ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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フロストハウル編

第136話 可愛い女の子のためならどこまでもついていく銀髪の麗人

 ――この力は……まさかBランク!?

 休憩に入り、弁当購入のためにおかと階段を下りていた白桃しらもも

 しかし突然横から顔面をつかまれ、階段の踊り場に設置されている窓から突き落とされる。

 強化ガラスが割れる激しい音。
 踊り場には他に人がいなかったこと、体育館及び受付ブース付近で騒ぎが起きていること。その2つの要素が重なったことにより、この小さな事件に気付く一般人はいなかった。

 2階と3階の間に位置する踊り場だったこともあり、Cランク冒険者であればギリギリ着地できるであろう高さ。
 空中でくるっと回転し、綺麗に足から着地する。

 岡も彼女と同様に、危なげなく地面に降り立った。

「さすがはCランク冒険者ですね。ですが、別に窓から突き落として殺したかったわけではありません。白桃さんには別の死に方を提供させていただきます」

「岡くんも……やっぱり超人・・だったんだね……」

「やっぱり、ですか。椎名さんから聞いていたのですね。厄介なクラスメイトですよ、椎名さんも」

 白桃は岡の実力をBランク以上と推測した。
 冒戦の予選にて、Bランク冒険者とは二度戦った経験がある。

 自分の顔をつかんだ時の岡の強さから、Bランクに匹敵するだけのものであると判断していた。

 つまり、目の前の岡は自分よりもランクが高い。

「岡くんは一体何者なの? 狙いは何?」

「この状況からわかりませんか? 僕の狙いは白桃さん、あなたです。【アサシン】に所属する暗殺者として、あなたを殺します」

「わたしと戦うつもりなの?」

「そうですね。ですが――」

 岡の視線が学校の外に向けられる。
 それは校外で戦いたいということを示していた。

「――ボスに戦う場所を指定されておりましてね」

 岡がセリフを言い終わると同時に、白桃が動く。腕時計をタップして、剣を構える。服装はすでにスーツなので、戦う準備は万端だ。

「最新の科学技術テクノロジーは厄介です。ですが、僕もまたボスからいろいろな装置・・を提供されています」

 岡もまた、白桃と同じように剣を出し、構えた。
 【ウルフパック】で使っている腕時計のナノテクと同じ技術が使われているようだ。

 一瞬で間合いがゼロになり、剣が交わる。

 ここからどうやって校外へ移動しようというのか。

「申し訳ありませんが、ここで交戦するつもりはありません」

 そのまま剣で反撃するかのように思われた岡が、さっと身を引き、足を動かす。
 
 予想外の蹴り。

 ランクが上の相手に蹴り飛ばされ、白桃の体が宙に浮く。

 そして――。

「レディファーストは常識ですから」

 白桃の落下地点。
 ちょうど用意されていたかのように、人が5人くらい入れそうな大きさの直方体が。

 少し大きなトイレの個室。
 そう考えるとわかりやすいかもしれない。

 白桃が落下し、個室の中に入った瞬間、扉が閉められて出られなくなる。

「これは空間転移装置です。設定された他の空間転移装置のところへ、物体を瞬間移動させることができます」

「わたしをどこに連れていくつもりなの!?」

「それは着いてからのお楽しみです。安心してください。僕も後から行きます」

 こうして、白桃は清明せいめい高校の校舎裏から転移・・した。



 ***



 楓香ふうかの捜索開始から1分。
 早速手掛かりを発見した。

「強化ガラスをこんな派手に割るなんて、明らかに超人の仕業だな」

「きっと岡君だよ、これ」

 俺と行動を共にしているのは、椎名とゼロナだ。

 真悠まゆ姉さんにはまだ治癒師ヒーラーとしての仕事が残っているし、天音あまね姉さんはもう1人の襲撃者である青ひげの男を拘束している。佐藤さとうもそれに付き添っている感じだ。

 椎名は楓香に対して責任を感じているようで、真剣な顔で俺についてきた。

「これは椎名の責任じゃない。俺の責任だ」

「いや……岡君が危険ってことを知っていながら、白桃さんを放置した私が――」

「楓香だってCランクの冒険者なんだ。自分で自分の命くらい守れる」

「……」

 そして、椎名の可愛さにメロメロになりながら歩いているゼロナ。
 本来はゼロナが青ひげ男の処理をするべきだったんだろうが……楓香のピンチを伝えると飛ぶようについてきた。

「あんな可愛い女の子を誘拐するなんて……その岡という男は私が始末する。いいね?」

「誘拐されたとは言ってない。それに、岡は俺が対処する」

 全員、楓香を心配する気持ちは同じだった。
 ゼロナに至っては、岡への殺意もこぼれ出ていたわけだが。

 そして、割れた窓ガラスにたどり着く。

 ここから突き落とされたのか、自ら身を投げたのか……詳しい状況まではわからないが、とりあえず俺たちも落下地点に行ってみるしかない。

 俺とゼロナは西園寺さいおんじリバーサイドという超高層ビルから飛び降りたことがある。
 この程度の高さ、わざわざ階段を下るまでもない。

奈菜ななちゃんはぼくが運ぶよ」

 きっと椎名も1人で飛べたと思うが、安全のためにゼロナがお姫様抱っこをして飛んだ。その時のゼロナの表情は晴れやかだった。
 完全に下心が出ちゃってるんだよな、ゼロナは……。



 ***



 空間転移装置で人生初の瞬間移動をした白桃。

 彼女は今、小さな劇場・・の中にいた。
 いくつもの照明の光が目に入って眩しい。

「ここは……」

 白桃が空間転移装置から出ると、そこはステージだった。パチパチと、乾いた拍手の音が観客席から聞こえる。音に重なりはないので、1人の観客が拍手しているのだろう。

 目を擦りながら観客席に目を向ける。

「――ッ!」

 そこには、フードを深くかぶった暗い雰囲気の男が、不気味な白い瞳を光らせて白桃を見ていた。
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