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白熱の最強冒険者決定戦編
第77話 万全の準備で臨む試合観戦
10月に入り、本格的に最強冒険者決定戦の季節がやってきた。
4年に一度、日本の最強冒険者を決める戦い。
この肩書きに惹かれて参加したというような冒険者も多いのかもしれない。
事実、西園寺にチラッと見せられたエントリーシートには、面白そうだから、自分の実力を確かめたいから、など。
多種多様な理由が書き込まれていたのを覚えている。
「いよいよ明日から予選が始まりますね。緊張してきました」
「緊張か。俺はそこまでしてないな」
「むぅー。才斗くんは強いし、自信満々って感じじゃないですかぁー。でもわたしは弱いから――」
「楓香は強い」
言葉を遮り、本人の目を見つめながら言った。
この言葉は本気だ。
楓香には才能がある。本人がその才能に気付いているのかは聞いてみないとわからないが、少なくとも、自分がCランク冒険者の中でも頭1つ抜けていることには気付いているはずだ。
「熱い眼差しですね。惚れ直しました」
「そうか。それは良かった」
「むぅー、でもやっぱり怖いです。ほとんどがAランク以上の冒険者なんですよね?」
楓香の半泣きの質問に、1つの頷きで答える。
「文字通り最強を決める戦いだ。最初から最強になるつもりがあるような奴が参戦してくる。もちろん、ただの遊び感覚でエントリーしてくる冒険者もいるが」
「わたしたち、普段から社長とか山口さんとか、とんでもなく強い冒険者を見てきてるじゃないですかぁ。だから余計に怖いっていうか」
「ボコボコにされても死ぬことはない。自分が勝てるところまで頑張ればいいだろ」
「もっと優しい言葉をかけてくださいよぉ」
楓香がここまでふにゃふにゃなのは初めてだ。
最近は自分の実力不足を感じるような出来事が多かった。だから余計に緊張しているのかもしれない。
俺も同じだ。
Sランクに昇華するという大きな変化はあったものの、それからハイレベルな戦いを要求させ続けてきたせいで、余計に高みを目指す難しさを知った。
西園寺、そして優勝候補の神宮司。
この2人に勝たなければ、優勝は絶対にない。
大会の前にこんなことを言うのもアレかもしれないが、今の俺では、彼らの足元にも及ばないと考えている。
純粋な戦闘スペックもさることながら、戦闘経験、戦闘技術、知見、判断力……あらゆる項目で彼らに劣っている。
だとしたら、今回の冒戦で目標とすべきラインはどこか。
「俺たちが優勝を目指す必要はない。自分の目標を決め、淡々と勝ち進むだけだ」
「才斗くんの目標は何なんですか?」
「俺の目標は剣騎、真一、そして一ノ瀬に勝つことだ」
同じ【ウルフパック】所属のSランク冒険者。
彼らの方がずっと早くランクを上げていて、多くの経験を積んでいる。
西園寺や神宮司と同様、俺にとって高すぎる壁だ。
だが、戦略次第では勝てない相手じゃない。
自惚れかもしれないが、彼らの戦い方をある程度知っている俺としては、上手くいくかもしれない勝ち筋があった。
とはいえ、それは彼らにとっても同じこと。
特に剣騎は、俺を長年見てきた男。
俺の戦い方の癖や弱点も見抜いているに違いない。
「才斗くんならできますよ、それくらい。全然実現可能って感じの目標です」
「そうか? 楓香にはそう見えているかもしれないが、実際は――」
「そんなの関係ありません。才斗くんだから、勝てると思うだけです」
今日もダンジョン捜索を終え、家に帰ってきている。
俺と楓香は夕食を取りながら、明日に迫った冒戦の話に花を咲かせていた。
「心強い言葉だ」
楓香の俺を信じ切った熱い視線を受け、貴重な微笑みで返す。
「お互いにベストを尽くそう」
「そうですね。もしわたしがBランク冒険者に勝ったら、えっちしましょうね。約束ですよ」
***
10月5日、土曜日。
ダンジョンのある街は今日より、お祭りムードに包まれる。
決勝トーナメントの会場である東京の街も、多くの熱気に包まれていた。
「調子はどうだい、才斗?」
「まずまずだな」
予選会場となる小さな円形体育館には、いつもの冒険者スーツに身を包んだ剣騎が到着していた。
俺たちよりかなり早い到着だったらしく、観客席には充実した観戦道具がセットされていた。
ポテトチップスに好物の抹茶ラテ、自分で持ち込んだであろう快適な持ち運びソファに、ふかふかのクッション。
有名なSランク冒険者だからこそできることだな。
俺は別に普通のかたい椅子で問題ない。
「隣に座ってもいいか?」
「もちろん。むしろ僕は君たちが来るのをずっと待ってたんだよ。映画観ながら」
ソファから前方に飛び出たアーム。
そこにタブレット端末をセットして、映画が観れるようになっている。
「今から冒険者同士の戦いを観るのに、映画も観るのか?」
「待ち時間も多いし、つまらない試合もあるだろうからね。才斗も観るかい?」
「遠慮しとく」
「白桃君は観るだろう?」
「最高にえっちなベッドシーンがある映画なら観たいです。特に洋画だと激しいですよね」
「え……」
剣騎はそこまで楓香を知らない。
だからか、さっきの楓香の発言にドン引きしていた。
4年に一度、日本の最強冒険者を決める戦い。
この肩書きに惹かれて参加したというような冒険者も多いのかもしれない。
事実、西園寺にチラッと見せられたエントリーシートには、面白そうだから、自分の実力を確かめたいから、など。
多種多様な理由が書き込まれていたのを覚えている。
「いよいよ明日から予選が始まりますね。緊張してきました」
「緊張か。俺はそこまでしてないな」
「むぅー。才斗くんは強いし、自信満々って感じじゃないですかぁー。でもわたしは弱いから――」
「楓香は強い」
言葉を遮り、本人の目を見つめながら言った。
この言葉は本気だ。
楓香には才能がある。本人がその才能に気付いているのかは聞いてみないとわからないが、少なくとも、自分がCランク冒険者の中でも頭1つ抜けていることには気付いているはずだ。
「熱い眼差しですね。惚れ直しました」
「そうか。それは良かった」
「むぅー、でもやっぱり怖いです。ほとんどがAランク以上の冒険者なんですよね?」
楓香の半泣きの質問に、1つの頷きで答える。
「文字通り最強を決める戦いだ。最初から最強になるつもりがあるような奴が参戦してくる。もちろん、ただの遊び感覚でエントリーしてくる冒険者もいるが」
「わたしたち、普段から社長とか山口さんとか、とんでもなく強い冒険者を見てきてるじゃないですかぁ。だから余計に怖いっていうか」
「ボコボコにされても死ぬことはない。自分が勝てるところまで頑張ればいいだろ」
「もっと優しい言葉をかけてくださいよぉ」
楓香がここまでふにゃふにゃなのは初めてだ。
最近は自分の実力不足を感じるような出来事が多かった。だから余計に緊張しているのかもしれない。
俺も同じだ。
Sランクに昇華するという大きな変化はあったものの、それからハイレベルな戦いを要求させ続けてきたせいで、余計に高みを目指す難しさを知った。
西園寺、そして優勝候補の神宮司。
この2人に勝たなければ、優勝は絶対にない。
大会の前にこんなことを言うのもアレかもしれないが、今の俺では、彼らの足元にも及ばないと考えている。
純粋な戦闘スペックもさることながら、戦闘経験、戦闘技術、知見、判断力……あらゆる項目で彼らに劣っている。
だとしたら、今回の冒戦で目標とすべきラインはどこか。
「俺たちが優勝を目指す必要はない。自分の目標を決め、淡々と勝ち進むだけだ」
「才斗くんの目標は何なんですか?」
「俺の目標は剣騎、真一、そして一ノ瀬に勝つことだ」
同じ【ウルフパック】所属のSランク冒険者。
彼らの方がずっと早くランクを上げていて、多くの経験を積んでいる。
西園寺や神宮司と同様、俺にとって高すぎる壁だ。
だが、戦略次第では勝てない相手じゃない。
自惚れかもしれないが、彼らの戦い方をある程度知っている俺としては、上手くいくかもしれない勝ち筋があった。
とはいえ、それは彼らにとっても同じこと。
特に剣騎は、俺を長年見てきた男。
俺の戦い方の癖や弱点も見抜いているに違いない。
「才斗くんならできますよ、それくらい。全然実現可能って感じの目標です」
「そうか? 楓香にはそう見えているかもしれないが、実際は――」
「そんなの関係ありません。才斗くんだから、勝てると思うだけです」
今日もダンジョン捜索を終え、家に帰ってきている。
俺と楓香は夕食を取りながら、明日に迫った冒戦の話に花を咲かせていた。
「心強い言葉だ」
楓香の俺を信じ切った熱い視線を受け、貴重な微笑みで返す。
「お互いにベストを尽くそう」
「そうですね。もしわたしがBランク冒険者に勝ったら、えっちしましょうね。約束ですよ」
***
10月5日、土曜日。
ダンジョンのある街は今日より、お祭りムードに包まれる。
決勝トーナメントの会場である東京の街も、多くの熱気に包まれていた。
「調子はどうだい、才斗?」
「まずまずだな」
予選会場となる小さな円形体育館には、いつもの冒険者スーツに身を包んだ剣騎が到着していた。
俺たちよりかなり早い到着だったらしく、観客席には充実した観戦道具がセットされていた。
ポテトチップスに好物の抹茶ラテ、自分で持ち込んだであろう快適な持ち運びソファに、ふかふかのクッション。
有名なSランク冒険者だからこそできることだな。
俺は別に普通のかたい椅子で問題ない。
「隣に座ってもいいか?」
「もちろん。むしろ僕は君たちが来るのをずっと待ってたんだよ。映画観ながら」
ソファから前方に飛び出たアーム。
そこにタブレット端末をセットして、映画が観れるようになっている。
「今から冒険者同士の戦いを観るのに、映画も観るのか?」
「待ち時間も多いし、つまらない試合もあるだろうからね。才斗も観るかい?」
「遠慮しとく」
「白桃君は観るだろう?」
「最高にえっちなベッドシーンがある映画なら観たいです。特に洋画だと激しいですよね」
「え……」
剣騎はそこまで楓香を知らない。
だからか、さっきの楓香の発言にドン引きしていた。
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