34 / 178
休日と大阪出張編
第34話 ワンチャンを期待するという身の破滅
大輔はすっかり富秋と打ち解け、今では師匠と呼んでいる。
午後6時。
俺の奢りで夕食のコース料理を食べ終わった大輔は、満足した様子で冒険者ワールドを出ていった。
土曜日は確かに男友達を2人呼んだわけだが、明日まで冒険者ワールドにいるのは俺と楓香だけ。
「それじゃあ、僕もこれで。明日も楽しんでね」
トミーも冒険者ワールドからの退場手続きを済ませる。
俺はそんなトミーを呼び止めた。
「実は俺も最近いろいろ状況が変わって、冒険者パーティを組むことになった」
「才斗君が冒険者パーティ? まあでも、Aランクにもなればそうなるよね」
「才斗くん? そんな話聞いてませんけど? わたしと2人きりじゃなかったらイチャイチャできないじゃないですか!」
楓香の乱入は無視して、話を続ける。
「パーティメンバーの条件として、中堅以上の冒険者ときた。俺は……よく知らない冒険者と契約を結ぶのは正直得意じゃない。だからトミーにお願いしたいと思っているんだが……」
「もちろんだよ! それで才斗君の役に立てるのなら、僕は喜んでパーティを組ませてもらうよ!」
「いいのか?」
意外だったかもしれない。
トミーは自ら好んでフリーランスの冒険者をやっている。
長期的な契約を結ばない、自由なスタンスでの仕事にこだわりがあると思っていたので、この提案はかなりダメ元だった。
それなのに、まさかこうも簡単に承諾してくれるとは。
「ちょっと待ってください! わたしが納得するかも大切ですよね。わたしはもう必然的に才斗くんのパーティメンバーなわけですし――」
「楓香も文句はないそうだ。詳細はまた今度話そう」
「あはは、楓香さんはあんまり納得してないみたいだけどね……」
トミーが苦笑い。
だが、俺としては絶対にパーティに欲しい存在だ。
楓香の勝手な意見でこの話をなかったことにはしない。
「とりあえず、月曜にまた連絡する。とりあえずダンジョンに潜ってみるか」
「そうだね。この3人でのパーティは初めてだし、いろいろと確かめてみないと」
楓香はぷんぷんしているが、やっぱり無視だ。
あとでゆっくり説得すればいい。
わがままに見えても、常識はあるし、礼儀正しいところは評価している。それに、彼女にとってトミーは恩人でもある。
今日彼の優しい人柄はわかっただろうし、受け入れるのも時間の問題だろうな。
「この契約は【ウルフパック】とのものじゃなく、俺との直接契約だから安心してほしい。これまでみたいに一時的な契約を他の冒険者と結ぶのも大丈夫だ」
「それは助かるよ。まだ契約が続いてる人もいるから」
最後に右手と右手の対等な握手を交わすと、トミーは爽やかな笑顔を見せてワールドの外へ出ていった。
「むぅー、あの人ならまだいいですけど、勝手にメンバー増やしたりはしないくださいね」
「俺もそこは慎重にするつもりだ。といっても、俺が信頼を置く冒険者はそこまで多くない。メンバーが4人に増えるのはまだ先のことだろうな」
「増やすつもりではあるんですね」
「俺以外に4人の冒険者とパーティを組むよう言われたんだ。楓香とトミーが加わって、残り2人。正直なところ、どうせパーティを組むのなら5人が最適だと思っている」
「わかりました。確かに、30階層以降は5人のパーティが必須とも聞きますしね。そこまで到達するのに何十年かかるかわからないですけど」
ここで楓香がパッと瞳を輝かせる。
「てことは、30階層に到達する頃にはわたしたちって夫婦ですね。子供は最低でも5人欲しいので……もう1組のパーティも一緒に行ってるパターンですか?」
楓香の頭の中では、将来俺と結婚しているらしい。
未来に何が起こるかは誰にもわからない。
だが、俺が誰かと結婚するなんて、そんなことがあり得るんだろうか。
楓香の綺麗な横顔を見ながら、あるかもわからない将来について考えを巡らせていた。
***
大阪のダンジョンの近く。
西園寺との電話を終えた山口は、一旦別れた青木をさがしていた。
電話をかけ直すと言い、少し位置を変えたのが10分ほど前。
近くで待っているだろうと思っていたのに、青木はどこにも見当たらない。
――確かに人は多いけど……真一君が僕を置いて遠くに行くなんてこともなさそうだしな……。
目立たないよう、黒髪にブラウンの目。
ソードナイトは大阪でも人気があるので、街中で気付かれたら大騒ぎだ。
連絡を取るために、例の万能腕時計で青木にメッセージを送ってみる。この腕時計は髪色や目の色の変化、服装の変更だけでなく、通信機能も備えていた。
もちろん、ダンジョン内での通信はできないが。
「気付いてくれよ……」
しかし、この日、青木が山口のメッセージを既読にすることはなかった。
***
「スミレさんやないか。ちょうど今剣騎と――」
「真一さん、今から私の家に来ませんか?」
「え、いいん……?」
山口が電話をするということで離れてから2分後。
今日会う予定のなかったスミレが、いきなり青木の前に現れた。
突然の家への誘い。
これはもしかしてワンチャンある?という期待を胸に抱きながら、青木は山口のことなど忘れてスミレの家に直行するのだった。
午後6時。
俺の奢りで夕食のコース料理を食べ終わった大輔は、満足した様子で冒険者ワールドを出ていった。
土曜日は確かに男友達を2人呼んだわけだが、明日まで冒険者ワールドにいるのは俺と楓香だけ。
「それじゃあ、僕もこれで。明日も楽しんでね」
トミーも冒険者ワールドからの退場手続きを済ませる。
俺はそんなトミーを呼び止めた。
「実は俺も最近いろいろ状況が変わって、冒険者パーティを組むことになった」
「才斗君が冒険者パーティ? まあでも、Aランクにもなればそうなるよね」
「才斗くん? そんな話聞いてませんけど? わたしと2人きりじゃなかったらイチャイチャできないじゃないですか!」
楓香の乱入は無視して、話を続ける。
「パーティメンバーの条件として、中堅以上の冒険者ときた。俺は……よく知らない冒険者と契約を結ぶのは正直得意じゃない。だからトミーにお願いしたいと思っているんだが……」
「もちろんだよ! それで才斗君の役に立てるのなら、僕は喜んでパーティを組ませてもらうよ!」
「いいのか?」
意外だったかもしれない。
トミーは自ら好んでフリーランスの冒険者をやっている。
長期的な契約を結ばない、自由なスタンスでの仕事にこだわりがあると思っていたので、この提案はかなりダメ元だった。
それなのに、まさかこうも簡単に承諾してくれるとは。
「ちょっと待ってください! わたしが納得するかも大切ですよね。わたしはもう必然的に才斗くんのパーティメンバーなわけですし――」
「楓香も文句はないそうだ。詳細はまた今度話そう」
「あはは、楓香さんはあんまり納得してないみたいだけどね……」
トミーが苦笑い。
だが、俺としては絶対にパーティに欲しい存在だ。
楓香の勝手な意見でこの話をなかったことにはしない。
「とりあえず、月曜にまた連絡する。とりあえずダンジョンに潜ってみるか」
「そうだね。この3人でのパーティは初めてだし、いろいろと確かめてみないと」
楓香はぷんぷんしているが、やっぱり無視だ。
あとでゆっくり説得すればいい。
わがままに見えても、常識はあるし、礼儀正しいところは評価している。それに、彼女にとってトミーは恩人でもある。
今日彼の優しい人柄はわかっただろうし、受け入れるのも時間の問題だろうな。
「この契約は【ウルフパック】とのものじゃなく、俺との直接契約だから安心してほしい。これまでみたいに一時的な契約を他の冒険者と結ぶのも大丈夫だ」
「それは助かるよ。まだ契約が続いてる人もいるから」
最後に右手と右手の対等な握手を交わすと、トミーは爽やかな笑顔を見せてワールドの外へ出ていった。
「むぅー、あの人ならまだいいですけど、勝手にメンバー増やしたりはしないくださいね」
「俺もそこは慎重にするつもりだ。といっても、俺が信頼を置く冒険者はそこまで多くない。メンバーが4人に増えるのはまだ先のことだろうな」
「増やすつもりではあるんですね」
「俺以外に4人の冒険者とパーティを組むよう言われたんだ。楓香とトミーが加わって、残り2人。正直なところ、どうせパーティを組むのなら5人が最適だと思っている」
「わかりました。確かに、30階層以降は5人のパーティが必須とも聞きますしね。そこまで到達するのに何十年かかるかわからないですけど」
ここで楓香がパッと瞳を輝かせる。
「てことは、30階層に到達する頃にはわたしたちって夫婦ですね。子供は最低でも5人欲しいので……もう1組のパーティも一緒に行ってるパターンですか?」
楓香の頭の中では、将来俺と結婚しているらしい。
未来に何が起こるかは誰にもわからない。
だが、俺が誰かと結婚するなんて、そんなことがあり得るんだろうか。
楓香の綺麗な横顔を見ながら、あるかもわからない将来について考えを巡らせていた。
***
大阪のダンジョンの近く。
西園寺との電話を終えた山口は、一旦別れた青木をさがしていた。
電話をかけ直すと言い、少し位置を変えたのが10分ほど前。
近くで待っているだろうと思っていたのに、青木はどこにも見当たらない。
――確かに人は多いけど……真一君が僕を置いて遠くに行くなんてこともなさそうだしな……。
目立たないよう、黒髪にブラウンの目。
ソードナイトは大阪でも人気があるので、街中で気付かれたら大騒ぎだ。
連絡を取るために、例の万能腕時計で青木にメッセージを送ってみる。この腕時計は髪色や目の色の変化、服装の変更だけでなく、通信機能も備えていた。
もちろん、ダンジョン内での通信はできないが。
「気付いてくれよ……」
しかし、この日、青木が山口のメッセージを既読にすることはなかった。
***
「スミレさんやないか。ちょうど今剣騎と――」
「真一さん、今から私の家に来ませんか?」
「え、いいん……?」
山口が電話をするということで離れてから2分後。
今日会う予定のなかったスミレが、いきなり青木の前に現れた。
突然の家への誘い。
これはもしかしてワンチャンある?という期待を胸に抱きながら、青木は山口のことなど忘れてスミレの家に直行するのだった。
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活
シン
ファンタジー
世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。
大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。
GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。
そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。
探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。
そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。
たまに有り得ない方向に話が飛びます。
一話短めです。
洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた
里奈使徒
キャラ文芸
白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。
財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。
計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。
しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。
これは愛なのか、それとも支配なのか?
偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?
マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。
「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——