ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

文字の大きさ
39 / 178
休日と大阪出張編

第39話 かませ犬にはとりあえず黙ってもらおうというアレ

 仲間の死。
 もし真一しんいちの亡骸が見つかって入れば、今頃葬式をしていただろう。

 真一を殺した敵は何者なのか。
 俺を襲った闇派閥——赤髪の女冒険者ヴァイオレットが所属している組織の者なのか、はたまたまったく別の勢力なのか。

 俺と剣騎けんきは同じ闇派閥が今回の敵であると考えて調査を行っている。
 それは【ウルフパック】の社長トップである西園寺さいおんじも同じらしい。

 俺はなるべく違和感がないよう、大阪の街に溶け込んでいた。

 敵からすれば、罠であることなんて百も承知だろう。
 だが、剣騎はそこに食い付いてくると確信している様子だった。

「狭いな」

 たった1人で、薄暗い通りを歩く。

 まだ午後3時くらいなのだが、日当たりが悪いので路地が暗くなってしまう。軽犯罪とかも普通に起きていそうな通りだ。

「おい」

「ん?」

「ここは俺たちのテリトリーなんだけどよぉ、おめぇ何勝手に入ってきてんだよ」

 見るからに低級の冒険者がオラついてきた。

 世間に素顔を公開していない冒険者で面倒なのはこういうところだ。
 Dランクくらいのイキった冒険者が、立場を勘違いして横柄な態度を取ってくる。

 弱肉強食の世界。

 もし俺が冒険者ではなく、戦闘能力のない一般人だったのなら即退場だった。理不尽だとか、そんなことは関係ない。

 強さが全て。
 その価値観が今の世の中にあるからこそ、冒険者が調子に乗ることができる。

「忙しいから黙っててくれ」

「――ッ!」

 終了。

 ポケットに手を突っ込んで睨んできた冒険者の中のゴミは、俺のデコピンによって地面にめり込まされ、これ以上発言できなくなってしまった。

「ここで優越感に浸るのは低レベルだな……」

 多少のストレスは解消されるものの、こんなことに快楽を見出していては低俗だ。

 散歩の途中でとまってきたハエを叩いたくらいの気持ちでいよう。

「おっ――おめぇ……俺たち・・がここで終わると思うなよ……!」

 もうしゃべりかけられることはないと思っていたのに、しぶとい奴だ。

 少し感心した。
 俺のデコピンに耐えた上で声が出せるということは、こいつのランクはCくらいだろうか。

「俺を狙ってきたのか? 俺の実力を知っていながら?」

あの方・・・から言われてんだよ! おめぇを倒せば一気に出世できるって」

「あの方がどれだけの実力者なのかは知らないが、俺の実力を知っている上で、お前みたいな雑魚を送ってくるものなのか?」

 だとしたら、相当な無能だと思うんだが。

 オブラートに包まず直接的に言ったので、オラオラ男もかなりイラついたようだ。

「俺は組織の中でも下っ端だけどよぉ、上の連中なんておめぇなんか一撃だってんだ!」

「ならどうして攻めてこない?」

「それは……あの方には計画があるんだよ!」

「どんな計画だ?」

「ここで言えるわけねぇだろ! だいたい俺は――」

 ブチッ。

 何かが切れる音がした。

 その瞬間、男の頭から血が噴き出す。
 結末は言うまでもない。オラオラ男は死んだ。

「……」

 多分だが、あの方とやらが男の脳内に仕込んでいた装置が破裂したんだろう。それで血管が破れ、皮膚が破れ、大量出血を起こした。

 何か重要なことを話してしまいそうなタイミング。
 ピンポイントにそこで男が死んだということは、この会話がどこかで聞かれている、ということを示している。

 もしくは、見られている……?

黒瀬くろせ才斗さいと、キミには戦ってほしい人がいるんだ』

 どこからか声が聞こえた。

 今にも死にそうな、吐息まじりのハスキーな声。背筋がゾワッとしてしまうような、不気味さを本能的に感じ取る。
 声だけで性別を断定するのは難しいが、俺が聞いた限り男である可能性が高そうだ。

「どこだ?」

『ネタ晴らしは早いように感じるが、まあいい。先ほどキミが倒した下村しもむら君の体内に、音声スピーカーを搭載してみた。なかなかに音質がいいだろう?』

「……」

『こうして会話するのは初めてということで、キミに質問する時間を与えよう。好きな質問を3つまで投げかけてくるといい』

 敵は悠長だ。

 おそらく、オラオラ男が話していた『あの方』であると直感する。

 だとすると、下村と呼ばれたオラオラ男は、俺とあの方が会話をするために派遣された捨て駒だったんだろうか。

「お前の体は今、どこにある? 大阪か?」

『大阪にいたのなら直接出向いていたかもしれない。簡潔に言おう。ボクは今、東京にいる』

 こうして1つ目の質問コーナーが終わる。

 とりあえずラスボスは今近くにいないことだけがわかった。

「そもそも、お前が闇組織のトップと考えていいのか?」

『そう考えてもらって結構。ついでに答えてあげよう。先日、ヴァイオレットをキミのところに差し向けたのもボクだ』

 敵の言葉は疑うのが普通だ。

 だが、この質問への解答に関しては、真実であると信じれるような気がした。
 それが敵の掌の上で転がされている証拠だとしたらなんとも言えないが、自分からわざわざ質問を振っておいて、偽りの答えを言う意図がわからない。

 ――俺を混乱させたいのか?

 悪いが、俺はその程度で動揺する冒険者じゃない。

「最後の質問だ。【ウルフパック】のSランク冒険者、青木あおき真一を殺したのは誰だ?」

『その質問を待っていたんだ、ボクは』

 不気味な声の主がどこかで笑う。
 声のトーンから、その笑いが偽りのないものであるとわかる。

『青木真一を殺したのは、キミも交戦経験のあるヴァイオレット、またの名を、黒瀬天音あまねだ』
感想 1

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——