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九州での抗争編
第65話 偶然なんてないという強烈な警戒心
大阪で消息不明だった佐藤と会った。
前回は闇派閥の少年が化けていたため、今回も疑いの目で見ることになる。
「まさか……」
剣騎でさえも言葉を失っていた。
ここで彼女にあったのは偶然ではないだろう。
何か意図があるはずだ。もし佐藤が闇派閥に関与しているのであれば――その可能性はかなり高いが――ここに送り込まれた目的が存在する。
安心させて俺たちの誰かを殺すとか、誘拐するとか。
だが、問題は俺たちの強さと、佐藤の実力だ。
少なくとも俺たちは、冒険者初心者に殺されるほど弱くない。佐藤がどんなにセンスのある冒険者だったとしても、Sランク冒険者は格が違う。
姉さんも少し前に正式に実力を測定し、Aランクであることが確定したばかり。
この中で1番ランクが低いのは楓香になるが、Cランクもまた、それなりに強い冒険者であるということ。
「ちょうど君のことを調べていたが、大阪で見つかるとは」
西園寺が低い声で言う。
真剣な表情の西園寺を見ると、どこか安心する。
やっぱり西園寺龍河はそうでなくては、という気持ちがどこかにあるのかもしれない。
あんなふにゃふにゃな姿じゃなく、堂々とした圧倒的強者が彼に合っている。
「黒瀬も白桃さんも、どうして大阪にいるのよ?」
「旅行みたいな感じだ。そっちこそどうなんだ?」
「あたしは……大阪で働き始めたの。あんたには関係ないでしょ」
「関係ないことはない。ずっと行方不明だったわけだからな」
こうして会話してみると、さほど違和感はなかった。
今までのツンデレの佐藤と変わりはない。
強いて言うなら、俺たちと会ったことにさほど驚いた様子がないということ。
こんなところで会うのが偶然だとは思えないこともあり、俺たちが大阪にいるというのを知っていた可能性があると思った。
「才斗くん、本人が関係ないとか言ってますし、もう行きましょうよ。早く車に戻りたいですぅ」
グイグイ俺の服を引っ張り、歩き出す楓香。
西園寺は一瞬怪訝な顔を見せたものの、佐藤の表情を確認すると、注意深く見ていないと気付けないほど小さく頷き、楓香に続いた。
剣騎は困惑している。
目の前に調査対象がいるのに、無関心とでもいうようにさらりと流す西園寺。今はその意図を探っていた。
俺は逆に、楓香の予想外の機転に驚いていた。
なかなか優秀な部下を持った。いや、彼女だな。
結局は剣騎も姉さんも、楓香に続いて歩き出す。向かうのはこれまでと同様、キャンピングカーがある駐車場だ。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
佐藤がついてきた。
自分が元々向かっていた方向とはまったくの逆方向だというのに。
もしこの再会が偶然でないのなら、佐藤から俺たちへの接触には必ず意味がある。なら、突き放すような真似をしてもついてくるはず。
「どうしたんだ?」
「あたしはその……白桃さんには言ったけど、冒険者になったの」
「ああ、楓香から聞いた」
「それで……その……大阪の企業が雇ってくれることになったのよ。だから今はそこで働いてるってわけ」
「大阪の企業、か」
また立ち止まる。
ここは周囲からの視線が多いな。
会話も聞かれる可能性が高い。
「社長、どうします?」
ここは西園寺に判断を求める。
「その娘をキャンピングカーに乗せても構わない。出発は遅れるが、街中で話すのはリスクが高いから仕方ないだろう」
***
というわけで、まだ駐車場のキャンピングカーの中に、俺たち5人と、佐藤。
佐藤はソファに腰掛け、俺と楓香、そして姉さんと向き合っている。
剣騎は運転席、西園寺は助手席だ。
「それで、大阪のなんて企業で働いてるんですか?」
楓香が聞いた。
少し煽るような目だ。
もしかしたらさっき俺が機転だと思ったアレは、ただ佐藤と関わるのが嫌で出た一言だったのかもしれない。
面倒だからわざわざ聞かないが。
「ブライトピリオドってとこ。そんな大きくない中小企業だから知らないでしょ」
「確かに聞いたことないですね。誰か知ってます?」
手を挙げる人はいない。
だが、ここで西園寺が口を開く。
「調べたところ、闇派閥【ダークエイジ】はいくつかの子会社を持っているようだ。過去に闇派閥との関与が噂された冒険者たちの所属会社の親会社が、全て同じ会社であることがわかった」
「面白い発見だね。つまり、そのブライトピリオドの親会社を調べれば黒か白かすぐにわかるわけだ」
剣騎がスマホを操作し出す。
ブライトピリオドを検索しているのかもしれない。
「ちなみに、その親会社っていうのはなんて名前だったんだい?」
「ソルジャー・ホールディングスだ」
「んー、ネットでさっと調べてみた限り、ブライトピリオドは本当にただの中小企業みたいだね。もちろん冒険者系の。佐藤君はそこで冒険者として雇われたってことかい?」
剣騎からの問いに、佐藤が頷く。
嘘っぽさは感じないが……。
「姉さん、ブライドピリオドって名前に聞き覚えはないか?」
最後の砦。
姉さんは闇派閥にいた人間だ。
それも一応上層部。
ブライトピリオドが闇派閥【ダークエイジ】と関係があるのなら、何か耳にしたことくらいあるかもしれない。
「私を含め、幹部でさえも組織の細かいことは知らなかった。ヴェルウェザーは秘密主義」
「そうか……」
判断が難しいな。
「あの……」
まだ警戒の視線を向けられる佐藤が、恐る恐るというように口を開く。
さっきまで物怖じしない態度だったのに、急に緊張し始めたらしい。
声を抑え、目の前にいる俺でさえ聞き逃しそうな声量だ。
俺と楓香、姉さんが前傾姿勢になり、佐藤の声に耳を傾ける。
「お願い……助けて……ヴェルウェザーに殺されるかもしれないの……」
前回は闇派閥の少年が化けていたため、今回も疑いの目で見ることになる。
「まさか……」
剣騎でさえも言葉を失っていた。
ここで彼女にあったのは偶然ではないだろう。
何か意図があるはずだ。もし佐藤が闇派閥に関与しているのであれば――その可能性はかなり高いが――ここに送り込まれた目的が存在する。
安心させて俺たちの誰かを殺すとか、誘拐するとか。
だが、問題は俺たちの強さと、佐藤の実力だ。
少なくとも俺たちは、冒険者初心者に殺されるほど弱くない。佐藤がどんなにセンスのある冒険者だったとしても、Sランク冒険者は格が違う。
姉さんも少し前に正式に実力を測定し、Aランクであることが確定したばかり。
この中で1番ランクが低いのは楓香になるが、Cランクもまた、それなりに強い冒険者であるということ。
「ちょうど君のことを調べていたが、大阪で見つかるとは」
西園寺が低い声で言う。
真剣な表情の西園寺を見ると、どこか安心する。
やっぱり西園寺龍河はそうでなくては、という気持ちがどこかにあるのかもしれない。
あんなふにゃふにゃな姿じゃなく、堂々とした圧倒的強者が彼に合っている。
「黒瀬も白桃さんも、どうして大阪にいるのよ?」
「旅行みたいな感じだ。そっちこそどうなんだ?」
「あたしは……大阪で働き始めたの。あんたには関係ないでしょ」
「関係ないことはない。ずっと行方不明だったわけだからな」
こうして会話してみると、さほど違和感はなかった。
今までのツンデレの佐藤と変わりはない。
強いて言うなら、俺たちと会ったことにさほど驚いた様子がないということ。
こんなところで会うのが偶然だとは思えないこともあり、俺たちが大阪にいるというのを知っていた可能性があると思った。
「才斗くん、本人が関係ないとか言ってますし、もう行きましょうよ。早く車に戻りたいですぅ」
グイグイ俺の服を引っ張り、歩き出す楓香。
西園寺は一瞬怪訝な顔を見せたものの、佐藤の表情を確認すると、注意深く見ていないと気付けないほど小さく頷き、楓香に続いた。
剣騎は困惑している。
目の前に調査対象がいるのに、無関心とでもいうようにさらりと流す西園寺。今はその意図を探っていた。
俺は逆に、楓香の予想外の機転に驚いていた。
なかなか優秀な部下を持った。いや、彼女だな。
結局は剣騎も姉さんも、楓香に続いて歩き出す。向かうのはこれまでと同様、キャンピングカーがある駐車場だ。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
佐藤がついてきた。
自分が元々向かっていた方向とはまったくの逆方向だというのに。
もしこの再会が偶然でないのなら、佐藤から俺たちへの接触には必ず意味がある。なら、突き放すような真似をしてもついてくるはず。
「どうしたんだ?」
「あたしはその……白桃さんには言ったけど、冒険者になったの」
「ああ、楓香から聞いた」
「それで……その……大阪の企業が雇ってくれることになったのよ。だから今はそこで働いてるってわけ」
「大阪の企業、か」
また立ち止まる。
ここは周囲からの視線が多いな。
会話も聞かれる可能性が高い。
「社長、どうします?」
ここは西園寺に判断を求める。
「その娘をキャンピングカーに乗せても構わない。出発は遅れるが、街中で話すのはリスクが高いから仕方ないだろう」
***
というわけで、まだ駐車場のキャンピングカーの中に、俺たち5人と、佐藤。
佐藤はソファに腰掛け、俺と楓香、そして姉さんと向き合っている。
剣騎は運転席、西園寺は助手席だ。
「それで、大阪のなんて企業で働いてるんですか?」
楓香が聞いた。
少し煽るような目だ。
もしかしたらさっき俺が機転だと思ったアレは、ただ佐藤と関わるのが嫌で出た一言だったのかもしれない。
面倒だからわざわざ聞かないが。
「ブライトピリオドってとこ。そんな大きくない中小企業だから知らないでしょ」
「確かに聞いたことないですね。誰か知ってます?」
手を挙げる人はいない。
だが、ここで西園寺が口を開く。
「調べたところ、闇派閥【ダークエイジ】はいくつかの子会社を持っているようだ。過去に闇派閥との関与が噂された冒険者たちの所属会社の親会社が、全て同じ会社であることがわかった」
「面白い発見だね。つまり、そのブライトピリオドの親会社を調べれば黒か白かすぐにわかるわけだ」
剣騎がスマホを操作し出す。
ブライトピリオドを検索しているのかもしれない。
「ちなみに、その親会社っていうのはなんて名前だったんだい?」
「ソルジャー・ホールディングスだ」
「んー、ネットでさっと調べてみた限り、ブライトピリオドは本当にただの中小企業みたいだね。もちろん冒険者系の。佐藤君はそこで冒険者として雇われたってことかい?」
剣騎からの問いに、佐藤が頷く。
嘘っぽさは感じないが……。
「姉さん、ブライドピリオドって名前に聞き覚えはないか?」
最後の砦。
姉さんは闇派閥にいた人間だ。
それも一応上層部。
ブライトピリオドが闇派閥【ダークエイジ】と関係があるのなら、何か耳にしたことくらいあるかもしれない。
「私を含め、幹部でさえも組織の細かいことは知らなかった。ヴェルウェザーは秘密主義」
「そうか……」
判断が難しいな。
「あの……」
まだ警戒の視線を向けられる佐藤が、恐る恐るというように口を開く。
さっきまで物怖じしない態度だったのに、急に緊張し始めたらしい。
声を抑え、目の前にいる俺でさえ聞き逃しそうな声量だ。
俺と楓香、姉さんが前傾姿勢になり、佐藤の声に耳を傾ける。
「お願い……助けて……ヴェルウェザーに殺されるかもしれないの……」
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