音は躊躇することなく、自分が冒険者であることを認める。
「だから私たちに任せて、あなたは逃げるべき」
「私も実は冒険者なんです! だから手伝わせてください! 避難の誘導くらいはできます!」
厳密には冒険者ではなく超人だが、やっていることが違うだけなので本質的には変わらない。
椎名の衝撃の一言に、佐藤が思わず声を上げた。
「な――ッ。あんた今まで、自分が冒険者ってことあたしに黙ってたわけ!? 同じメイドなのに?」
「それとこれとは関係ないでしょ……」
「べ、別にあたしも冒険者だとか、言わないんだからねっ!」
「え……嘘だよね?」
「それは間違いない。私が保証する」
どうやら嘘ではないらしい。
佐藤のツンデレ構文をある程度理解している椎名は、さっきの言い方からも本当のことなのだと悟ってしまっていた。
彼女は剣の所持こそしているが、黒瀬才斗たちのようにナノテクで形状を変えて持ち運ぶことなどできない。
さらにはスーツに一瞬で変身することも不可能だ。
そのため、メイド服姿のままで下まで降りてくることとなった。
「これは……」
下足室からはちょうど2つの戦いの現場を確認することができる。
体育館と下足室前の受付ブース。
椎名が下足室に着いた時には、もうすでに2つの戦いの火蓋が切られていた。
――何が起こってるの?
体育館の中での戦いは見えないが、壁が大胆に破壊されていることはしっかりと確認できた。そして、受付ブースでは銀髪の麗人と暴走する白髪の男が剣を打ち合っている。
パッと見る限り、Cランクの実力を持つ椎名では対応できない、次元の違う戦いだ。
――あれは……Sランク同士の戦い……?
Sランク冒険者は有名だ。
だから顔と名前はほとんどの国民に知られている。
しかし、今下足室前で戦いを繰り広げている2人は完全に無名だった。表向きには存在が隠されている超人だったとしても、Sランクほどの実力を持つ者など聞いたことがない。
冒険者としてダンジョンに潜り続けていないと、それほどまでのレベルには到達できないからだ。
「……あああああぁぁぁぁぁあああああ!」
絶叫が轟く。
多くの一般人が校舎内か校外に逃げたようだが、逃げ残り――近く動画を撮るために逃げようとしなかった愚かな男子生徒が手を切断されたらしい。
銀髪の麗人が彼を守るようにして立っているが、ほんの一瞬間に合わなかった。
――あの人は……。
強烈な既視感。
銀髪の隠れSランク冒険者なんて存在と会ったことがあるのなら、絶対に忘れるはずはない。そう思ってその既視感を誤魔化そうとしたが……ここで気付く。
夜の任務中、黒瀬と行動を共にしていた女超人である、と。
チラ見した程度だったが、品のある端正な顔立ちが脳にはっきりと刻み込まれていたらしい。
こんな非常事態に黒瀬や西園寺龍河らのSランク冒険者は何をしているのか。
椎名の中に一瞬の焦燥感と苛立ちが募ったが、体育館をもう一度見て納得する。
――あの人たちはあっちで戦ってるんだ……。
Sランク並みの戦いを目の前に、椎名は非力だ。
教室から動かないようにと言った白桃を呼ぶことも考えたが、彼女もまた、自分と同じCランク。
Cランクが2人になったところで、Sランクには触れることすらできない。
これほどまでに強烈な無力感を感じたことはなかった。
身近に起こるはずのない激しい戦闘を目の当たりにして、悲鳴を上げ、逃げ惑う一般人。
今の椎名は、そんな一般人と大して変わらない。
「――ッ」
だとすれば、今自分にできることは何か。
戦いに参加しても足手纏いになるだけ。負傷した男子生徒の治療をしてやることだってできない。
「ちょいと道開けてや」
下足室に駆け込んでくる一般人。
彼らを押しのけ、外で行われている戦いの方へと向かっている男がいた。
下足室前でどう動くべきか考えている椎名に、青木の声がかかる。
「青木さん!」
「お、その格好……才斗と同じクラスの娘か。ここで何しとるん? 危険やから――」
「この状況で、私たち一般人にも何かできることはありますか?」
「……」
椎名と青木は面識があったわけではない。
しかし、Sランク冒険者としての青木真一を知る椎名は、必死で彼に助言を求めていた。
小さなことでもいい。
超人としてではなく、一般人として。
自分にできることを探していた。
「そうやな……戦いはおれたち冒険者がなんとかする。そのうち体育館からも人が逃げてくるはずや。その人たちの誘導を頼んでもええか?」
「はい!」
元気よく返事をする椎名。
青木は女子高生に頼られたことが誇らしかったのか、自信に満ちた表情のまま、氷室に加勢しにいった。
「美人なお姉さん、危険やから離れな。ここから先はSランク冒険者の仕事や」
その結果、あとで恥をかくムーブをかましてしまったのである。
***
体育館から流れてくる、パニック状態の一般人たち。
頭から血を流した負傷者や、ショックを受けて声を出せないでいるような子供まで。
椎名はそんな人たちを校内に誘導すべく、メイド姿のまま近付いていった。
「椎名? こんなところで何してるわけ?」
「佐藤さんこそ……体育館で何があったの?」
ここで椎名と佐藤が合流する。
普段仲良く話すような間柄ではないものの、同じメイド喫茶のメイド役としての交流はあった。しかし、実はお互い超人であるということは知らない。
佐藤も椎名も、自分が超人という事実は周囲に隠しているため、黒瀬と白桃以外には伝えないように心がけていたのだ。
「見たらわかるでしょ。変な男が襲ってきたの!」
「……それで、黒瀬君たちが戦ってるってこと?」
「あれは私たちの手に負える相手ではない。まずは一般人を全員出すことを優先すべき」
ここで、黒髪ロングの美人が口を挟んでくる。
メイド喫茶にも客として来ていた美女だ。
「あなたは……黒瀬君のお姉さん?」
「私は天音。才斗の実の姉」
実の、の部分を強調して自己紹介する天音。
しかし、この状況でそんなことはどうでもよく――。
「黒――才斗君たちは中で戦ってるんですか?」
椎名の必死な質問に天音が頷いた。
「私もすぐに行く。あなたは早く逃げた方がいい」
「すぐに行くって……もしかしてお姉さんも冒険者なんですか?」
天音は躊躇することなく、自分が冒険者であることを認める。
「だから私たちに任せて、あなたは逃げるべき」
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厳密には冒険者ではなく超人だが、やっていることが違うだけなので本質的には変わらない。
椎名の衝撃の一言に、佐藤が思わず声を上げた。
「な――ッ。あんた今まで、自分が冒険者ってことあたしに黙ってたわけ!? 同じメイドなのに?」
「それとこれとは関係ないでしょ……」
「べ、別にあたしも冒険者だとか、言わないんだからねっ!」
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