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フロストハウル編
第138話 心を読まれると余計なことを考えちゃうというアレ
「嘘をついているね」
ゼロナは俺にそう言った。
わけがわからない、とでも言うように椎名が首を傾げる。
だが、俺にはわかっていた。
ゼロナの言ったセリフの真意が。
とはいえ、どうして俺の嘘を見破ることができたのか。自然な流れでこの状況まで持ち込んだと思っていたが……それこそ、わけがわからない。
「どうしてわかった?」
「才斗にもまだ言っていなかったね。ぼくの超能の影響だよ」
「超能?」
そういえば、ゼロナの超能がどういうものなのかは聞いていない。彼女だってSランク冒険者。超能を持っていると考えるのが普通だ。
「目を合わせていれば、ぼくは相手の考えていることが読める。心を読む能力だよ。それも、正確にね」
「反則じゃないか……」
もしかして、これまでも思考を読み取られていたってことなのか?
だとしたら、かなり恥ずかしいんだが。
「大丈夫、普段は超能を使わないのがぼくのポリシーなんだ。礼儀というものがあるだろう?」
俺の心を実際に読んだのか、ふと湧いた疑問に答えてくれるゼロナ。
こうして考えるだけで、ゼロナには伝わっているということか。
どうしよう。
変に意識してしまう。
今リアルタイムで心を読まれているのだと考えると、普段は考えることもないような、余計なことまで頭の中に浮かんでしまう。
ゼロナの匂いはリラックス効果があるだとか、ゼロナの紺碧の瞳が澄んだ青空のようで綺麗だとか、こんな考えを持っていることが楓香にバレれば浮気だと責められるんだろうなとか……。
――やめろ、考えるな!
考えようとすればするほど、余計な思考が頭を巡って――。
「才斗……普段そんなことを思ってくれていたのか……」
ほんのりと顔を紅潮させながら、照れたようにうつむくゼロナ。
やめてほしい。普段からそんなことを考えているわけじゃないんだ!
顔を赤くするゼロナが珍しくて、ついキュンとしてしまったなんてことは――。
「才斗……きみにはミズ・白桃という最高に可愛い彼女がいるから――」
「俺は何も考えてない!」
必死に叫ぶ。
ここまで声を張り上げることはめったにない。普段冷静な俺の叫びに、椎名が目を丸くして驚いている。
ここで、ゼロナがコホンと咳払い。
話を続けるつもりらしい。
「もう今は超能は使ってない。だから安心してほしい」
「……はぁ」
「それで、本題は空間転移装置のことだよ。空間転移装置は30分に一度しか使えない、違うかい?」
俺の嘘とは、空間転移装置の仕組みについてだった。
姉さんと前に使った時には30分に1回しか使えないという話だったので、2人で一緒に装置に入るしかなかった。
今回の装置が同じようなシステムであるとも限らないが、「使用可」というスクリーン表示がある以上、「使用不可」の表示もあるということ。
同じような30分ルールがあってもおかしくはない。
もし俺が先に使うのであれば、少なくとも30分、ゼロナは装置を使うことができずに足止めを食らうだろう。
「どういうこと、黒瀬君?」
椎名が少し責めるような目で俺を見た。
2人からの信頼を裏切ったみたいでばつが悪い。
「自分勝手かもしれないが、楓香の彼氏として、まずは1人で行かせてほしいんだ」
ゼロナが目を細める。
「それは危険だ。Sランクが2人いれば、大抵のことに対処できる」
「わかってる。だが、基本的に空間転移装置は1人用で作られていると思うんだ。だから2人で使うと――前回は上手くいったが――正常に機能しない可能性もある」
「……それも考えられなくはないが、やっぱり危険だ。この装置、例の闇組織が関係している可能性があるんだろう?」
ヴェルウェザー率いる闇組織【ダークエイジ】。
おそらく今回も、ヤツが関係している。
ゼロナは俺の思考から【ダークエイジ】の情報を入手したのか、闇組織のことを出して任務の危険性を再主張してきた。
「わかった。だが、30分だけだ。多分30分後にはゼロナも転移できる。30分たっても俺と楓香がこの学校に戻ってこなかったら、助けにきてくれ」
「……1人で行くことは譲らないつもりだね」
ゼロナが呆れたような溜め息をつく。
諦めたように軽い笑みをこぼすと、俺の肩にトンと右手を置いた。
「仲間を信頼することもまた大切だ。ぼくがその装置に入らないで済むことを願っているよ」
最後には俺を信頼し、任せてくれるゼロナ。
感謝の言葉と共に、覚悟を持った表情で頷く。
そのやり取りを椎名は黙って見守ってくれていた。
***
清明高校から数十キロ離れた小さな劇場で。
劇場の規模にそぐわない、熾烈な戦いが繰り広げられていた。
小規模なステージの上で、2人の超人が剣をぶつけ合っている。
Bランクの岡虎之介とCランクの白桃楓香の真剣勝負。
ヴェルウェザーと白桃の会話の後、ステージに登場したのは殺気を漂わせた岡だった。
彼は空間転移装置を使わず、この劇場まで走ってきたのだ。
Bランクの全速力でも20分以上かかった。これも全て、ヴェルウェザーの指示だ。
「完璧なタイミングだ……」
岡VS白桃の戦闘を観戦しながら、ヴェルウェザーはフードの下で不気味に微笑んだ。
彼は待っている。
もう1人の観客、黒瀬才斗が現れるのを。
ゼロナは俺にそう言った。
わけがわからない、とでも言うように椎名が首を傾げる。
だが、俺にはわかっていた。
ゼロナの言ったセリフの真意が。
とはいえ、どうして俺の嘘を見破ることができたのか。自然な流れでこの状況まで持ち込んだと思っていたが……それこそ、わけがわからない。
「どうしてわかった?」
「才斗にもまだ言っていなかったね。ぼくの超能の影響だよ」
「超能?」
そういえば、ゼロナの超能がどういうものなのかは聞いていない。彼女だってSランク冒険者。超能を持っていると考えるのが普通だ。
「目を合わせていれば、ぼくは相手の考えていることが読める。心を読む能力だよ。それも、正確にね」
「反則じゃないか……」
もしかして、これまでも思考を読み取られていたってことなのか?
だとしたら、かなり恥ずかしいんだが。
「大丈夫、普段は超能を使わないのがぼくのポリシーなんだ。礼儀というものがあるだろう?」
俺の心を実際に読んだのか、ふと湧いた疑問に答えてくれるゼロナ。
こうして考えるだけで、ゼロナには伝わっているということか。
どうしよう。
変に意識してしまう。
今リアルタイムで心を読まれているのだと考えると、普段は考えることもないような、余計なことまで頭の中に浮かんでしまう。
ゼロナの匂いはリラックス効果があるだとか、ゼロナの紺碧の瞳が澄んだ青空のようで綺麗だとか、こんな考えを持っていることが楓香にバレれば浮気だと責められるんだろうなとか……。
――やめろ、考えるな!
考えようとすればするほど、余計な思考が頭を巡って――。
「才斗……普段そんなことを思ってくれていたのか……」
ほんのりと顔を紅潮させながら、照れたようにうつむくゼロナ。
やめてほしい。普段からそんなことを考えているわけじゃないんだ!
顔を赤くするゼロナが珍しくて、ついキュンとしてしまったなんてことは――。
「才斗……きみにはミズ・白桃という最高に可愛い彼女がいるから――」
「俺は何も考えてない!」
必死に叫ぶ。
ここまで声を張り上げることはめったにない。普段冷静な俺の叫びに、椎名が目を丸くして驚いている。
ここで、ゼロナがコホンと咳払い。
話を続けるつもりらしい。
「もう今は超能は使ってない。だから安心してほしい」
「……はぁ」
「それで、本題は空間転移装置のことだよ。空間転移装置は30分に一度しか使えない、違うかい?」
俺の嘘とは、空間転移装置の仕組みについてだった。
姉さんと前に使った時には30分に1回しか使えないという話だったので、2人で一緒に装置に入るしかなかった。
今回の装置が同じようなシステムであるとも限らないが、「使用可」というスクリーン表示がある以上、「使用不可」の表示もあるということ。
同じような30分ルールがあってもおかしくはない。
もし俺が先に使うのであれば、少なくとも30分、ゼロナは装置を使うことができずに足止めを食らうだろう。
「どういうこと、黒瀬君?」
椎名が少し責めるような目で俺を見た。
2人からの信頼を裏切ったみたいでばつが悪い。
「自分勝手かもしれないが、楓香の彼氏として、まずは1人で行かせてほしいんだ」
ゼロナが目を細める。
「それは危険だ。Sランクが2人いれば、大抵のことに対処できる」
「わかってる。だが、基本的に空間転移装置は1人用で作られていると思うんだ。だから2人で使うと――前回は上手くいったが――正常に機能しない可能性もある」
「……それも考えられなくはないが、やっぱり危険だ。この装置、例の闇組織が関係している可能性があるんだろう?」
ヴェルウェザー率いる闇組織【ダークエイジ】。
おそらく今回も、ヤツが関係している。
ゼロナは俺の思考から【ダークエイジ】の情報を入手したのか、闇組織のことを出して任務の危険性を再主張してきた。
「わかった。だが、30分だけだ。多分30分後にはゼロナも転移できる。30分たっても俺と楓香がこの学校に戻ってこなかったら、助けにきてくれ」
「……1人で行くことは譲らないつもりだね」
ゼロナが呆れたような溜め息をつく。
諦めたように軽い笑みをこぼすと、俺の肩にトンと右手を置いた。
「仲間を信頼することもまた大切だ。ぼくがその装置に入らないで済むことを願っているよ」
最後には俺を信頼し、任せてくれるゼロナ。
感謝の言葉と共に、覚悟を持った表情で頷く。
そのやり取りを椎名は黙って見守ってくれていた。
***
清明高校から数十キロ離れた小さな劇場で。
劇場の規模にそぐわない、熾烈な戦いが繰り広げられていた。
小規模なステージの上で、2人の超人が剣をぶつけ合っている。
Bランクの岡虎之介とCランクの白桃楓香の真剣勝負。
ヴェルウェザーと白桃の会話の後、ステージに登場したのは殺気を漂わせた岡だった。
彼は空間転移装置を使わず、この劇場まで走ってきたのだ。
Bランクの全速力でも20分以上かかった。これも全て、ヴェルウェザーの指示だ。
「完璧なタイミングだ……」
岡VS白桃の戦闘を観戦しながら、ヴェルウェザーはフードの下で不気味に微笑んだ。
彼は待っている。
もう1人の観客、黒瀬才斗が現れるのを。
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