ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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白熱の最強冒険者決定戦編

第79話 たまには「ざまぁ」も悪くないというアレ

 突然の実況席への乱入者。
 そしてその正体は優勝候補の西園寺さいおんじ

 会場のボルテージは今日1番。

 初めてSランク冒険者が登場することに加え、少し前に大ブームを巻き起こした張本人である西園寺の登場なので、今日これ以上の歓声を聞くことはないかもしれない。

『西園寺さぁーん、今日はどうしてここまでいらっしゃったんですかね?』

『空き時間ができた。社員の応援に駆け付けない社長にはなりたくない』

『かっこよすぎるセリフ! この西園寺さんは、先日の記者会見でブチ切れをかました西園寺龍河りゅうがで間違いなさそうだ!』

 さらに盛り上がる観客席。

 もう少し俺とその対戦相手のことも考えてほしい。

『さて、空気がすっかり西園寺さんに持っていかれそうになりましたが、東のゲートから登場しましたのは、運が悪いかな、Bランク冒険者の武田たけだ慎二しんじ!』

 実況の声に合わせ、武田を憐れむような拍手が巻き起こる。

 運が悪いというのは俺と当たったことだ。
 Bランク冒険者なら、対戦相手によってはこの予選の勝者5人に残ることができるかもしれなかった。

 だが、俺と対戦することになった時点で、その可能性はゼロ・・になった。

 はっきり言おう。

 俺はこの戦いで負けるなど、微塵も思っていない。

『ランクのことを考えれば、もう勝負は決まっているようなものだと思いますが、西園寺さんはどう思いますか?』

『Sランクである黒瀬才斗ブラックが圧倒的に有利である状況に異論はない。だが、小さな油断や隙が、ランクの差をひっくり返すこともある』

『なるほど! つまり、武田慎二レモンソーダにも勝利の可能性があるということでしょうか?』

『それはない。才くんは凡ミスなどしない』

『あ……えー、それだけ部下である黒瀬才斗ブラックを信頼している、ということですね!』

『信頼、という言葉だけでは足りないほどだ』

『ここで西園寺さんのブラック愛が出たぁぁぁあああ!』

 このやり取りを聞かされている観客と俺の気持ちを考えてほしい。

 俺は普通に恥ずかしかったが、観客にはウケているようだった。
 特に女子の黄色い声援が多い。
 そういえば、例の記者会見以降、西園寺と俺のカップリングを推す腐女子が増えたとか。

 これは楓香ふうかからの情報だが、多分本当のことだろうなと思っている。

 冒険者名レモンソーダこと武田慎二。
 いろいろと可哀そうになってくるが、彼の表情を見る限りやる気はありそうだ。

 濃い黒髭を生やしているからおじさんに見えなくもないが、20代後半くらいなんだろうな。

 筋肉質な体格をしていて、見るからにパワー系。
 だとすると、使用する剣術はボルドー派だろうか。

「あんたが話題の冒険者ブラックか」

 お互いの声が届く距離まで来た。
 身長は190センチくらいありそう。

 体格差はあるものの、背の低い西園寺や剣騎けんきが普段軽々と戦う様子を見ているからか、小柄の方が強いという偏見を持ってしまっているため、まったく威圧感は感じない。

 ただ、声が低くて太かったため、俺以外の人物であれば怖くて縮み上がっていただろうなと思ってしまう。

「みんなからチヤホヤされて、いい気分か?」

「別にそうでもない」

「嘘つけ。才能ある奴はいいよな。ろくに努力もせずにランク上げられて、可愛い彼女まで手に入るんだから」

「俺のことを言っているのか?」

「他にそんな奴がいるってか? 涼しい顔してSランクになりやがって。そもそもな、冒険者に恋人なんていらねぇんだよ!」

「それを決めるのは自分だ。お前につべこべ言われる筋合いはない」

「生意気な奴め。若くして成功した奴はいいよな!」

 俺が生意気なのは事実かもしれないが、コイツの小物感には驚いた。

 Bランク冒険者というと中堅の中でも上位。
 それなりに努力しなければその地位を手に入れることはできない。

 だから努力の難しさ、現実の厳しさ、尊敬し合うことの大切さ――底辺冒険者や一般人よりはずっとわかっているはず。

 それなのに、ここまでレベルが低いとは。
 はっきり言って、ガッカリだ。

 人として低レベルな人間に、冒険者を名乗る資格はない。

「俺に勝つ気でいるのか?」

 挑発目的で聞いてみる。
 顔は相変わらず無表情を維持した。

「まだ実力が本物とも限らないからな。俺様がここでお前の実力を認めたら、観客の見てる前で土下座してやるよ」

「約束するか?」

「俺様は約束を守る男だ」

「わかった。俺が負けたら生意気な態度を謝ろうと思う」

 お互いが戦闘準備に入る。

 空気はバチバチ。

 観客は相変わらず楽しそうに盛り上がっていて、当事者たちの間でピリピリとした睨み合いが行われているなんて微塵も考えていなさそう。

『剣を構えたようなので、ブザーが鳴ったら試合開始です!』

 3……。

 力強く剣を構える。

 2……。

 後ろにグッと右足を引く。

 1……。

『さあ、始まりました!』

『決着はもうついた』

 開始のブザーが鳴り、勢いよく武田が飛び出す。先手を打つことで試合を有利に運ぼうと思っているのかもしれない。

 だが、俺にはSランク冒険者特有の超能スキルがあった。

 一瞬で武田の影に入り込み、後ろに踊り出る。

 そして――。

『レモンソーダが飛んでいく! なんと円形体育館コロシアムの天井を突き破り、空へと吹っ飛ばされたぞぉぉぉおおお!』

 ――あ……少し力入れすぎた。
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