ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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上司としての責務編

第20話 正体がクラスメイトにバレてしまうというアレ

 ――バレた。

 ついに佐藤さとうに自分が冒険者であるということが知られてしまった。

 冷静に対処するのが最適だろうが、尾行を振り切って絶対にバレていないと思っていたためか、俺は思いのほか動揺していた。

「……」

「何も言わないってことは、合ってるってこと?」

 楓香ふうかを抱えてダンジョン・ドームを出たのは昨日。

 つまり、あの尾行の後も、佐藤はドームの前で張り込んでいたということ。
 すっかり周囲に気を配る余裕がなかったからか、見逃していた。

 ここはどう対応するべきか。

 変に否定するのも余計に怪しまれるだけだしな。
 だったら本当のことを言うしかない。

「佐藤の言う通り、俺は冒険者だ」

「やっぱり。ずっと前からそうじゃないかって思ってたのよね」

「誰かに言うつもりか?」

「ううん、それはない。あたしはただ知りたかっただけだから」

 佐藤は大袈裟に首を横に振ると、メニューに視線を落とした。

 この会話の流れでコースを選ぶつもりだ。
 しかも、俺の奢りで。

 気まずい沈黙が流れると、それを壊すように給仕ウェイターが部屋に入ってくる。

「スペシャルコースで」

「あたしもそれを」

 スペシャルコースは両親が必ず注文していたコースだ。季節によって大きくテーマが異なり、新鮮な食材を使ったフルコースが楽しめる。

 佐藤は俺に合わせたのか、そもそもスペシャルコースに決めていたのか。

 何種類かあるコースの中でも、1番高いコースだぞ、それ。

 全部出すと言っている手前、ここでケチることはできない。

 給仕ウェイターが部屋から出ていくと、佐藤が再び話を続けた。

「ていうか、黒瀬くろせだけじゃなくて、白桃しらももさんも冒険者なのよね?」

「ダンジョン・ドームで見たんだろ? だったらそうじゃないのか」

「そんな言い方じゃなくて、ちゃんと認めて」

 追い詰めるようなことを言う。

 俺は溜め息をついた。

「楓香も冒険者だ。これで満足か?」

「黒瀬って……結構凄い冒険者だったりするわけ?」

凄い・・冒険者とは?」

「ほら、なんかその……ランクが高い冒険者ってこと。ソードナイトみたいな」

 ソードナイトこと、山口剣騎けんきのことは知っているらしい。

 剣騎や西園寺さいおんじといったエリートのSランク冒険者たちは、テレビでも取り上げられたり、グッズ化されたりしているから有名だ。
 週に1回更新される【冒険者ランキング】にも冒険者名が毎週載ってるからな。

 ちなみに、俺の冒険者としての名であるブラックは、今週の【冒険者ランキング】で9位に名を連ねていた。
 もちろん、その正体が俺であるということを一般人は知らない。

「俺はAランク。冒険者名はブラックだ」

「ブラック!? 嘘でしょ……」

 ちょうど飲んでいた水を吹き出した佐藤。

 その水が俺の顔面にかかっていることに気付いてない。

「なんでそんなこと教えてくれたわけ? あたしが言うのもアレだけど、バレるのが嫌だから隠してたんでしょ?」

「そうだな。俺は人気者になるために冒険者をしてるわけじゃない」

「黒瀬がブラックなのはびっくりだけど、疑ってはないから」

「俺を信用してるってことか?」

「まあ、一応は」

 曖昧な言い方だ。

 佐藤は少しもじもじしながら、顔を赤くしている。

「顔赤いぞ」

「別に照れてるとかじゃないから! あんたには借りがあるし、友達として信用してやるわよ!」

 ――もういいか。

 俺は呆れの溜め息をこぼした。



 ***



 未成年の冒険者に関しては、本名などの個人情報を徹底的に保護するという法律がある。

 もし誰かがブラックの正体は黒瀬才斗さいとであると広めようものなら、身元を特定されて即刑務所行きだ。
 それだけ厳しい法律が作られている。

「俺が冒険者としての正体を隠しているのは、面倒なことを避けるためだ。高校では変に目立つことなく穏やかにやっていきたいからな」

 コースもようやくパスタに到達。

 前菜のカプレーゼがここまでで1番美味しかったが、どうだろう。

 ダンジョンに潜っている時には絶対に考えないような、のほほんとしたことを考えながら、佐藤との会話も続けていく。

「未成年冒険者保護の法律もあるし、俺の正体に関しては言わない方が得策だろう」

「当たり前でしょ。あたし、秘密は守るから」

「それは助かる。ついでに楓香と俺の関係のことも、幼馴染設定で全体に通しておいてほしい」

「つまり、あたしに協力してほしいってことね」

 そこまでダイレクトに言ってはいないが、そういうことだ。

「まあでも、タダでは聞かないから」

かねが欲しいのか?」

 友達・・と呼んだ相手にそんなことをするとは。
 覚悟はしていたがなかなか酷い奴だ。

「そんなわけないでしょ! あたしを何だと思ってんの!?」

「違うんだったらいい」

 佐藤がしばらく俺を睨む。

「それで、欲しいものは何だ?」

「あたしも……あたしも黒瀬と同じ冒険者にしてよね!」

 ……は?
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