ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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恋人と常にラブコメ編

第52話 2人のブラコン姉に溺愛される可愛い弟

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 高校2年の夏。

 体育祭と文化祭が近付く季節に、転校生の美少女が人生で初めての彼女になった。

 冒険者として何年もやってきたゆえ、青春というものを送ったことはない。
 学校にはたまに話す友達がいるくらいで、モブ同然の扱いだった。

「いよいよ今日はSランク昇格ですね」

「付き合うことになっても敬語なのは変わらないんだな」

「もうすっかり慣れちゃって。同い年ですけど、才斗さいとくんって先輩であり先生みたいな感じの人なので、やっぱり敬語になっちゃうんです。ダメですか?」

「別にいいんじゃないか。俺はただ気になっただけだ」

 今日は付き合って4日目。

 西園寺さいおんじに指示されたSランクへの昇格が行われる日だ。
 金曜日ということもあって、放課後は多くの生徒が寄り道して帰っている。

 俺たちが来ているのはダンジョンの近くにあるショッピングモールだ。いわゆる、モールデート。

 ダンジョンでの仕事を終え、私服姿でデートをしている。

「クラスメイトに見せつけてやろうと思ったのに、誰もいませんね」

「遊ぶところはいくらでもある。会うことの方が珍しいんじゃないのか」

「いやいや、絶対知り合いと会いますって」

「だとしても、クラスメイトとは限らないだろ」

「そりゃあそうですけど……むぅー、見せつけられればそれでいいんですー!」

「そうなのか」

 楓香は俺の腕をがっちりホールドして歩いている。

 まさに恋人って感じだ。
 だが、恋人になる前からこういうことをされていたわけなので、今までと何かが変わった気はさほどない。

「そうそう、それこそ佐藤さとうさんとかに――って、あ!」

「ん?」

 佐藤の名前を口にした途端、何かを思い出したかのように叫ぶ楓香。

 ちなみに、佐藤はここ1週間ずっと学校を休んでいる。
 担任によれば体調不良とのことだが、本当のことは知らない。インフルエンザだったら出席停止って説明を受けるような気もするし、普通に佐藤のプライバシー保護という気もする。

「佐藤さんは冒険者です」

「え?」

「月曜日からずっと言おうと思ってたんですけど、いろいろあって忘れてて……」

「佐藤が冒険者になったって、【選別の泉】に入って力を得たってことか?」

「そうなんですよ! それがいろいろ問題ありありで……」

 衝撃の新事実。
 佐藤が冒険者になっていた。

 冒険者ワールドに行く際も、普段なら絶対に一瞬で付くメッセージの既読も付いてなかったし、少し奇妙な点もあった。

 あれは全てその予兆だったということだ。
 見落とした俺はプロ失格だ。

「所属はどこだ? まさか【バトルホークス】じゃないだろうな」

「それが……佐藤さん――まだわたしの予測なんですけど――闇派閥に入ってるかもしれないんです!」

「……嘘だろ……」



 ***



才斗さいと

「姉さん」

 楓香と一緒に【選別の泉】に着くと、先に来ていた姉さんがいきなり抱きついてきた。

 クールな顔立ちで他人を寄せ付けないほどキリっとした目元の美人だが、姉としての姿は甘々で優しい。

 少し前までは敵対していて、ヴァイオレットという敵の幹部ポジションとして戦わされていた。
 楓香に重傷を負わせたこともあるし、真一しんいちを殺したこともある。

 そう考えると、かなりヤバいな。

「Sランク昇格、おめでとう」

 そう言って、頭を撫でてくる。

「才斗ちゃーん!」

「ぐっ――」

 本当の姉さんに甘やかされていると――。

「また会いまちたね~。才斗ちゃんにはお姉さんがいるのに、別の人に浮気はダメでちゅよ~」

真悠まゆ姉さん……これは浮気じゃない」

 久しぶりの登場、真悠姉さん。

 彼女は【ウルフパック】の幹部で、Sランク冒険者だ。
 普段は岡山で活動しているため、東京に来るのは出張のようなもの。

 だが、今日はただ俺がSランクに昇格するというだけの日だ。それ以上でもそれ以下でもない。
 俺以外の冒険者が何かしなければならないわけでもない。

 ただ、伝統のようなものだった。
 自分の友人がランクアップする時には、パーティのようなもので組織全体を盛り上げる、というヤツだ。

 別に嫌いじゃないが、面倒にも思っていた。

「私は黒瀬くろせ天音あまね。才斗の実の姉」

「え……? どういうこと?」

「天音さんはずっと行方不明やった才斗の姉っちゅーことやな。この綺麗な顔見ればわかるやろ? 才斗にそっくりや」

 いきなり姉さん同士の会話に割り込んできたのは、真一だ。

 どうやら真一はまだ姉さんに惚れてるらしい。
 一度殺されたのに、どうして好きになるのかは誰にもわからない。

 真悠姉さんが俺の頬を両手で挟み、隣の天音姉さんの顔と見比べる。

 10秒後、何度か深く頷きを繰り返すと、そのまま俺の頬をつねってきた。

「良かったでちゅね~、才斗ちゃん。でも、今まで面倒をみてきたのはお姉さん(私)だもんね~。本当の姉よりこっちがいいでちゅよね~」

「というより、なんでつねったんだ?」

「浮気したから」

 こんな理不尽なことはない。

「才斗くんはわたしの彼氏・・なんです! これ以上彼に触ると才斗くんを誘惑する害虫女に認定しますよ」

 ここでずっと傍観していた楓香がついに口を開いた。
 Sランク冒険者に対してこの言い様。さすがは俺の彼女だ。

「才斗くんはわたしのものなんです。わたし以外の女が触れるなんて考えられません。才斗くんの体にはわたしの皮膚と血液がたくさん入ってます。もうわたしたちは同棲してて――」

「「「……」」」

 俺も天音姉さんも真悠姉さんも、全員がドン引きしていた。
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