ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

文字の大きさ
38 / 178
休日と大阪出張編

第38話 仲間を誰よりも残酷だと思う今日この頃

 俺は大阪の街を1人で歩いていた。
 特に目的地があるわけでもない。ただ、ふらふらと歩いているだけだ。

 ――本当にこれで上手くいくのか?

 呆れた表情で歩道を歩きながら、ついさっき剣騎けんきから聞かされたある仮説について考える。



 ***



「敵の次の狙いは君だ、才斗さいと

「俺?」

 剣騎は全国チェーンのカフェに俺を連れてきたかと思うと、真剣な表情でそう言ってきた。

「敵の正体はまだはっきりしない。大阪に拠点を置いている高ランク冒険者なのかもしれないし、別のところからわざわざ大阪まで来た殺し屋なのかもしれない」

「普段は頼りなさそうとはいえ、真一しんいちはSランク冒険者だ。確かに上級冒険者じゃないと仕留められないだろうな」

「ああ、その通り。それじゃあ、別の観点から考えてみる。どうして真一君なのか、だ」

「Sランク冒険者の中では1番弱そうだから、とかじゃないのか?」

 俺は別に真一の実力を低く評価しているわけじゃない。

 ただ、たまに会う時には西園寺さいおんじ一ノ瀬いちのせに対して怯えた表情しか見えていないので、さほど強い印象がない、ということは大きいのかもしれない。

 それに加え、実際に真一の戦闘を見たことがある冒険者としても、驚くほどの力はないように感じていた。

 とはいえやはり実力者なのには変わらないし、西園寺や剣騎といったとんでもない冒険者を近くで見てきたからこそ、実力の高さに驚くハードルが高くなっていることも1つあるだろう。

「そうだね。もし敵が【ウルフパック】の壊滅を狙う闇派閥だったとしよう。彼らに僕たちとやり合えるだけの戦力が整ったのなら、ターゲットを絞って1人ひとり潰していこうと考えるのが普通だ」

「【ウルフパック】の幹部ポジションにいる人間を討てば、組織に混乱が起きる。それを狙って幹部にターゲットを絞った、というわけか」

 抹茶ラテをストローで吸いながら、こくこくと頷く剣騎。

「その際、狙いやすいのは幹部の中でも唯一のAランクである才斗か、どこか隙がありそうな真一君だよね」

「……それでこの前、俺と楓香ふうかをダンジョンで襲った、ということか」

「もし今回の件と君の奇襲事件が繋がっているのなら、っていう大きな仮定の中での話ではあるけどね」

「そう考えた方が納得できる」

 ここで敵の正体を勝手に決め付け、対策することは簡単だ。

 だが、確かに闇派閥が黒幕である可能性が高いものの、大企業【ウルフパック】は様々な方角からの恨みを買いやすい。
 他の可能性も十分に残されていることがネックだった。

「まあ、今回は正体がはっきりしない以上、可能性の大きい仮説に従って動くのが最善だと思うね」

「そうだとしたら、どうして次のターゲットが俺になるんだ? すでに狙われていて、その狙いを真一に変えた、ということだろ?」

「その真一君はもう始末した……と相手は思ってる・・・・。だったら次は才斗へのリベンジ、違うかい?」

「……」

 悔しいが、そうかもしれない。

 他にも幹部はいるが、全員俺よりランクが上。現状は彼らの方が俺よりずっと仕留めにくい。そう考えると、真一が不遇だな。

「仮説はわかった。俺はどうすればいい?」

「簡単だよ。才斗が僕から離れて人目につかないような路地を歩き回ればいい」

「罠だってバレバレな気がするが」

「いいんだよそれくらいで。人間瞬間移動はできないんだから、大阪に滞在している、敵にとって危険度の高い僕が遠くでふらふらしてたら、少しは油断するだろう?」

「素直に殺されるつもりはないが、もし俺の力が及ばなかったらどうする?」

「その時は悔しいけど、君は自分の実力不足を嘆き、そのまま消えることになる。だから僕が駆けつけるまでは踏ん張ってね」

 抹茶ラテを飲み終わり、ニヤッと笑う。

 きっと本気だと思った。
 山口剣騎は時に、残酷だ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——