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上司としての責務編
第21話 他の女の匂いを察知するホワイトピーチ
「ちょっと! なんか言いなさいよ!」
「いや……」
「あたしじゃ無理って言いたいわけ?」
クラスメイトの佐藤から、冒険者になりたい、と言われた。
厳密に言えば、あたしも冒険者にしろ!という強制的な命令だったが、そういう細かいことは無視だ。
「冒険者はそんなに楽な職業じゃない。成功するのは僅かな人間だけだ」
「そんなの、どんな仕事でも一緒でしょ!」
言われてみればそうだ。
ミュージシャンにしろ、俳優にしろ、起業家にしろ、僅かな人間が成功を勝ち取り、その他大勢は成功をつかめずに埋もれていく。
だが――。
「冒険者は他とは比べ物にならないほど危険で、割に合わない。俺にはたまたま才能があった。それだけだ」
「その言い方ウザいんだけど」
確かにウザいな。
ぐうの音も出ない。
「俺が言いたいのは、冒険者はなりたくてなるものじゃないってことだ」
「黒瀬はなりたくなかったって言うわけ?」
「いや、なりたかった」
「ふざけてんの!?」
憤慨するのもわかる。
だが、この件に関しては説明が難しい。
俺はともかく、冒険者という職を他人に勧めるようなことはしたくない。
危険な目には何度も遭った。
目の前で名前も知らない冒険者の命が尽きるのを見守ったこともある。
その亡骸を持ち帰り、どうして救えなかったんだと、その遺族から理不尽に怒鳴られたこともあったし、逆に亡骸を大切に扱ってくれてありがとうと感謝されたこともある。
俺は目的を達するまで冒険者を辞めるつもりはない。
だが、苦しいものは苦しいのだ。
「何を言われても、それだけは断る」
「……」
「別のことにしてくれないか?」
佐藤が黙り込んだ。
どうして冒険者になりたいのかは聞いてない。どうせ断るのだから、聞く必要がない。
俺は無表情で佐藤を見つめていた。
「それじゃあ……」
小振りな口を開く佐藤。
ずっと見つめていて改めて感じたが、彼女はかなりの美少女だ。
後ろで1つ結びにした艶のある長髪。
全体のバランスが完璧な顔立ち。
楓香が可愛い系だとすれば、佐藤は美人系といったところだろう。そんな中にもまだ幼さは残っていて、真悠姉さんと楓香を足して2で割った感じと言えばわかりやすいかもしれない。
「無理に考える必要はないんじゃないか? 冒険者になる以外のことで、頼みたいことがあれば言ってくれ。幸い、俺は成功してる方の冒険者だから資金はある」
「やっぱりウザいんだけど」
もうそれは仕方ないだろ。
***
佐藤と別れると、すぐに帰宅した。
ダンジョンに寄らない帰宅は随分と久しぶりだ。
佐藤は絶対に俺の正体を言わないと約束してくれたし、ひとまずは一件落着だろう。
そもそも、正体をバラしたら警察に捕まるわけだしな。
「おかえりなさい、才斗くん。結構遅かったですね。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、わたし?」
「体も回復したみたいだな」
「え、わたしの体ですか? もう、才斗くんったらえっちなんだから~」
安定のウザさを無視し、リビングに向かう。
楓香はそんな俺の後ろをペタペタとついてきた。
「冷蔵庫に入ってたひき肉で、ハンバーグ作ってみました。わたしのハンバーグには豆腐も入ってるので、ふわふわなんですよ」
「それは楽しみだな」
食事を作っていてくれたことには感心だ。
自分で作らずに済むし、料理ができるまでには回復しているという証拠にもなる。キッチンからは凄くいい匂いがするし、味も期待できそうだ。
「クンクン」
そう思っていたら、楓香がクンクンと言いながらクンクンし始めた。
「才斗くん? もしかして女と遊んできました?」
――鋭い。
女性は匂いに敏感ともいうし、ここで否定するとさらに厄介なことになりそうだ。
「佐藤とご飯を食べてきた。普通にイタリアンの店に行っただけだ」
「わたしという女がいながら、他の女とお食事デートに行ったんですか?」
「楓香は俺の女じゃない。俺の部下だ。それに、佐藤とはそういう関係じゃない」
「ふと思ったんですけど、部下っていうのは上司の所有物ですよね? だったらわたしは才斗くんのものでは?」
「その思想はやめろ。俺が剣騎や一ノ瀬の所有物じゃない事実が何よりの証拠だ」
楓香も本気で言ったわけじゃないと信じたい。
一ノ瀬に好きなように扱われている自分を想像したら寒気がしてきた。
「むぅー、それじゃあ、どうして佐藤さんと食事に行ったんですか? しかもイタリアンなんて、洒落てるじゃないですか」
「元々は1人で行くつもりだった。放課後になってどうしても話したいことがあるって言われたから、仕方なかったんだ」
「仕方なかった、っていう言い訳で女の子とイチャイチャしちゃうんですね、才斗くんは」
楓香はわかりやすく機嫌を損ねている。
「佐藤は昨日、俺たちがダンジョン・ドームから出るところを見てたらしい。俺も楓香も、冒険者であることが佐藤にバレた」
「え……?」
こう言ってしまえば、仕方なかったと理解してくれるだろう。
「いや……」
「あたしじゃ無理って言いたいわけ?」
クラスメイトの佐藤から、冒険者になりたい、と言われた。
厳密に言えば、あたしも冒険者にしろ!という強制的な命令だったが、そういう細かいことは無視だ。
「冒険者はそんなに楽な職業じゃない。成功するのは僅かな人間だけだ」
「そんなの、どんな仕事でも一緒でしょ!」
言われてみればそうだ。
ミュージシャンにしろ、俳優にしろ、起業家にしろ、僅かな人間が成功を勝ち取り、その他大勢は成功をつかめずに埋もれていく。
だが――。
「冒険者は他とは比べ物にならないほど危険で、割に合わない。俺にはたまたま才能があった。それだけだ」
「その言い方ウザいんだけど」
確かにウザいな。
ぐうの音も出ない。
「俺が言いたいのは、冒険者はなりたくてなるものじゃないってことだ」
「黒瀬はなりたくなかったって言うわけ?」
「いや、なりたかった」
「ふざけてんの!?」
憤慨するのもわかる。
だが、この件に関しては説明が難しい。
俺はともかく、冒険者という職を他人に勧めるようなことはしたくない。
危険な目には何度も遭った。
目の前で名前も知らない冒険者の命が尽きるのを見守ったこともある。
その亡骸を持ち帰り、どうして救えなかったんだと、その遺族から理不尽に怒鳴られたこともあったし、逆に亡骸を大切に扱ってくれてありがとうと感謝されたこともある。
俺は目的を達するまで冒険者を辞めるつもりはない。
だが、苦しいものは苦しいのだ。
「何を言われても、それだけは断る」
「……」
「別のことにしてくれないか?」
佐藤が黙り込んだ。
どうして冒険者になりたいのかは聞いてない。どうせ断るのだから、聞く必要がない。
俺は無表情で佐藤を見つめていた。
「それじゃあ……」
小振りな口を開く佐藤。
ずっと見つめていて改めて感じたが、彼女はかなりの美少女だ。
後ろで1つ結びにした艶のある長髪。
全体のバランスが完璧な顔立ち。
楓香が可愛い系だとすれば、佐藤は美人系といったところだろう。そんな中にもまだ幼さは残っていて、真悠姉さんと楓香を足して2で割った感じと言えばわかりやすいかもしれない。
「無理に考える必要はないんじゃないか? 冒険者になる以外のことで、頼みたいことがあれば言ってくれ。幸い、俺は成功してる方の冒険者だから資金はある」
「やっぱりウザいんだけど」
もうそれは仕方ないだろ。
***
佐藤と別れると、すぐに帰宅した。
ダンジョンに寄らない帰宅は随分と久しぶりだ。
佐藤は絶対に俺の正体を言わないと約束してくれたし、ひとまずは一件落着だろう。
そもそも、正体をバラしたら警察に捕まるわけだしな。
「おかえりなさい、才斗くん。結構遅かったですね。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、わたし?」
「体も回復したみたいだな」
「え、わたしの体ですか? もう、才斗くんったらえっちなんだから~」
安定のウザさを無視し、リビングに向かう。
楓香はそんな俺の後ろをペタペタとついてきた。
「冷蔵庫に入ってたひき肉で、ハンバーグ作ってみました。わたしのハンバーグには豆腐も入ってるので、ふわふわなんですよ」
「それは楽しみだな」
食事を作っていてくれたことには感心だ。
自分で作らずに済むし、料理ができるまでには回復しているという証拠にもなる。キッチンからは凄くいい匂いがするし、味も期待できそうだ。
「クンクン」
そう思っていたら、楓香がクンクンと言いながらクンクンし始めた。
「才斗くん? もしかして女と遊んできました?」
――鋭い。
女性は匂いに敏感ともいうし、ここで否定するとさらに厄介なことになりそうだ。
「佐藤とご飯を食べてきた。普通にイタリアンの店に行っただけだ」
「わたしという女がいながら、他の女とお食事デートに行ったんですか?」
「楓香は俺の女じゃない。俺の部下だ。それに、佐藤とはそういう関係じゃない」
「ふと思ったんですけど、部下っていうのは上司の所有物ですよね? だったらわたしは才斗くんのものでは?」
「その思想はやめろ。俺が剣騎や一ノ瀬の所有物じゃない事実が何よりの証拠だ」
楓香も本気で言ったわけじゃないと信じたい。
一ノ瀬に好きなように扱われている自分を想像したら寒気がしてきた。
「むぅー、それじゃあ、どうして佐藤さんと食事に行ったんですか? しかもイタリアンなんて、洒落てるじゃないですか」
「元々は1人で行くつもりだった。放課後になってどうしても話したいことがあるって言われたから、仕方なかったんだ」
「仕方なかった、っていう言い訳で女の子とイチャイチャしちゃうんですね、才斗くんは」
楓香はわかりやすく機嫌を損ねている。
「佐藤は昨日、俺たちがダンジョン・ドームから出るところを見てたらしい。俺も楓香も、冒険者であることが佐藤にバレた」
「え……?」
こう言ってしまえば、仕方なかったと理解してくれるだろう。
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