ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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フロストハウル編

第137話 シリアス展開もえっちなセリフでコメディに変える淫乱ピーチ

 久しぶりに空間転移装置を見た。

 前回これを使ったのは、姉さんと大阪から東京に移動した時だ。
 あの時は2人で一緒に装置に入り、無事に東京のダンジョンに飛ばされた。今回もまたダンジョンに送られてしまうんだろうか。

 扉の前にはスクリーンのようなものがあり、そこに「使用可」と表示してあるのが確認できた。

「空間転移装置なんて聞いたことがない。本気で言っているのかい?」

「日本の方が科学は進んでるってことか」

 日本は科学王国だ。
 ダンジョンが出現した地域は特に科学が発達している。

 それは他の国でも同じなのかもしれないが、現代日本の科学技術はアメリカにも引けを取らない。

 だが、この空間転移装置はまったくもって規格外イレギュラーだ。【ウルフパック】が取り入れている科学技術は最先端のはずだが、これを超える技術を持った組織が存在していた。

 空間転移装置という発明にはイギリス出身のゼロナも驚いていた。俺よりも多くの規格外を経験してきているはずだが、この規格外は世界に誇れる規格外だったらしい(規格外規格外言いすぎだろ)。

「いや、正確には【ダークエイジ】の科学技術が進んでるってことになるな」

 溜め息をつきながら言い直す。
 その様子にゼロナは首を傾げていた。

「ねえ、この装置、安全なの?」

 椎名しいなが聞いてくる。
 まだゼロナにお姫様抱っこされたままだ。降ろしてもらうのを忘れているんだろうか。

「なんとも言えないな。少なくとも前使った時は2人乗りでも大丈夫だった」

「お姉さんと、だったっけ?」

「そうだ」

 2人には簡単に前回の経緯を説明している。
 いろいろあって姉さんと大阪から東京に瞬間移動した、というざっくりした説明ではあるが。

「それじゃあ、3人で乗っても――」

「リスクが高い。ここはまず俺が先に乗る。次にゼロナだ。俺の後でもすぐ転移できるだろう。心配する気持ちもわかるが、椎名はここで待機していてくれ」

「私だって――」

「ダンジョンの中に転移するかもしれない。前回は18階層だった」

 18階層というパワーワードに、椎名がビクッと反応する。
 椎名の実力はCランクだと聞いていた。そんな彼女にとって、ダンジョン18階層は危険すぎる。

 ここで、ようやくゼロナが椎名を解放した。
 お姫様抱っこから自由になった椎名は、真剣な表情で俺に近付く。

「足手まといになるつもりはないよ。だから……頑張って」

「わかった」

 行きたい気持ちをグッとこらえ、楓香ふうかの救出任務を俺に託す椎名。

 彼女も責任を感じていた。
 俺からしてみれば、椎名に責任は一切ない。だが、彼女は光超人ヒーローだ。楓香のことを心配に思う気持ちは本物だった。

「ゼロナは俺の後に来てくれ。それじゃあ――」

才斗さいと

 ゼロナに両手で肩をつかまれる。

 クールビューティーな顔がすぐ目の前だ。ゼロナまで俺にキスしないでくれよとか思っていたら、澄んだ紺碧の瞳を向けられ――。

「嘘をついているね」

 ただ一言。

 だが、それは間違いなく事実だった。



 ***



 フードの男は一切口を開かず、ただ不気味な瞳で白桃しらももを見ていた。

「ここはどこですか?」

 警戒しながらも、話が通じる相手かどうか確かめようとする白桃。

 男のフードの下の顔は闇に包まれていて、白く光る瞳しか見えない。
 明らかに邪悪だ。
 白桃の警戒心はピークに達していた。

 男からの返事を待ってみるも、返ってくる様子はない。
 だとすれば、自分はこのステージ上で何をすればいいのか。あの男は自分に何を期待しているのか。

「何かを……誰かを待ってるんですか? おかくんですか?」

「……」

 それから、両者とも何もしない時間が15分ほど経過した。白桃にとってはかなりの苦痛だった。相手がいきなり何か仕掛けてくるのではないかと警戒しながらも、気持ちを落ち着ける必要があったからだ。

 結局、警戒心の高まりのせいで、冷静になることはできなかった。

「……焦らしてしまってすまない」

「――ッ」

 突然、フードの男が口を開く。

 いきなりのことだったので、攻撃が飛んでくるのではないかと白桃の肩が跳ね上がった。実際はただ話しかけられただけで、攻撃は飛んでこなかったわけだが。

「ボクはヴェルウェザー……聞いたことはあるだろう?」

「ヴェルウェザー……あなたが……」

「そうだ。ボクが黒瀬くろせ才斗の姉を洗脳し、キミの友人である佐藤さとう勝海かつみ超人・・に変え、キミを何度か殺そうとした首謀者だということだ」

「本当に最低な人ですね」

 軽蔑を通り越したような目で睨む白桃。

 ヴェルウェザーはそんな白桃を面白いものでも見つめるような目で見ると、愉快そうにわらった。

「面白い……佐藤勝海ブルーオーシャンもまた、ボクにそんな目を向けてきていた……」

「気持ち悪いです。ドMなんですか?」

「やはりボクの目に狂いはなかった……今日は存分に楽しませてくれそうだ」

 すると、白桃が痴漢に遭ったかのような叫び声を響かせる。

「さ、最低ですっ! わたしは才斗くんにしか体を許したりしませんからっ。この変態っ!」

「……予想以上だったか……」

 変態はどっちなのか。
 ヴェルウェザーは決して、白桃の体をもてあそぼうなどとは考えていない。1ミリも興味などない。

 しかし、白桃の反抗的で遠慮ない態度に、ヴェルウェザーは満足していた。
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