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上司としての責務編
第18話 社長からもっと友達を作るように言われる始末
「ちょうどいい。その件もまた、今日の会議で言及するつもりだった」
俺は社長である西園寺に、昨日直属の部下となった楓香を俺の部下から外すように頼んでいた。
楓香のことが嫌いというわけじゃない。
彼女の冒険者としての実力が劣っているわけでもない。
むしろ、その逆だった。
彼女はCランク冒険者の中でも頭1つ抜けている。それだけ戦い方が上手く、強い。
西園寺は豪華な椅子に深く座り直すと、俺にしっかりと視線を向けて話し出す。
「白桃楓香に可能性を見出し、ここまで鍛えたのは剣騎の功績だ。だが、白桃を黒瀬の部下として配属することを提案したのは剣騎ではない」
西園寺は基本、冒険者の名前は冒険者名で呼ぶ。
楓香の場合はオーロラ、剣騎の場合はソードナイト、と。
ちなみにソードナイトという剣騎の活動名は自分の名前の漢字をただ英語にしただけで、深い意味はないらしい。
「私が彼女を君の部下にした。君には、あの少女の力が必要だと思ったからだ」
「俺は力不足だと?」
「そういうつもりはない。Aランク昇格日本最年少記録保持者に、実力不足を指摘できるはずがない」
相変わらず、真一は俺の無礼な物言いに緊張を隠せていない。
俺が社長の西園寺に対して遠慮せず発言するのは、今に始まったことでもないだろうに。
「気になったことはないか? どうしてAランクの君が、Sランクしか入れない幹部の座に就くことができたのか」
「それは……」
俺は10歳の頃からかなり優遇されている。
冒険者としての将来に投資してくれていたんだろう。
実際、こうして高ランク冒険者になることができたわけだ。
だが、以前までのルールを曲げてまで俺を幹部に入れる必要はなかったんじゃないかと思う。
「私は冒険者としての黒瀬才斗に期待している。まだAランクに昇格して1年程度だろう? さすがにあと数年でとは言わないが、君の実力なら5年ほどでSランクに到達すると見た。なら、早いうちから幹部でいてくれた方がこちらとしても助かる」
「Sランクは相当高い壁だと聞きますが」
「確かに今までのように易々と上がるものでもない。だが、いずれ君は成し遂げる」
引いてしまうほどの信頼。
西園寺はどうして俺をここまで贔屓するのか。
力がある者として、俺の実力を高く買っている、ということなのか。それとも、また別の理由があるのか。
「そしてもう1つ、白桃を部下にした理由がある。黒瀬には冒険者パーティを組んでもらいたい」
***
冒険者パーティ。
ソロを好む俺にとって、この提案は困ったものだ。
「それはできません。俺は自分の目的を達成するために冒険者になった。そんなことにパーティの仲間を巻き込むつもりはありません」
俺がはっきりと拒否すると、西園寺がうつむいた。
責めるつもりはないらしい。
どう説得しようかと考えているようにも見える。
「才斗ちゃん、お姉さんがパーティ組んであげまちゅよ~。毎日チューしてあげるからね~」
「貴様は黙っていろ」
目を輝かせて言ってきた真悠姉さんに、一ノ瀬が冷たい視線を投げた。
真悠姉さんは俺とパーティを組みたくて仕方がないらしい。
今度は本気で西園寺に頼み始めた。
「それは得策ではない。東京以外にもSランク冒険者を置いておくことも重要だ。それに、我々でのパーティは遠征時に組むことになる。普段から高ランク冒険者ばかりが集まって動くと、組織に穴ができてしまう」
「でも~」
「すまないが、才――黒瀬には白桃も含めて4名ほど、新しいパーティ仲間を作ってもらう。これは決定事項だ。東京に住んでいる中堅以上の冒険者が好ましい」
言い返すことはできない。
西園寺がこうやって決定事項を口にする時、逆らうことはできない暗黙の了解がある。
俺のためを思って言ってくれていることはわかっている。とはいえ、やっぱり冒険者パーティを組むのはハードルが高い。
「才斗、僕も西園寺さんの言うことに賛成だよ。それに、白桃君には何かある」
「何か……?」
剣騎も念を押してきた。
もう断ることはできないらしい。
そして、楓香に関して気になることを言い始める。
「前にも言ったよね。白桃君も君と同じく異端児だって。彼女も彼女で、抱えているものがある、ということさ」
含みのある言い方をした剣騎。
だが、これ以上楓香について言及することはなかった。
***
闇派閥に関する報告や、遠征の話し合いを終え、解散の時間となった。
ヴァイオレットや彼女が所属しているであろう闇派閥は経過観察、遠征は2ヶ月後の11月13日に行うことになった。
「白桃君の負傷と回復については、彼女の母親にも連絡しているよ。明日は学校を休むように言ってあるから、保護者の方から学校に連絡を入れてくれるはずだ」
「わかった」
エレベーターに乗って1階に降りようとする俺に、剣騎が伝えてくる。
明日は楓香が学校を休むのか。
今後も彼女と関係を続けることになった以上、俺にのしかかる責任は大きい。
「才斗ちゃん、この後一緒に夜のデートしまちゅよ~」
西園寺リバーサイドを出てからも、しばらく真悠姉さんに付き合わされたこともついでに言っておこう。
***
西園寺リバーサイド70階。
会議を終えた西園寺と山口は、2人だけ最上階に移動し、新たな話し合いを始めようとしていた。
「うわー、疲れたー」
「まあまあ、もう会議は終わったから」
ソファに全身を預け、ぐでーんとだらしない姿を見せたのはなんと西園寺。
あの威厳はどこへ行ったのやら。
山口はそんな社長を苦笑いしながら眺めている。
「オレ、才君に嫌われてないかなー?」
会議の時の西園寺からは想像できない、情けない声が社長室に響いた。
俺は社長である西園寺に、昨日直属の部下となった楓香を俺の部下から外すように頼んでいた。
楓香のことが嫌いというわけじゃない。
彼女の冒険者としての実力が劣っているわけでもない。
むしろ、その逆だった。
彼女はCランク冒険者の中でも頭1つ抜けている。それだけ戦い方が上手く、強い。
西園寺は豪華な椅子に深く座り直すと、俺にしっかりと視線を向けて話し出す。
「白桃楓香に可能性を見出し、ここまで鍛えたのは剣騎の功績だ。だが、白桃を黒瀬の部下として配属することを提案したのは剣騎ではない」
西園寺は基本、冒険者の名前は冒険者名で呼ぶ。
楓香の場合はオーロラ、剣騎の場合はソードナイト、と。
ちなみにソードナイトという剣騎の活動名は自分の名前の漢字をただ英語にしただけで、深い意味はないらしい。
「私が彼女を君の部下にした。君には、あの少女の力が必要だと思ったからだ」
「俺は力不足だと?」
「そういうつもりはない。Aランク昇格日本最年少記録保持者に、実力不足を指摘できるはずがない」
相変わらず、真一は俺の無礼な物言いに緊張を隠せていない。
俺が社長の西園寺に対して遠慮せず発言するのは、今に始まったことでもないだろうに。
「気になったことはないか? どうしてAランクの君が、Sランクしか入れない幹部の座に就くことができたのか」
「それは……」
俺は10歳の頃からかなり優遇されている。
冒険者としての将来に投資してくれていたんだろう。
実際、こうして高ランク冒険者になることができたわけだ。
だが、以前までのルールを曲げてまで俺を幹部に入れる必要はなかったんじゃないかと思う。
「私は冒険者としての黒瀬才斗に期待している。まだAランクに昇格して1年程度だろう? さすがにあと数年でとは言わないが、君の実力なら5年ほどでSランクに到達すると見た。なら、早いうちから幹部でいてくれた方がこちらとしても助かる」
「Sランクは相当高い壁だと聞きますが」
「確かに今までのように易々と上がるものでもない。だが、いずれ君は成し遂げる」
引いてしまうほどの信頼。
西園寺はどうして俺をここまで贔屓するのか。
力がある者として、俺の実力を高く買っている、ということなのか。それとも、また別の理由があるのか。
「そしてもう1つ、白桃を部下にした理由がある。黒瀬には冒険者パーティを組んでもらいたい」
***
冒険者パーティ。
ソロを好む俺にとって、この提案は困ったものだ。
「それはできません。俺は自分の目的を達成するために冒険者になった。そんなことにパーティの仲間を巻き込むつもりはありません」
俺がはっきりと拒否すると、西園寺がうつむいた。
責めるつもりはないらしい。
どう説得しようかと考えているようにも見える。
「才斗ちゃん、お姉さんがパーティ組んであげまちゅよ~。毎日チューしてあげるからね~」
「貴様は黙っていろ」
目を輝かせて言ってきた真悠姉さんに、一ノ瀬が冷たい視線を投げた。
真悠姉さんは俺とパーティを組みたくて仕方がないらしい。
今度は本気で西園寺に頼み始めた。
「それは得策ではない。東京以外にもSランク冒険者を置いておくことも重要だ。それに、我々でのパーティは遠征時に組むことになる。普段から高ランク冒険者ばかりが集まって動くと、組織に穴ができてしまう」
「でも~」
「すまないが、才――黒瀬には白桃も含めて4名ほど、新しいパーティ仲間を作ってもらう。これは決定事項だ。東京に住んでいる中堅以上の冒険者が好ましい」
言い返すことはできない。
西園寺がこうやって決定事項を口にする時、逆らうことはできない暗黙の了解がある。
俺のためを思って言ってくれていることはわかっている。とはいえ、やっぱり冒険者パーティを組むのはハードルが高い。
「才斗、僕も西園寺さんの言うことに賛成だよ。それに、白桃君には何かある」
「何か……?」
剣騎も念を押してきた。
もう断ることはできないらしい。
そして、楓香に関して気になることを言い始める。
「前にも言ったよね。白桃君も君と同じく異端児だって。彼女も彼女で、抱えているものがある、ということさ」
含みのある言い方をした剣騎。
だが、これ以上楓香について言及することはなかった。
***
闇派閥に関する報告や、遠征の話し合いを終え、解散の時間となった。
ヴァイオレットや彼女が所属しているであろう闇派閥は経過観察、遠征は2ヶ月後の11月13日に行うことになった。
「白桃君の負傷と回復については、彼女の母親にも連絡しているよ。明日は学校を休むように言ってあるから、保護者の方から学校に連絡を入れてくれるはずだ」
「わかった」
エレベーターに乗って1階に降りようとする俺に、剣騎が伝えてくる。
明日は楓香が学校を休むのか。
今後も彼女と関係を続けることになった以上、俺にのしかかる責任は大きい。
「才斗ちゃん、この後一緒に夜のデートしまちゅよ~」
西園寺リバーサイドを出てからも、しばらく真悠姉さんに付き合わされたこともついでに言っておこう。
***
西園寺リバーサイド70階。
会議を終えた西園寺と山口は、2人だけ最上階に移動し、新たな話し合いを始めようとしていた。
「うわー、疲れたー」
「まあまあ、もう会議は終わったから」
ソファに全身を預け、ぐでーんとだらしない姿を見せたのはなんと西園寺。
あの威厳はどこへ行ったのやら。
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