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白熱の最強冒険者決定戦編
第93話 社長のふにゃふにゃ具合に衝撃を受ける幹部たち
「西園寺……?」
会議の間に広がる、水を打ったような静寂。
剣騎はいつものヤレヤレ顔。
いつも西園寺に怯えまくっている真一は目を真ん丸にして後ろにのけぞっていた。
残りの3名――真悠姉さん、雷電、一ノ瀬は、初めて見る西園寺のふにゃふにゃな姿に理解が追い付いていない様子だ。
「貴様は……?」
「……」
一ノ瀬の糸目も、今回はガッと大きく見開かれている。
これまで西園寺に抱いてきたイメージとまるでかけ離れていることで起こる、イメージと現実の不一致。
この現実を信じてしまうことより、今見た彼の姿は幻だったと思い込むことの方が、脳にとっては負担が少ない。
「んー」
涙目になり、プルプルと震える西園寺。
失礼かもしれないが、凄く可愛い。
まさか組織のボスにそんな感情を抱くとは思ってなかった。
今の西園寺には、いつもの威厳など1ミリもない。
「まあまあ、才斗の件は才斗自身で考えてもらうことにして、次の話に移ろうか」
なんとなく気まずくなった空気を見かねたのか、剣騎が話題を転換する。
こういう時に頼りになるのはいつも剣騎だ。
彼にはリーダーシップがあると思うし、敵を作らない立ち回りの賢さがある。独立して会社を立ち上げても、十分やっていけるだろう。
だが、問題はそう簡単なことじゃないらしい。
一ノ瀬たちは西園寺から視線を一切そらそうとしなかった。
「西園寺、これはどういうことだ?」
「何が言いたい?」
急にいつもの真剣な表情に戻り、聞き返す西園寺。
だが、もう誰も騙されない。
「貴様は……あんなに情けない奴だったのか……?」
「まあまあ一ノ瀬君、西園寺さんも人間だし、普段見せていない姿もあったということで――」
「貴様には聞いていない! 俺は西園寺に聞いている!」
瞬時にピリつく会議の間。
俺は西園寺がどんな反応を見せるのか、半分期待して観察していた。
視線の端では、真一が剣騎にこそこそと耳打ちしている。
「一ノ瀬」
西園寺が重々しく口を開いた。
真悠姉さんらの注目も一気に集まる。
「私にとって、黒瀬は息子のような存在だ。もしお前が才君を傷付けるような言葉を放つのであれば、それなりの対応をしなくてはならない」
「……確か、才斗ちゃ――才斗の両親と友達、だったとか……?」
恐る恐る、真悠姉さんが質問する。
「そうだ。そして才君の両親が亡くなったのは……弱かった私のせいだ。弱い自分に直面し、私は才君を守り抜くと誓った」
「俺の両親は闇派閥の連中に――」
「私が強ければ――」
「――ッ」
「――私が強ければ、誰も死ななかった! 私は自分の弱さを呪った。だが……呪うだけでは何も変わらない……」
西園寺の言葉にはリアルが詰まっていた。
この中で誰よりも強い存在から放たれる、『弱さ』という言葉。
西園寺でさえ、自分の無力さを嘆いている。
それなのに、俺たちはこのままでいいんだろうか。俺は復讐を遂げられるんだろうか……。
***
家に帰ると、パジャマ姿の楓香が待っていた。
ほんのりと漂うシャンプーの香り。
楓香は自分専用の桃シャンプー&ボディソープを使っている。いつも彼女から桃の匂いがするのは、それが原因だ。
「おかえりなさい、才斗くん。会議はどうでした?」
「いつも通り、さほど深刻な内容でもなかった」
結局のところ、俺が一ノ瀬に文句を言われ、西園寺のふにゃふにゃな本性が幹部の全員にバレてしまっただけだ。
今後は定期的に会議を開くということを伝えられ、その後は解散になった。
ただ……遠慮ない一ノ瀬の言葉が、俺の頭から離れない。
「才斗くん、今日は寝かせませんよ」
「……」
「才斗くん?」
「ああ、気にしないでくれ」
楓香が可愛らしく首を傾げる。
我に返った俺は、慌てて笑顔を作った。
だが、俺は笑顔を作るのが苦手だ。
「何かありました?」
「いや……別に」
「むぅー。何かあったんですね。教えてくださいよー」
「楓香が心配するようなことじゃない。それに、幹部での会議は秘密事項だ。恋人だとしても、その内容は教えられない」
「才斗くんの意地悪」
ぷくっと頬を膨らませ、ペロッと舌を出す楓香。
俺は優しく楓香を抱き締めた。
背中をゆっくりと撫でていく。楓香の体は温かく、柔らかい。
「やっぱり才斗くんってツンデレですよね」
「ツンデレは佐藤だと思うが」
「むぅー。わたしの前で別の女の子の名前出しちゃうんですかー?」
「ダメなのか?」
「ダメに決まってますよ。わたしの前ではわたしのことだけ考えてほしいんですぅ!」
「悪い」
「いいですよ。許しちゃいます」
へへっと。
楓香が笑みをこぼす。
その笑みを見ながら、俺はもう一度、一ノ瀬の言葉について考えた。
会議の間に広がる、水を打ったような静寂。
剣騎はいつものヤレヤレ顔。
いつも西園寺に怯えまくっている真一は目を真ん丸にして後ろにのけぞっていた。
残りの3名――真悠姉さん、雷電、一ノ瀬は、初めて見る西園寺のふにゃふにゃな姿に理解が追い付いていない様子だ。
「貴様は……?」
「……」
一ノ瀬の糸目も、今回はガッと大きく見開かれている。
これまで西園寺に抱いてきたイメージとまるでかけ離れていることで起こる、イメージと現実の不一致。
この現実を信じてしまうことより、今見た彼の姿は幻だったと思い込むことの方が、脳にとっては負担が少ない。
「んー」
涙目になり、プルプルと震える西園寺。
失礼かもしれないが、凄く可愛い。
まさか組織のボスにそんな感情を抱くとは思ってなかった。
今の西園寺には、いつもの威厳など1ミリもない。
「まあまあ、才斗の件は才斗自身で考えてもらうことにして、次の話に移ろうか」
なんとなく気まずくなった空気を見かねたのか、剣騎が話題を転換する。
こういう時に頼りになるのはいつも剣騎だ。
彼にはリーダーシップがあると思うし、敵を作らない立ち回りの賢さがある。独立して会社を立ち上げても、十分やっていけるだろう。
だが、問題はそう簡単なことじゃないらしい。
一ノ瀬たちは西園寺から視線を一切そらそうとしなかった。
「西園寺、これはどういうことだ?」
「何が言いたい?」
急にいつもの真剣な表情に戻り、聞き返す西園寺。
だが、もう誰も騙されない。
「貴様は……あんなに情けない奴だったのか……?」
「まあまあ一ノ瀬君、西園寺さんも人間だし、普段見せていない姿もあったということで――」
「貴様には聞いていない! 俺は西園寺に聞いている!」
瞬時にピリつく会議の間。
俺は西園寺がどんな反応を見せるのか、半分期待して観察していた。
視線の端では、真一が剣騎にこそこそと耳打ちしている。
「一ノ瀬」
西園寺が重々しく口を開いた。
真悠姉さんらの注目も一気に集まる。
「私にとって、黒瀬は息子のような存在だ。もしお前が才君を傷付けるような言葉を放つのであれば、それなりの対応をしなくてはならない」
「……確か、才斗ちゃ――才斗の両親と友達、だったとか……?」
恐る恐る、真悠姉さんが質問する。
「そうだ。そして才君の両親が亡くなったのは……弱かった私のせいだ。弱い自分に直面し、私は才君を守り抜くと誓った」
「俺の両親は闇派閥の連中に――」
「私が強ければ――」
「――ッ」
「――私が強ければ、誰も死ななかった! 私は自分の弱さを呪った。だが……呪うだけでは何も変わらない……」
西園寺の言葉にはリアルが詰まっていた。
この中で誰よりも強い存在から放たれる、『弱さ』という言葉。
西園寺でさえ、自分の無力さを嘆いている。
それなのに、俺たちはこのままでいいんだろうか。俺は復讐を遂げられるんだろうか……。
***
家に帰ると、パジャマ姿の楓香が待っていた。
ほんのりと漂うシャンプーの香り。
楓香は自分専用の桃シャンプー&ボディソープを使っている。いつも彼女から桃の匂いがするのは、それが原因だ。
「おかえりなさい、才斗くん。会議はどうでした?」
「いつも通り、さほど深刻な内容でもなかった」
結局のところ、俺が一ノ瀬に文句を言われ、西園寺のふにゃふにゃな本性が幹部の全員にバレてしまっただけだ。
今後は定期的に会議を開くということを伝えられ、その後は解散になった。
ただ……遠慮ない一ノ瀬の言葉が、俺の頭から離れない。
「才斗くん、今日は寝かせませんよ」
「……」
「才斗くん?」
「ああ、気にしないでくれ」
楓香が可愛らしく首を傾げる。
我に返った俺は、慌てて笑顔を作った。
だが、俺は笑顔を作るのが苦手だ。
「何かありました?」
「いや……別に」
「むぅー。何かあったんですね。教えてくださいよー」
「楓香が心配するようなことじゃない。それに、幹部での会議は秘密事項だ。恋人だとしても、その内容は教えられない」
「才斗くんの意地悪」
ぷくっと頬を膨らませ、ペロッと舌を出す楓香。
俺は優しく楓香を抱き締めた。
背中をゆっくりと撫でていく。楓香の体は温かく、柔らかい。
「やっぱり才斗くんってツンデレですよね」
「ツンデレは佐藤だと思うが」
「むぅー。わたしの前で別の女の子の名前出しちゃうんですかー?」
「ダメなのか?」
「ダメに決まってますよ。わたしの前ではわたしのことだけ考えてほしいんですぅ!」
「悪い」
「いいですよ。許しちゃいます」
へへっと。
楓香が笑みをこぼす。
その笑みを見ながら、俺はもう一度、一ノ瀬の言葉について考えた。
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