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休日と大阪出張編
第41話 ヒロイン同士がギスギスしているというアレ
白桃と佐藤はダンジョン・ドームを目指して2人で放課後を共にしていた。
「あたしだってもう冒険者になったんだから、連れていきなさいよね!」
「ほんとに……冒険者に?」
「嘘つくわけないでしょ。ここで戦ってみる?」
「わたしが勝つけど、それ」
「なんでそう言い切れるわけ?」
「いやだって……経験が違うし、ランクが違うし、その根拠を挙げたらキリがないと――」
「わかった! 認めるわよ! あたしの方が弱いから!」
白桃は佐藤と親しくしたいわけではない。
同様に、佐藤もまた、白桃に好意的な感情を持っているわけでもない。
しかし、目的地は2人とも一致している。
ダンジョン・ドーム。
2人が冒険者である限り、目指す場所はそこしかないのだ。
「ていうか、【選別の泉】に入る時の申請はしたの?」
「それは……してないけど」
「じゃあどうやって?」
「別に細かいことはあんたに関係ないでしょ!」
どこか返答を濁す佐藤。
白桃はその態度に違和感を覚えたが、特に興味もないので何も指摘しなかった。
***
超音波によって、ヴァイオレットこと、黒瀬天音は狂戦士と化していた。
俺はというと、不思議なことに何も変化はない。
頭の中はクリーンですっきりしているし、理性を失ったり、攻撃的になったりすることもなかった。
ヴァイオレットにだけ通用する音波なんだろうか。
そんな疑問が浮かんでくる間にも、ヴァイオレットは俺に攻撃を仕掛けてくる。
魔力の込められた漆黒の剣。
ダンジョンで奇襲を受けた時に使用していた武器とまったく同じものを、ここでも使っていた。
「ヴァイオ――姉さん、落ち着いてくれ」
ヴァイオレット呼びをやめ、『姉さん』と呼んでみる。
これまでほとんど交流がなくても、過去の記憶を忘れていたとしても、俺と黒瀬天音は血の繋がった姉と弟だ。
その事実が覆ることはない。
「俺は姉さんと戦いたくない」
「――ッ」
「ここで俺たちが戦う意味はない。姉さんは利用されていたんだ」
「あの方が……私を……」
その真実はさっき利用した本人がすんなりと白状したばかり。
その衝撃が抜けきってはいないだろう。
なら今がチャンスだ。
「俺のことを覚えてるか? 俺は黒瀬才斗。姉さんの弟だ」
「……才斗……」
「姉さんが誘拐されたのは俺が0歳で、姉さんが3歳の頃だった。だから覚えてないのかもしれない。だが……両親のことを……覚えてないか?」
「私の……両親……」
ヴァイオレットが剣を下ろす。
少なくとも今は、情報の整理に頭を使っていて、戦闘できるほどの余裕がない。
「記憶を探れば、きっとどこかに眠ってるはずだ」
「私の両親……弟……家族……」
「そうだ。俺が弟だ。才斗だ。あの時はまだ小さかったからな。今ではこんなに大きくなった」
こんなやり方が通用するんだろうか。
人の出入りのない通りだったので、幸い周囲に観衆はいない。
だが、客観的にこの状況を目にしたなら、凄く滑稽に見えてしまうかもな。
「……」
ヴァイオレットは今、冒険者としてのヴァイオレットと、俺の姉としての黒瀬天音——2つの境界で揺れ動いている。
俺にはそう見えた。
3歳の頃に誘拐され、洗脳に近い形で力を与えられて戦わされていたわけだ。
盲目的に上の指示に従ってきたんだろう。
だが、その命令者の意図を知った。
命令者はただ、彼女を利用したかっただけ。
駒として使えるのかどうか。そこに価値を見出していただけだった。
もう音波は鳴っていない。
ヴァイオレットの殺気が消えた。
オレに向けられる視線が、前よりは落ち着いた視線に変わってきている。
『面白い。実の弟の説得が彼女の中枢にある何かを刺激したようだ』
「焦らなくてもいいのか? 黒瀬天音はもう、お前の駒なんかじゃない」
『焦る? 何もかも、ボクの計算通りだ。心配はいらない』
少しも動揺を見せない不気味な声。
俺はその声に苛立ちを覚えるようになっていた。
***
ダンジョン・ドームに着いた白桃と佐藤。
慣れた様子の白桃が、冒険者カードを取り出し、機会にスキャンする。
「冒険者カードをスキャンするんですよー」
挑発するように佐藤を見る白桃。
佐藤はそんな白桃を睨み付けた。
「それぐらい知ってるから!」
「じゃあどうしてカードを出さないんですかー?」
「――ッ。持ってないからに決まってるでしょ!」
「……ああ、なるほど」
白桃はここで佐藤の違和感の正体に気付いた。
【選別の泉】に申請なしで入ったことや、いきなり冒険者になったこと。
詳細を誤魔化そうとする佐藤の態度。
「もしかして、未登録冒険者? 闇派閥が関わってるんじゃないですか?」
「……は? そんなの知らないし!」
佐藤はわかりやすく動揺していた。
白桃が懸念していたことが確信に変わる。
「はぁ……どうすればいいんですか、才斗くん?」
冒険者ドームの前で、白桃は天を仰ぎ見た。
「あたしだってもう冒険者になったんだから、連れていきなさいよね!」
「ほんとに……冒険者に?」
「嘘つくわけないでしょ。ここで戦ってみる?」
「わたしが勝つけど、それ」
「なんでそう言い切れるわけ?」
「いやだって……経験が違うし、ランクが違うし、その根拠を挙げたらキリがないと――」
「わかった! 認めるわよ! あたしの方が弱いから!」
白桃は佐藤と親しくしたいわけではない。
同様に、佐藤もまた、白桃に好意的な感情を持っているわけでもない。
しかし、目的地は2人とも一致している。
ダンジョン・ドーム。
2人が冒険者である限り、目指す場所はそこしかないのだ。
「ていうか、【選別の泉】に入る時の申請はしたの?」
「それは……してないけど」
「じゃあどうやって?」
「別に細かいことはあんたに関係ないでしょ!」
どこか返答を濁す佐藤。
白桃はその態度に違和感を覚えたが、特に興味もないので何も指摘しなかった。
***
超音波によって、ヴァイオレットこと、黒瀬天音は狂戦士と化していた。
俺はというと、不思議なことに何も変化はない。
頭の中はクリーンですっきりしているし、理性を失ったり、攻撃的になったりすることもなかった。
ヴァイオレットにだけ通用する音波なんだろうか。
そんな疑問が浮かんでくる間にも、ヴァイオレットは俺に攻撃を仕掛けてくる。
魔力の込められた漆黒の剣。
ダンジョンで奇襲を受けた時に使用していた武器とまったく同じものを、ここでも使っていた。
「ヴァイオ――姉さん、落ち着いてくれ」
ヴァイオレット呼びをやめ、『姉さん』と呼んでみる。
これまでほとんど交流がなくても、過去の記憶を忘れていたとしても、俺と黒瀬天音は血の繋がった姉と弟だ。
その事実が覆ることはない。
「俺は姉さんと戦いたくない」
「――ッ」
「ここで俺たちが戦う意味はない。姉さんは利用されていたんだ」
「あの方が……私を……」
その真実はさっき利用した本人がすんなりと白状したばかり。
その衝撃が抜けきってはいないだろう。
なら今がチャンスだ。
「俺のことを覚えてるか? 俺は黒瀬才斗。姉さんの弟だ」
「……才斗……」
「姉さんが誘拐されたのは俺が0歳で、姉さんが3歳の頃だった。だから覚えてないのかもしれない。だが……両親のことを……覚えてないか?」
「私の……両親……」
ヴァイオレットが剣を下ろす。
少なくとも今は、情報の整理に頭を使っていて、戦闘できるほどの余裕がない。
「記憶を探れば、きっとどこかに眠ってるはずだ」
「私の両親……弟……家族……」
「そうだ。俺が弟だ。才斗だ。あの時はまだ小さかったからな。今ではこんなに大きくなった」
こんなやり方が通用するんだろうか。
人の出入りのない通りだったので、幸い周囲に観衆はいない。
だが、客観的にこの状況を目にしたなら、凄く滑稽に見えてしまうかもな。
「……」
ヴァイオレットは今、冒険者としてのヴァイオレットと、俺の姉としての黒瀬天音——2つの境界で揺れ動いている。
俺にはそう見えた。
3歳の頃に誘拐され、洗脳に近い形で力を与えられて戦わされていたわけだ。
盲目的に上の指示に従ってきたんだろう。
だが、その命令者の意図を知った。
命令者はただ、彼女を利用したかっただけ。
駒として使えるのかどうか。そこに価値を見出していただけだった。
もう音波は鳴っていない。
ヴァイオレットの殺気が消えた。
オレに向けられる視線が、前よりは落ち着いた視線に変わってきている。
『面白い。実の弟の説得が彼女の中枢にある何かを刺激したようだ』
「焦らなくてもいいのか? 黒瀬天音はもう、お前の駒なんかじゃない」
『焦る? 何もかも、ボクの計算通りだ。心配はいらない』
少しも動揺を見せない不気味な声。
俺はその声に苛立ちを覚えるようになっていた。
***
ダンジョン・ドームに着いた白桃と佐藤。
慣れた様子の白桃が、冒険者カードを取り出し、機会にスキャンする。
「冒険者カードをスキャンするんですよー」
挑発するように佐藤を見る白桃。
佐藤はそんな白桃を睨み付けた。
「それぐらい知ってるから!」
「じゃあどうしてカードを出さないんですかー?」
「――ッ。持ってないからに決まってるでしょ!」
「……ああ、なるほど」
白桃はここで佐藤の違和感の正体に気付いた。
【選別の泉】に申請なしで入ったことや、いきなり冒険者になったこと。
詳細を誤魔化そうとする佐藤の態度。
「もしかして、未登録冒険者? 闇派閥が関わってるんじゃないですか?」
「……は? そんなの知らないし!」
佐藤はわかりやすく動揺していた。
白桃が懸念していたことが確信に変わる。
「はぁ……どうすればいいんですか、才斗くん?」
冒険者ドームの前で、白桃は天を仰ぎ見た。
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