ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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白熱の最強冒険者決定戦編

第86話 恋愛経験はしっかり積んでいこうというアレ

「……」

「まあ、こうなるよね」

 Cランク冒険者とAランク冒険者。

 その勝負の結果は最初からわかっている。
 ランクによる力の圧倒的な差を知っている俺と剣騎けんきからすれば、いくら楓香ふうかの調子が良かったとしても、Aランクに勝つことは不可能だ。

 そして、その通りになった。

 楓香は今、調子に乗った罰とでもいうかのように地面にめり込んでいる。
 冒険者にしてみればよくある敗北なので、そこまで心配することはない。

 それなりの治療は受けるかもしれないが、少しすればすぐに回復する程度の怪我だろう。

「これで楓香の冒戦は終わったのか」

「でも、相当なインパクトを残したと思うよ」

「それは間違いないな」

 急に下ネタを叫び、格上を2回連続で倒したCランク冒険者。

 その可愛いルックスもあり、人気がグンと伸びるのも時間の問題だろう。
 白桃楓香オーロラの名を世間に示すには、十分すぎる予選となった。



 ***



才斗さいとくーん、負けちゃいました」

 駄々をこねるようにして姿を見せたのは、先ほど圧倒的な敗北をかました楓香だ。

 落ち込んでいる様子はないものの、顔面の切り傷は結構痛そう。

「でもえっちができるのは確定事項なので、いいですよね?」

「その甘えが敗北を作ったのなら、ダメだ」

 完全に理不尽だが、半分真理でもあった。

 3回目の試合、楓香の戦い方はまるで違った。
 調子に乗って本気で勝ちにいくような剣術を見せなかったし、攻撃を受けても相手の動きの分析ができていないようにも感じた。

 その原因は甘えだろう。

 絶対に勝てないような対戦相手だったとしても、最後まで気を抜かず、ここで勝てなければ望みは叶わないくらいの気迫で臨まなくては、相手に対して失礼である。

「お願いしますよ才斗くーん。今、体が火照ってうずうずしてるんです」

「熱中症かもしれないな」

「むぅー、違いますよ! もう我慢できないんです!」

「……」

 楓香の再教育は、俺の冒戦が終わってからじっくり考えることしよう。



 ***



「もう今年の冒戦には出られないので、あとは才斗くんの応援をするだけですね」

「どうしても出たいならまた4年待てばいい」

「その頃にはきっとおばあちゃんですよ~」

 そんなことはない。

 俺たちは予選を終え、家に帰っていた。
 ダンジョンにはしばらく寄らなくなるだろう。決勝トーナメントまでは、調整のために対人戦のトレーニングばかりすることにしている。

 ちなみに、俺の残りの試合はイージーゲームだった。
 なんと、対戦相手が試合の直前に棄権したのだ。

 さすがにSランクの俺と戦うのは無謀すぎたということか。2人ともBランクだったようなので、諦めるのにも納得がいく。

「でも才斗くんはやっぱり凄いですよね! 日本のトップ層じゃないですか!」

「運が良かっただけだ」

「運だけでこうなります? 実はSランクの高校生冒険者なんて、才斗くんくらいしかいませんよね」

 そりゃあ、Sランクが日本では両手で数えるくらいしかいないし……。

「決めました! わたしもSランク目指します!」

「は?」

「まずはBランクを目標に頑張っていくんですけど、結構本気でSランクになりたいと思ってるんです。才斗くんとおそろいですし」

 ランクにおそろいを求める人がここにいる。

 夕食を食べ終えた俺たちは、すっかり風呂から上がってソファでくつろいでいた。

 楓香はやる気満々なのか、すぐにはだける・・・・タイプのパジャマを着ている。

 実際、すべすべの生脚と胸の谷間はもう見えていた。
 本人は見られていることをまったく気にしてない。というかわざとやっているような感じがした。

「才斗くん……その……わたし、本気なんです」

「……」

 火照った表情で、顔を赤らめながら呟く楓香。

 その仕草がどこか官能的で、女性としての魅力を増していた。

「寝室に行きませんか?」

 悪魔の提案。
 だが、俺も怖気づいてはいられない。

 ここは楓香に任せよう。彼女は俺と同じで恋愛なんて未経験者だが、誰よりも積極的だ。

 しっかりと閉められた寝室の扉は、翌日の朝になるまで開くことはなかった。



 ***



 10月6日。日曜日。

 予選2日目。

 来週の土曜から2日間かけて行われる決勝トーナメントに向けた、冒険者同士の全力の戦いが熱を増していた。

 昨日の会場よりずっと大きな、ダンジョンの近くにある円形体育館コロシアム

 観客は10万人。
 最後尾の列からフィールドまでの距離が遠すぎて、肉眼では戦いが見えないほどだ。

 もちろん頭上に拡大モニターが設置されている。

「今日からは少しも気を抜けないね。少なくとも今日の相手は、1日目の予選を勝ち抜いてきた高ランク冒険者。退屈はしなさそうだよ」

 そう言う剣騎は、昨日とは異なり一切の娯楽道具を持ってきていない。

 それだけ集中しているということか。

「警戒してる冒険者はいるか?」

「そうだね……今日はトーナメント形式じゃなくて、サバイバル形式だから……神宮司しんぐうじ君に潰されないように上手く立ち回らないといけないね」
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