ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

文字の大きさ
3 / 178
美少女転校生と同居編

第3話 放課後はダンジョンに行く仕事

 ――放課後デート。

 白桃しらももがそう呼んだのは、男女の付き合いではなく、ダンジョンの付き合いだ。

 ダンジョンが都市にあるだけで、観光が潤う。
 資源にも恵まれ、ダンジョンでしか手に入らないような珍しい食材も注目されている。

 それがダンジョン。

 東京の中心だ。

 俺が通う私立清明せいめい高校から徒歩15分。
 多くの人で賑わう喧騒の中心に、ダンジョンは堂々と存在していた。

「それで、わざわざ腕を組む必要はあったのか?」

「はい! 一応形式上は放課後デートですから」

「これは仕事だぞ。遊びじゃないんだ」

「そんな説教みたいなことはやめてくださいって。ちゃんとわかってますから、才斗さいとせーんぱい」

 呆れて溜め息をこぼすことしかできない。

 俺のランクがAであることに対して、白桃のランクはC。
 低くはない。が、高いわけでもない。冒険者の中では中堅といったところか。

「クラスメイトに誤解されてないといいが……」

「別に気にすることないですって。わたしと先輩は特別な関係なんですから」

「ずっと思ってたが、先輩っていうのはやめてくれ」

「なんでです?」

「同い年だし、なんか嫌だ」

 俺も子供みたいなことを言うようになったな。

 だが、こういうのは理屈じゃない。
 嫌だから嫌なんだ。

「それなら、才斗ボス、ですか? 一応直属の上司ですし」

「普通でいいんだ、普通で。才斗とか、才斗君とかで」

「くん付けを推奨するんですね? 可愛いとこあるんですね、才斗『くん』」

 あとで上に文句を言っておこう。
 こいつを俺の部下にしたのは、自分たちじゃ扱いきれなかったからだろ、と。それで俺に押し付けてきたんだろ、と。

 白桃はにこっと笑うと、俺をビルの裏に無理やり引っ張った。

「ここなら誰も見てませんよね?」

「ビルの監視カメラがある。誰も見てない場所なんて、トイレの個室くらいしかない」

「でも、トイレで変身はちょっとダサくないですか?」

「それはそうだな」

 俺は深く頷くと、白桃とお揃いの腕時計を2回、ぽんぽんと指でタップした。

 一瞬で高校の制服が黒いスーツに変わる。
 これは魔法ではなくて科学テクノロジーだ。

 白桃も同じ動作で制服からスーツ姿に変身する。

 それと同時に、髪の色がピンクに、瞳の色が真紅に変わった。

「どうです? 惚れました?」

「目の色は同じなんだな」

「そうなんですよ! 運命ですね」

「たまたまだろ」

 冒険者は選ばれし存在だ。

 なろうと思って簡単になれるものじゃない。

 まず、冒険者になるには【選別の泉】という、ダンジョンと同時に地上に発生した泉に入らなくてはならない。その泉で10分間、意識を失ったり死んだりすることなく苦痛に耐えることができれば、晴れて冒険者となる。

 泉の試練を終えた際、冒険者になった者は髪の色と瞳の色が変わることがある。
 といっても、ほとんどの人は変わるわけだが。

 俺は【選別の泉】を乗り越え、髪の色は黒のままだが、瞳の色だけ真紅になった。どこまでも真っ赤な瞳だ。

「それにしても、この腕時計凄いですよね。おかげで学校にも普通に通えてますし」

「初めて使ったみたいな言い方だな」

「それなりに昇級しないともらえないので。才斗くんの部下になることが決まってからもらったんです」

「だとしたら、今までどうやって――」

「髪は普通に黒に染めて、目はカラコンです。めんどくさかったな~」

 自分で言うのは自惚れかもしれないが、俺は組織のエリートだったので最初からこの万能腕時計を持っていた。

 だから白桃の苦悩をわかってあげられない。
 この件に関しては同情する。

「大変だったな」

「むぅー。それ、全然嬉しくないです。才斗くんって、コミュニケーション下手ですよね」

「そうなのか?」

「自覚ないんですか?」

「さあ」

 コミュニケーションが下手だと言われたことはなかった。

 思われてたのに言われなかっただけかもしれないから、真相はよくわからない。
 とはいえ、今では・・・親のいない俺が、コミュニケーションの達人であるはずがない。

 10歳の頃から、ダンジョン。

 毎日ダンジョン。

 ――戦い、倒れ、戦い、敵を倒す。

 その繰り返しだった。

「でもわたしは、そういう不器用なところがあるのもギャップがあって可愛いって思っちゃいました」

「可愛い?」

「はい。推しはどんなことをしても尊いって言うじゃないですか」

 推しについてはよくわからないが、彼女の熱意は伝わった。

 かなりウザい部下だが、一応俺のことは尊敬してくれているし、好きでいてくれている。
 嫌われるよりはマシなのかもしれない。



 ***



 監視カメラに映っていたかもしれないものの、人目を避けてスーツに着替えた俺たち。

 ついにダンジョンの入り口へと歩みを進める。

 ダンジョンは政府が管理するドーム型の建物、ダンジョン・ドームの中にあった。
 ドームの入り口で冒険者カードをスキャンすると、自動ドアが開く。

 スーツ姿なので、出勤するサラリーマンと言っても違和感はない。それに実際、俺たちは仕事に行くわけだしな。

「Aランクにもなれば、カードが銀色なんですね。かっこいいです」

「せっかくなら銀より金がいい」

「欲張りですね~」

 軽い会話を交わしながら、いよいよダンジョンの前へ。

 圧倒的な存在感を放つ、重厚感ある扉。

 これこそ、異界への入り口――ダンジョンへの門だ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——