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上司としての責務編
第17話 個性派揃いで騒がしい幹部の会議
「真悠姉さん……」
「今日は才斗ちゃんに会うためだけに来たんでちゅよ~」
俺は今、生命の危機に瀕している。
――呼吸ができない。
口を塞いでいる大きな双丘。
その持ち主である、真悠姉さんこと本波真悠は【ウルフパック】の幹部にして、日本に15人しかいないSランク冒険者の1人である。
エレベーターから出た途端、突然現れた谷が俺を吸い込んだ。
「息ができないので、離してもらってもいいですか?」
「もう、ツンデレなんだから~」
時として楓香以上のしつこさを備えるこの女性は、今年で29歳になるアラサー。
俺が冒険者になりたての時に知り合い、それ以降は弟のように可愛がってくれていた。
最初は優しくて強いお姉さんだと思って慕っていたが、俺も年を重ねるに連れてだんだん鬱陶しく感じるようになってしまった。
「気にすることもないさ。才斗は今、絶賛反抗期中なんだよ」
「俺は別に――」
「そうだよね~。思春期真っ只中だもんね~」
剣騎が余計なことを……。
会議の間には、真悠姉さんの他に、一ノ瀬と青木真一の2人が椅子に腰掛けていた。
俺たちの予想は当たりだったな。
「やっぱり舞姫君は来てないね」
「そうらしいな」
「まあ、少し遅刻してきたところで、西園寺さんが怒ることもないだろうけどね」
剣騎の楽観的な思考に、俺も頷く。
「いやいや、何言うてんの? あの西園寺さんやで? 遅刻なんてしたら拷問にかけられて殺されるに決まってるわ!」
俺たちの会話に割り込んだのは真一だ。
彼は西園寺や一ノ瀬に常に怯えている。
特に何もされたことはないようだが、2人の体から溢れ出る強者のオーラに怖気付いているんだろう。
「真一君は何も変わってないね。そんなに恐れることもないのに。そうだろう、一ノ瀬君?」
「怯えるなら勝手にしろ。俺は弱い奴には興味がない」
「だってさ。でも、真一君は強いし、興味は持たれてるかもね」
「それなら弱い方がいいてぇ!」
さっきから真一と真悠姉さんのせいで会議の間が騒がしい。
あとは社長である西園寺と雷電舞姫を待つだけ。西園寺はビルの中にはいるだろうから、実質は雷電だけになるな。
***
9月3日、火曜日の午後9時。
【ウルフパック】本社である西園寺リバーサイドの会議の間にて、幹部でのミーティングが行われた。
前回の会議は3ヶ月前。
連絡が来たので行ってみたら、雷電と剣騎がいなかったので全員集まっていたわけではない。
「ごめーん、舞ちゃんギリギリセーフ」
時間ピッタリに現れたのは雷電舞姫だ。
スマホ片手に、自撮り動画を撮りながらの登場。
反省している素振りは一切ない。
さすがに格好はスーツだったので安心した。
「あれ? 遅れちった感じ?」
「4秒の遅刻だ。組織の幹部としての自覚くらい持て」
「一ノ瀬っち厳し~。もっと舞ちゃんに優しくしてよ~」
当然、一ノ瀬はそれ以降無視だ。
雷電はほんの少し拗ねた様子を見せると、スマホをポケットにしまって席に着いた。
社長以外の全員が着席し、緊張感が高まる。
縦長のテーブルに3組の向かい合ったSランク冒険者が集まっているこの光景は、圧巻だ。Aランク冒険者の自分が部外者のように思えてくる。
社長の西園寺の指示で、俺は1年ほど前からAランク冒険者としては異例の幹部に就任した。
他にもAランク冒険者はたくさんいるのに、なぜか俺だけを幹部の座に招待したのだ。それには何か理由があると思っているが、ブラックの存在が世間で注目されていることが大きいのかもしれないと前々から睨んでいた。
「しゃ、社長が来るで……」
真一が弱々しい声でボソッと呟くが、耳のいい俺たちには丸聞こえだ。
――西園寺が会議の間に現れた。
まず感じるのは、レベルの違う膨大な量のオーラ。
心臓が圧迫されるほど、想像を絶するような迫力と威厳を放っている。
自分の席に座るまでの1歩1歩。
その踏み込みによって魔力が振動し、上級冒険者たちを刺激していた。
ツーブロックに整えた黒髪に、黄金色に輝く瞳。
背丈は俺よりやや低いくらいだが、真っ直ぐに伸びた背筋が洗練された大人としての格の違いを表現している。
「こうして幹部全員が揃うことは珍しい」
テーブルの端の、社長席に座った西園寺。
西園寺が低めの威圧感のある声で、穏やかに言った。
「話し合いを始めよう」
***
「今日こうして、私が幹部全員を集めたのは、次のダンジョン遠征の日程を決めるためだ」
――ダンジョン遠征。
冒険者の集団にて数日かけてダンジョンの攻略を進めていく、大掛かりな出張。
普段の日帰りのダンジョン探索よりも深い階層に潜るということもあって、危険度は高い。
その代わり、組織は優秀な人材を派遣し、確実に全員が帰還できるようにすることを目指す。
「しかし今日、ダンジョン遠征よりも遥かに急を要する話題が飛び込んできた」
西園寺が俺を見る。
それに合わせ、他の5人の視線も俺に降り注いだ。
「闇派閥の件ですか?」
「才く……黒瀬、当事者として詳しい説明を頼みたい」
「わかりました」
当然襲ってきたヴァイオレットという女冒険者の存在。
組織にとっても、彼女の存在は無視できない。
「ですがその前に、お願いをしてもいいですか?」
「……お願い?」
予想もしない俺のお願い発言に、首を傾げる西園寺。
西園寺の存在感に圧倒されている真一は、そんな生意気な態度はやめろ、とでもいうように首をぶんぶん横に振っている。
だが、こういったお願いというのは先に言っておくことで聞き入れられやすくなることがある。
「白桃楓香を、俺の直属の部下から外してください」
堂々と構えている西園寺に向かって、俺はそう進言した。
「今日は才斗ちゃんに会うためだけに来たんでちゅよ~」
俺は今、生命の危機に瀕している。
――呼吸ができない。
口を塞いでいる大きな双丘。
その持ち主である、真悠姉さんこと本波真悠は【ウルフパック】の幹部にして、日本に15人しかいないSランク冒険者の1人である。
エレベーターから出た途端、突然現れた谷が俺を吸い込んだ。
「息ができないので、離してもらってもいいですか?」
「もう、ツンデレなんだから~」
時として楓香以上のしつこさを備えるこの女性は、今年で29歳になるアラサー。
俺が冒険者になりたての時に知り合い、それ以降は弟のように可愛がってくれていた。
最初は優しくて強いお姉さんだと思って慕っていたが、俺も年を重ねるに連れてだんだん鬱陶しく感じるようになってしまった。
「気にすることもないさ。才斗は今、絶賛反抗期中なんだよ」
「俺は別に――」
「そうだよね~。思春期真っ只中だもんね~」
剣騎が余計なことを……。
会議の間には、真悠姉さんの他に、一ノ瀬と青木真一の2人が椅子に腰掛けていた。
俺たちの予想は当たりだったな。
「やっぱり舞姫君は来てないね」
「そうらしいな」
「まあ、少し遅刻してきたところで、西園寺さんが怒ることもないだろうけどね」
剣騎の楽観的な思考に、俺も頷く。
「いやいや、何言うてんの? あの西園寺さんやで? 遅刻なんてしたら拷問にかけられて殺されるに決まってるわ!」
俺たちの会話に割り込んだのは真一だ。
彼は西園寺や一ノ瀬に常に怯えている。
特に何もされたことはないようだが、2人の体から溢れ出る強者のオーラに怖気付いているんだろう。
「真一君は何も変わってないね。そんなに恐れることもないのに。そうだろう、一ノ瀬君?」
「怯えるなら勝手にしろ。俺は弱い奴には興味がない」
「だってさ。でも、真一君は強いし、興味は持たれてるかもね」
「それなら弱い方がいいてぇ!」
さっきから真一と真悠姉さんのせいで会議の間が騒がしい。
あとは社長である西園寺と雷電舞姫を待つだけ。西園寺はビルの中にはいるだろうから、実質は雷電だけになるな。
***
9月3日、火曜日の午後9時。
【ウルフパック】本社である西園寺リバーサイドの会議の間にて、幹部でのミーティングが行われた。
前回の会議は3ヶ月前。
連絡が来たので行ってみたら、雷電と剣騎がいなかったので全員集まっていたわけではない。
「ごめーん、舞ちゃんギリギリセーフ」
時間ピッタリに現れたのは雷電舞姫だ。
スマホ片手に、自撮り動画を撮りながらの登場。
反省している素振りは一切ない。
さすがに格好はスーツだったので安心した。
「あれ? 遅れちった感じ?」
「4秒の遅刻だ。組織の幹部としての自覚くらい持て」
「一ノ瀬っち厳し~。もっと舞ちゃんに優しくしてよ~」
当然、一ノ瀬はそれ以降無視だ。
雷電はほんの少し拗ねた様子を見せると、スマホをポケットにしまって席に着いた。
社長以外の全員が着席し、緊張感が高まる。
縦長のテーブルに3組の向かい合ったSランク冒険者が集まっているこの光景は、圧巻だ。Aランク冒険者の自分が部外者のように思えてくる。
社長の西園寺の指示で、俺は1年ほど前からAランク冒険者としては異例の幹部に就任した。
他にもAランク冒険者はたくさんいるのに、なぜか俺だけを幹部の座に招待したのだ。それには何か理由があると思っているが、ブラックの存在が世間で注目されていることが大きいのかもしれないと前々から睨んでいた。
「しゃ、社長が来るで……」
真一が弱々しい声でボソッと呟くが、耳のいい俺たちには丸聞こえだ。
――西園寺が会議の間に現れた。
まず感じるのは、レベルの違う膨大な量のオーラ。
心臓が圧迫されるほど、想像を絶するような迫力と威厳を放っている。
自分の席に座るまでの1歩1歩。
その踏み込みによって魔力が振動し、上級冒険者たちを刺激していた。
ツーブロックに整えた黒髪に、黄金色に輝く瞳。
背丈は俺よりやや低いくらいだが、真っ直ぐに伸びた背筋が洗練された大人としての格の違いを表現している。
「こうして幹部全員が揃うことは珍しい」
テーブルの端の、社長席に座った西園寺。
西園寺が低めの威圧感のある声で、穏やかに言った。
「話し合いを始めよう」
***
「今日こうして、私が幹部全員を集めたのは、次のダンジョン遠征の日程を決めるためだ」
――ダンジョン遠征。
冒険者の集団にて数日かけてダンジョンの攻略を進めていく、大掛かりな出張。
普段の日帰りのダンジョン探索よりも深い階層に潜るということもあって、危険度は高い。
その代わり、組織は優秀な人材を派遣し、確実に全員が帰還できるようにすることを目指す。
「しかし今日、ダンジョン遠征よりも遥かに急を要する話題が飛び込んできた」
西園寺が俺を見る。
それに合わせ、他の5人の視線も俺に降り注いだ。
「闇派閥の件ですか?」
「才く……黒瀬、当事者として詳しい説明を頼みたい」
「わかりました」
当然襲ってきたヴァイオレットという女冒険者の存在。
組織にとっても、彼女の存在は無視できない。
「ですがその前に、お願いをしてもいいですか?」
「……お願い?」
予想もしない俺のお願い発言に、首を傾げる西園寺。
西園寺の存在感に圧倒されている真一は、そんな生意気な態度はやめろ、とでもいうように首をぶんぶん横に振っている。
だが、こういったお願いというのは先に言っておくことで聞き入れられやすくなることがある。
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