89 / 178
白熱の最強冒険者決定戦編
第89話 弱肉強食の世界に抗おうとする鬼畜上司
フィールドに残っている冒険者は30名。
残念ながら、Aランクともなると完全に倒しきることは難しい。
戦闘不能状態になれば脱落の戦い。
もちろん死者を出すことは禁止だし、死者を出した場合、強制退場&冒険者法違反で逮捕である。
『昨日一ノ瀬君が才斗だけは潰すって言ってたよ』
少し前の剣騎の言葉がよみがえる。
「最悪だな、それは」
一ノ瀬との訓練を思い出して、顔が引きつる。
彼は容赦がない。
最も戦いたくない冒険者のうちの1人だが、戦わざるを得ない可能性が高い冒険者の1人でもある。
Sランク冒険者12人がそれぞれ動き出す。
ほとんどはAランク冒険者を狩りにいくようだ。
ほんの少し同情するが、これが現実だから仕方がない。
弱い者は淘汰される。これがこの冒険者社会の暗黙の了解だ。俺も今日までそれに従ってきた。
予想されていた通りの、弱者狩り。
この世界は弱肉強食。
30名の生き残り冒険者が、剣騎や西園寺、【バトルホークス】の実力者たちに狩られていく。
俺はその様子を静かに見守り、できるだけ戦いには参加しない戦法を取っていた。
当然、観客には気付かれる。
冒険者界では、俺はモブじゃない。
今では西園寺や楓香と同じくらいに目立つ存在だ。そんな黒瀬才斗に期待している観客も多い。
『サボるなー! ちゃんと働けー!』
『あんたの戦いを見に来てんだぞこっちは!』
そうやって叫ばれると、フィールドの冒険者たちの注意まで引いてしまうからやめてほしい。
溜め息をつく。
そしてふと楓香たちと反対側の観客席を見上げる。
「姉さん……」
そこには、いつも通りの無表情で俺を見つめる天音姉さんの姿が。
表情は完全にポーカーフェイスだが、心配してくれているのがわかる。
乏しい感情表現ではあるが、姉さんにも感情はあるのだ。
Aランク冒険者はまだたくさん残っている。
全力で存在感を消すことに集中するのではなく、参戦することに重きを置こう。これは単なるバトルではなく、エンターテインメントなのだから。
そう思い、剣を構えた時だった。
――来る!
咄嗟の防御。
瞬間的な筋反応により、なんとか一大事になることを防いだ。
「このまま逃げ切るつもりだったか」
「今ちょうど動こうと思ってました」
敵意むき出しの声で挑発してきたのは一ノ瀬だ。
剣騎の言っていたことから考えると、今から俺を潰しにきたということだな。
「黒瀬、Sランク冒険者であれば決勝トーナメントに残れると油断していただろう?」
「そんなことは――」
「俺は弱い奴を最初に潰そうなどといった無様なことは考えん」
「それなら、少なくとも俺は弱くないってことですね」
俺の生意気な受け答えに、一ノ瀬が糸目で睨んでくる。
180超えの身長。
自分より高い位置から繰り出される剣撃。
紺色の長髪は後ろで1つに結んであり、彼の動きに合わせて激しく揺れている。
一ノ瀬の剣術は攻撃重視のナゴルニ―派だ。
前に前に繰り出される剣の突き。
足場を移動しながら、相手を後ろに追いやっていくスタイルが基本のフォームである。
俺はほどよく攻撃を流す技術で体にかかる負担を軽減すると、一ノ瀬を飛び越えるように大きく跳んだ。
後退している自分の状況を立て直すためだ。
ナゴルニ―派を相手にすると、どうしても最初は勢いに圧倒されて後ろに下がりがち。
だからこそ、ナゴルニ―派の冒険者と戦う時には態勢を立て直す技術が必要だ。
少し前の一ノ瀬との実戦形式の訓練が大いに役立った。
「そうはさせん」
一ノ瀬も跳躍する。
空中で1回転する俺に対し、直角に跳ぶことで攻撃を繰り出そうとしている。
だが、俺もそこでダメージを与えられるほど未熟じゃなかった。
回転の途中で体を開き、上から一ノ瀬の攻撃を防ぐ。
そのままカウンターを狙った。
とはいえ、ここで簡単にカウンターを受けるほど容易い相手じゃないのが一ノ瀬だ。
「貴様の攻撃など、容易に見抜ける」
「――ッ」
弾き返される剣。
その衝撃に耐えきれず、後方に飛ばされる。
だが、これは逆にチャンスだ。
距離を取ることができたし、また振り出しに戻すことができる。
「仕切り直しですね」
「そう思うか?」
一ノ瀬が弓矢の要領で剣を引くような動作をした。
――あの動き、どこかで見たような……。
「俺の超能を教えてやろう」
それからは一瞬だった。
「剣を矢のように飛ばし、狙った獲物を確実に仕留めることのできる、必殺技だ」
一ノ瀬がドヤ顔で必殺技について語っている。
そんな面白い状況なのにも関わらず、俺は命の危機を感じて最大限の警戒を彼に向けていた。
「また4年後に出直してこい」
剣を構える暇なく、一ノ瀬の剣が放たれた。
残念ながら、Aランクともなると完全に倒しきることは難しい。
戦闘不能状態になれば脱落の戦い。
もちろん死者を出すことは禁止だし、死者を出した場合、強制退場&冒険者法違反で逮捕である。
『昨日一ノ瀬君が才斗だけは潰すって言ってたよ』
少し前の剣騎の言葉がよみがえる。
「最悪だな、それは」
一ノ瀬との訓練を思い出して、顔が引きつる。
彼は容赦がない。
最も戦いたくない冒険者のうちの1人だが、戦わざるを得ない可能性が高い冒険者の1人でもある。
Sランク冒険者12人がそれぞれ動き出す。
ほとんどはAランク冒険者を狩りにいくようだ。
ほんの少し同情するが、これが現実だから仕方がない。
弱い者は淘汰される。これがこの冒険者社会の暗黙の了解だ。俺も今日までそれに従ってきた。
予想されていた通りの、弱者狩り。
この世界は弱肉強食。
30名の生き残り冒険者が、剣騎や西園寺、【バトルホークス】の実力者たちに狩られていく。
俺はその様子を静かに見守り、できるだけ戦いには参加しない戦法を取っていた。
当然、観客には気付かれる。
冒険者界では、俺はモブじゃない。
今では西園寺や楓香と同じくらいに目立つ存在だ。そんな黒瀬才斗に期待している観客も多い。
『サボるなー! ちゃんと働けー!』
『あんたの戦いを見に来てんだぞこっちは!』
そうやって叫ばれると、フィールドの冒険者たちの注意まで引いてしまうからやめてほしい。
溜め息をつく。
そしてふと楓香たちと反対側の観客席を見上げる。
「姉さん……」
そこには、いつも通りの無表情で俺を見つめる天音姉さんの姿が。
表情は完全にポーカーフェイスだが、心配してくれているのがわかる。
乏しい感情表現ではあるが、姉さんにも感情はあるのだ。
Aランク冒険者はまだたくさん残っている。
全力で存在感を消すことに集中するのではなく、参戦することに重きを置こう。これは単なるバトルではなく、エンターテインメントなのだから。
そう思い、剣を構えた時だった。
――来る!
咄嗟の防御。
瞬間的な筋反応により、なんとか一大事になることを防いだ。
「このまま逃げ切るつもりだったか」
「今ちょうど動こうと思ってました」
敵意むき出しの声で挑発してきたのは一ノ瀬だ。
剣騎の言っていたことから考えると、今から俺を潰しにきたということだな。
「黒瀬、Sランク冒険者であれば決勝トーナメントに残れると油断していただろう?」
「そんなことは――」
「俺は弱い奴を最初に潰そうなどといった無様なことは考えん」
「それなら、少なくとも俺は弱くないってことですね」
俺の生意気な受け答えに、一ノ瀬が糸目で睨んでくる。
180超えの身長。
自分より高い位置から繰り出される剣撃。
紺色の長髪は後ろで1つに結んであり、彼の動きに合わせて激しく揺れている。
一ノ瀬の剣術は攻撃重視のナゴルニ―派だ。
前に前に繰り出される剣の突き。
足場を移動しながら、相手を後ろに追いやっていくスタイルが基本のフォームである。
俺はほどよく攻撃を流す技術で体にかかる負担を軽減すると、一ノ瀬を飛び越えるように大きく跳んだ。
後退している自分の状況を立て直すためだ。
ナゴルニ―派を相手にすると、どうしても最初は勢いに圧倒されて後ろに下がりがち。
だからこそ、ナゴルニ―派の冒険者と戦う時には態勢を立て直す技術が必要だ。
少し前の一ノ瀬との実戦形式の訓練が大いに役立った。
「そうはさせん」
一ノ瀬も跳躍する。
空中で1回転する俺に対し、直角に跳ぶことで攻撃を繰り出そうとしている。
だが、俺もそこでダメージを与えられるほど未熟じゃなかった。
回転の途中で体を開き、上から一ノ瀬の攻撃を防ぐ。
そのままカウンターを狙った。
とはいえ、ここで簡単にカウンターを受けるほど容易い相手じゃないのが一ノ瀬だ。
「貴様の攻撃など、容易に見抜ける」
「――ッ」
弾き返される剣。
その衝撃に耐えきれず、後方に飛ばされる。
だが、これは逆にチャンスだ。
距離を取ることができたし、また振り出しに戻すことができる。
「仕切り直しですね」
「そう思うか?」
一ノ瀬が弓矢の要領で剣を引くような動作をした。
――あの動き、どこかで見たような……。
「俺の超能を教えてやろう」
それからは一瞬だった。
「剣を矢のように飛ばし、狙った獲物を確実に仕留めることのできる、必殺技だ」
一ノ瀬がドヤ顔で必殺技について語っている。
そんな面白い状況なのにも関わらず、俺は命の危機を感じて最大限の警戒を彼に向けていた。
「また4年後に出直してこい」
剣を構える暇なく、一ノ瀬の剣が放たれた。
あなたにおすすめの小説
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活
シン
ファンタジー
世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。
大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。
GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。
そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。
探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。
そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。
たまに有り得ない方向に話が飛びます。
一話短めです。
洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた
里奈使徒
キャラ文芸
白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。
財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。
計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。
しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。
これは愛なのか、それとも支配なのか?
偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?
マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。
「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——