ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

文字の大きさ
82 / 178
白熱の最強冒険者決定戦編

第82話 衝撃のセリフを告げるシリアスな顔のソードナイト

「――わたしは、絶対に、才斗くんと、えっちするんだぁぁぁあああ!」

 会場中に響く楓香ふうかの叫び。

 剣騎けんきはもうすっかり面白がっているのか、大笑い。そして俺は、大きな溜め息をこぼした。

「なかなかやってるね、白桃しらもも君は」

「あれはやりすぎだ」

 楓香の相手は有名人の田中たなかゆきね。

 俺の彼女だと報道されてからは楓香もそれなりに有名人だが、田中はかなり前から多くの男性を虜にしてきた女性冒険者だ。

 雷電らいでんの配信を観たからか、おすすめに田中の動画が上がってきてからは、何度かサムネに釣られて観たことがある。
 その印象としては、お色気ムンムンのお姉さん。

 冒険者としての実力は定かではないものの、Bランクという事実はあるので、楓香より単純なステータスは高いと考えられる。

「この勢いで案外勝てるかもしれないよ」

「ランクは絶対だ。1つ違いとはいえ、気合いだけで勝てるような差じゃ――」

「気合いだけ、ねぇ」

 剣騎は俺に呆れたように溜め息をついた。

「白桃君は戦闘面でもかなり成長してるよ。この前の訓練で戦い方の安定化を感じた。何度かトラウマを乗り越えれば、経験値は上がっていく」

「だが……」

 反論はできない。

 認めよう。
 俺が間違っていた。

 気合いだけじゃない。楓香は戦闘の面でも大きく成長した。

「でもまあ、僕はこの勝負、田中君が勝つと思うね。けでもするかい?」

「……」

「ゴミを見るような目で見ないでくれ。僕はただ、白桃君の実力は確かに上がっているものの、着実にBランクまで上り詰めた田中君には及ばないという結論を出しただけだ」

「そうだな」

 軽く頷きながら、戦闘開始直前のフィールドの視線を落とす。

 そこには顔を真っ赤にして剣を構える楓香と、お姉さん系美女の田中が向かい合っていた。

 剣の構えからして、田中もピトー派だろうか。
 だとしたら、2人とも同じフォームを使っていることになる。

「剣のフォームの相性で結末がわかることがあるからね」

 剣騎も見ているものは同じだった。

「ただ、同じフォームで戦われると、勝敗が決まるのはやっぱり単純にスペックの差」

「剣術の熟練度の方が大切じゃないのか?」

「なるほど……才斗さいとはそっち派か」

 そこにも派閥があるのか。
 世界は厄介だ。

「剣術が優れていれば、相手の方がパワーが強かったとしても上手く受け流して戦えるはずだ」

「それが通用するならいいけど、厳しいかもしれないね」

「……」

 そうこう話しているうちに、試合が始まった。



 ***



 楓香は俺たちが思っていた以上に剣術の腕を上げていた。

 見てないところで自主練でもしたんだろうか。

 細かい剣の捌き方も正確であることに加え、パワーにおいても田中に負けていない。
 かすかに見える田中の苦しそうな表情で、彼女もまた本気を出しているということがわかった。

 つまり――。

「実力が拮抗している……?」

「白桃君にも冒険者の才能があった、ということだね。彼女を発掘した僕は、もっと評価されるべきだよね」

 そんなことを自分で言うから評価されないのだ。

「そういえば……」

 楓香はここ最近の闇派閥問題に大きく関わってきた。

 関わってきた、というより、巻き込まれてきた、という方が正しいかもしれない。

 その際、闇派閥の敵はほとんどがSランク並みの冒険者だった。
 さらにはAランクだった俺や、Sランクの真一しんいちと呼吸を合わせて戦うことを求められたりもしていた。

 自分よりも遥かにレベルの高い環境で実践を積んだ。
 その経験は楓香にとっての地獄でもあり、高みを目指すための大きな手掛かり。

「Bランク程度なら勝ててしまうのか……?」

「Bランク程度……君もまた面白いことを言う……」

 ついボソッと出てしまった一言。
 剣騎はそれに驚きつつも、何度も細かく首を縦に振っていた。

「もしこの戦いに白桃君が勝ったら、才斗は本当に彼女の望むことをするつもりかな?」

「……どうだろうな」

 まだ早いような気もする。

「アドバイスはあるか?」

「おいおい、僕に恋愛のアドバイスを求めるのかい? もっと別の人に聞いてほしいね」

「冒険者はほとんど恋愛してないだろ。剣騎以外でそんなことを聞けるような人はいないんだ」

「なんだ嬉しいなぁ。僕のことをそんなに信頼してくれてるんだね。ここからまさかのBL展開が始まったりして」

「始まらないから安心してくれ」

「とにかく、白桃君にはポテンシャルがある。もっとモチベーションを高めさせて、決勝トーナメントを目指すように言ってほしい」

「別に構わないが、さすがに決勝トーナメントは厳しくないか?」

「もちろん、今の実力では行けないね」

 剣騎が白い歯を見せた。

 決して馬鹿にしているわけじゃない。

 決勝トーナメントを実際に目指させ、意識させることにより、今後の目標や志も大きく変わってくるかもしれない。
 剣騎はそれを期待しているんだろう。

「剣騎は何を目指してるんだ?」

 その流れで聞いてみる。

「冒険者の教育も上手いし、俺が知ってる冒険者の中で、1番社会人として有能・・なのは剣騎だと思ってる」

「そこまで僕を評価してくれてるんだね」

 もうこの時点では、剣騎のポテトチップスはなくなっていた。さっきまでは大量にあったのに、なくなるのが早すぎる。

 フィールドで繰り広げられる中堅冒険者の試合を見ながら、剣騎はいつにも増してシリアスな表情を作った。

「これを言うのは才斗で3人目になるんだけど……実は僕、近々【ウルフパック】を辞めようと思ってるんだ」

 ……は?
感想 1

あなたにおすすめの小説

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——