ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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九州での抗争編

第64話 ツンデレヒロインが再登場してからのアレ

 九州行きのメンバーは俺を含めて5人。

 俺、楓香ふうか剣騎けんき天音あまね姉さん、そして西園寺さいおんじ

 キャンピングカーは順調に高速道路を走っていた。

「大阪に着いたら少し休憩するよ」

 まずは大阪に向かう。
 当然ながら、どこにも立ち寄らずに九州に行くわけがない。

 運転手は剣騎だ。

 とはいえ、高速に乗ってからは自動運転に切り替えたので、運転席には誰も座ってない。

 もはやただの移動する小さな家。

 俺と楓香はソファに腰掛け、その向かいのソファには姉さんが座っている。
 間にあるテーブルの上にはいくつかのボードゲームが置かれていた。

 剣騎いわく、長旅にボードゲームは必需品でしょ、とのこと。

 将棋、チェス、リバーシ―、人生ゲーム、トランプ……。
 こんな時じゃないと全部やる気にはならないだろうっていう壮観な眺め。

 剣騎は好物の抹茶ラテをすすりながら、俺と姉さんの将棋対局を観戦している。

「この戦況だと、明らかに才斗さいとが有利だね」

「……」

 姉さんは一言もしゃべらない。

 集中すると無口になるタイプらしい。
 実際、将棋を始めてから1回も口を開いていなかった。いて言うなら、王手、くらいか。

「わたし将棋とかしたことないんですけど、難しいんですか?」

「それは人によると思うが」

 楓香からの問いに、無難な答えを返す。

 ちなみに楓香は小腹が空いたのか、冷蔵庫からチーズブリトーを取り出して食べていた。野菜も入っているからヘルシーなんだそうだ。

「才斗くんの将棋って、山口さんから見たらどうなんですか? やっぱり強い感じです?」

「んー、悪いけど、僕の方が強いかな。才斗は慎重なタイプだから凡ミスは少ないけど、駒の動きを上手く引き出すのがまだまだ青二才といったところだね」

「わたしでも練習すれば才斗くんに勝てるようになりますか?」

「それは白桃しらもも君の努力次第さ。もし才斗の実力が今のまま変わらないとしたら、1ヶ月くらい頑張ればすぐに勝てるようになると思うけどね」

「じゃあ頑張ります! 才斗くん、今日から将棋教えてください!」

「なんでそうなる……」

 俺も自分の将棋の実力がさほど高くないことくらいわかっている。
 今俺が有利なのは、姉さんが将棋を1週間前に覚えたばかりの、初心者だから。

「念のために言っておくけど、西園寺さんは僕よりずっと強いよ。将棋も」

 ニヤッと笑った剣騎が、ドヤ顔で言う。
 彼がドヤ顔する必要はないと思うが。

 その言葉を聞いた西園寺はというと、前方にある助手席で1人、窓から見える景色を楽しんでいた。
 高速道路の。

「王手……俺の勝ちだ」

「……負けました」

 姉さんが負けてしょぼんとしている。

 感情表現が上手いタイプではないものの、こういった僅かな仕草によってわかることもたくさんある。
 姉さんはその代表だ。

「よし、今度はみんなでブラックジャックしよう! 僕がディーラーをやるよ」

 剣騎が助手席の方に声をかける。

「この時をずっと待ってたんだよぅ。やっとオレも才君と遊べるんだぁぁああ」

 このグダグダな社長に関して、コメントは控えておこうと思った。



 ***



 出発から7時間が経過し、ようやく大阪に着いた。

 もう昼の2時。
 ランチは冷蔵庫にあるもので適当に済ませていたが、しっかりした料理を食べようということで、改めてみんなでお好み焼きを食べに行った。

 ついでにたこ焼きと明石焼きも食べた。

 小学生みたいな感想になるが、全部美味しかった。

「なんか懐かしいねぇ、大阪は。少し前にいろいろあったからね」

「それより、周囲の視線が凄いですね。東京にいた時よりずっと多い気がします」

 楓香の言う通り、俺たちには多くの注目が集まっていた。

 最近話題になった3人がいるのだ。
 ブラックとその彼女と【ウルフパック】の社長。

 西園寺の人気は凄まじく、例の記者会見を経てさらに一般人からの好感度が上がったようだ。
 少しくらい怖がったらどうなんだ。

「そろそろ車に戻った方が良さそうだな」

 俺の一言で、腹を満たした冒険者5人はキャンピングカーがめてあるパーキングに向かう。

 その道中。

黒瀬くろせ?」

「……佐藤さとう……本物、だよな?」



 ***



「ブルーオーシャン、キミに最初の任務を与えよう」

「最初の任務?」

 闇派閥、【ダークエイジ】のアジト。

 薄気味悪い空間で、薄気味悪いフードの男が青髪の若い女に声をかけた。

 若い女はまだ高校生。
 名前は佐藤勝海かつみ

 フードの男ヴェルウェザーが付けたもう1つの名は、ブルーオーシャン。

 冒険者としての力を得た佐藤の髪と瞳は青くなり、すっかり一般人の面影をなくしてしまっていた。

「間抜けな西園寺と山口が東京を出た。チャンスだと思わないか?」

「あたしにもわかるように言いなさいよね!」

「相変わらず威勢のいい小娘だ……素晴らしい」

「――ッ」

「新人のキミにあの2人の対応を期待するのは理不尽が過ぎる。ボクはただ、キミにしかできない任務があると思っている」

「あたしにしかできない任務?」

「その通り。そしてキミにもメリットのある話だ」

「焦らさないで早く言って」

 クククッと。
 ヴェルウェザーから陰気な笑い声が漏れる。

「ボクにはわかる。キミは黒瀬才斗ブラックに好意を抱いている。しかし、そんなブラックはキミ以外の女と付き合っているわけだ」

「べ、別にあたしは黒瀬のこと好きってわけじゃ――」

「否定してくれても構わない。これは結局、命令だ」

 闇のアジトに緊張感が走った。
 今アジトにいるのはヴェルウェザーと佐藤のみ。

「ブルーオーシャン、キミに白桃楓香の暗殺を命じる」
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