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白熱の最強冒険者決定戦編
第96話 ダンジョン冒険者に恋愛はいらないのかというタイトル回収
――決勝トーナメント、初戦敗退。
全員が高ランク冒険者で、トーナメント自体の基準が高いこともあるが、それでも……応援してくれる人がいただけに、この結果をすんなりと受け止めることはできなかった。
「ここは……」
目が覚めると、そこは控え室のベッドだった。
試合に負けた俺は、気絶したままここに運ばれたらしい。
当然だが、まったく記憶がないので少し不安になった。自分はどれだけの間気を失っていたのか。自分はどれだけの人を失望させたのか。
「才君……」
「社長……?」
「良かった」
ほっと溜め息をつく西園寺。
ずっと俺の様子を見てくれていたんだろうか。
だが、西園寺も西園寺で自分の戦いがあるはずだ。意識を研ぎ澄まし、来るべき決勝戦の準備をしているはずだ。
「試合はどうなってるんですか?」
「1回戦が終わり、上位8名が決まったところだ。これからは準々決勝がある」
「……社長は?」
西園寺と真一が戦って、どちらが勝つかなんてわかりきった話ではある。だが、一応聞いておいた。
真一も結構強いからな。
普通に。
「無事に1回戦を突破した」
西園寺は淡々と、それが当然であるかのように述べた。
真一と戦ってみての感想や、真一も強かったよ、というフォローもない。
彼にとっては、自分の勝利は当たり前のこと。油断はしてないだろう。ただ決勝を見据えているというだけだ。
「俺……弱いですね……」
「……」
思わず出た本音。
今回は特に、自分の弱さに失望した。
最近はそういった強者と遭遇するような出来事が多い。だから弱さを実感することは多かったが、それでも今回の初戦敗退は衝撃的なものだった。
「鬼龍院空心はどうだった? 自分が勝つ道筋は見えなかったか?」
「戦い方は単純だと思いました……俺に足りなかったのは、純粋な力です……」
「そうか」
「社長だったら――いや、なんでもないです」
西園寺ならどう勝つか。
それを聞こうとして、即座にやめる。
そんなことを聞いても無駄だ。西園寺もまた、理不尽に力があるのだ。こんなの愚問でしかない。
「私だったらどう戦っていたか。それが聞きたいか?」
「……はい」
「純粋な力が足りなかったと言ったが……本当にそう思うか?」
「……え?」
「もし私なら、純粋な力で鬼龍院に劣っていたとしても――まさに才君と同じ状況にいたとしても――自分の戦い方を貫いて勝つことができた自信がある」
西園寺は静かだった。
俺を落ち着けるような穏やかな声で言いつつも、内容はなかなかに挑発的なものだ。だが、それを西園寺が言っているという時点で、文句の付け所なんてない。
ただ、彼が言うことは真実。
それだけ。
「俺はどうすれば――」
「才君がここに運ばれてきた時、鬼龍院は私を見て、ただ一言、こう言った。こいつの戦い方には迷いがある、と」
「迷い? 俺の戦い方に?」
「彼は面白い男だ。それ以上は何も言わず、才君に大きな怪我がないことを確認するとすぐに出ていった。次の戦いに備えるために」
「社長は、鬼龍院さんの言っていたことがわかるんですか?」
期待を込めて、西園寺を見る。
もしかしたら、俺の弱さに直接効くような、効果的な言葉を与えてくれるかもしれない。
何か励ましの言葉をくれるかもしれない。
「本人に直接聞くといい。彼は一見話しにくいようだが、愛想は悪くない。素直に答えてくれるかはわからないが、ライバル企業の人間だからといって不愛想な態度を取ることはないだろう」
そう簡単に答えは得られない。
西園寺はそれを俺に伝えたいんだろうか。
それとも、ただ伝えるのが面倒なんだろうか。
「今、鬼龍院さんはどこですか?」
迷惑になるかもしれない。
だが、俺は今ここで、次のステップに移るために、新たな助言を求めた。
***
控え室を出ると、そこには鬼龍院がいた。
もしかしたら俺の心配をしてくれたのかもしれない。
それか、控え室横に設置されている自動販売機でたまたま飲み物を買っていたか。
「鬼龍院さん、少しいいですか?」
「……さっきのガキか」
「俺が迷ってるってどういうことですか?」
なんとなく、答えはわかっていた。
1週間前に一ノ瀬に煽られて以来、どうも気持ちがフラフラしているような感覚があった。
「てめぇはどう思う?」
「俺は……恋愛に囚われて、冒険者としての強さを追い求めることを怠っていたことが迷いだと思います」
恋愛は迷いだ。
ダンジョン冒険者に恋愛はいらない。
その言葉は、本当だった。
「馬鹿が。それが迷いなんだよ」
「……」
鬼龍院が軽蔑するような目で俺を見てきた。
それに対し、彼の言うことの意味がわからずに困惑する俺。
「知ってるか? 俺には妻と娘がいてな、世界で何よりも大切なのが、その2人だ」
「……結婚してるんですか?」
鬼龍院についての情報はほとんど持っていなかった。
【バトルホークス】のSランク冒険者。
ただそれだけ。
それだけの実力を備えている冒険者なのに、まさかの妻子持ちとは。
「大切な存在ができることで弱くなると思ってんなら、てめぇは一生弱いままだ」
鬼龍院が俺に背を向け、階段に向かって歩き出す。
「大切な存在、守るべき存在がいることで、俺たちは強くなれる。てめぇの仲間は、そんなことも教えてくれなかったってか?」
全員が高ランク冒険者で、トーナメント自体の基準が高いこともあるが、それでも……応援してくれる人がいただけに、この結果をすんなりと受け止めることはできなかった。
「ここは……」
目が覚めると、そこは控え室のベッドだった。
試合に負けた俺は、気絶したままここに運ばれたらしい。
当然だが、まったく記憶がないので少し不安になった。自分はどれだけの間気を失っていたのか。自分はどれだけの人を失望させたのか。
「才君……」
「社長……?」
「良かった」
ほっと溜め息をつく西園寺。
ずっと俺の様子を見てくれていたんだろうか。
だが、西園寺も西園寺で自分の戦いがあるはずだ。意識を研ぎ澄まし、来るべき決勝戦の準備をしているはずだ。
「試合はどうなってるんですか?」
「1回戦が終わり、上位8名が決まったところだ。これからは準々決勝がある」
「……社長は?」
西園寺と真一が戦って、どちらが勝つかなんてわかりきった話ではある。だが、一応聞いておいた。
真一も結構強いからな。
普通に。
「無事に1回戦を突破した」
西園寺は淡々と、それが当然であるかのように述べた。
真一と戦ってみての感想や、真一も強かったよ、というフォローもない。
彼にとっては、自分の勝利は当たり前のこと。油断はしてないだろう。ただ決勝を見据えているというだけだ。
「俺……弱いですね……」
「……」
思わず出た本音。
今回は特に、自分の弱さに失望した。
最近はそういった強者と遭遇するような出来事が多い。だから弱さを実感することは多かったが、それでも今回の初戦敗退は衝撃的なものだった。
「鬼龍院空心はどうだった? 自分が勝つ道筋は見えなかったか?」
「戦い方は単純だと思いました……俺に足りなかったのは、純粋な力です……」
「そうか」
「社長だったら――いや、なんでもないです」
西園寺ならどう勝つか。
それを聞こうとして、即座にやめる。
そんなことを聞いても無駄だ。西園寺もまた、理不尽に力があるのだ。こんなの愚問でしかない。
「私だったらどう戦っていたか。それが聞きたいか?」
「……はい」
「純粋な力が足りなかったと言ったが……本当にそう思うか?」
「……え?」
「もし私なら、純粋な力で鬼龍院に劣っていたとしても――まさに才君と同じ状況にいたとしても――自分の戦い方を貫いて勝つことができた自信がある」
西園寺は静かだった。
俺を落ち着けるような穏やかな声で言いつつも、内容はなかなかに挑発的なものだ。だが、それを西園寺が言っているという時点で、文句の付け所なんてない。
ただ、彼が言うことは真実。
それだけ。
「俺はどうすれば――」
「才君がここに運ばれてきた時、鬼龍院は私を見て、ただ一言、こう言った。こいつの戦い方には迷いがある、と」
「迷い? 俺の戦い方に?」
「彼は面白い男だ。それ以上は何も言わず、才君に大きな怪我がないことを確認するとすぐに出ていった。次の戦いに備えるために」
「社長は、鬼龍院さんの言っていたことがわかるんですか?」
期待を込めて、西園寺を見る。
もしかしたら、俺の弱さに直接効くような、効果的な言葉を与えてくれるかもしれない。
何か励ましの言葉をくれるかもしれない。
「本人に直接聞くといい。彼は一見話しにくいようだが、愛想は悪くない。素直に答えてくれるかはわからないが、ライバル企業の人間だからといって不愛想な態度を取ることはないだろう」
そう簡単に答えは得られない。
西園寺はそれを俺に伝えたいんだろうか。
それとも、ただ伝えるのが面倒なんだろうか。
「今、鬼龍院さんはどこですか?」
迷惑になるかもしれない。
だが、俺は今ここで、次のステップに移るために、新たな助言を求めた。
***
控え室を出ると、そこには鬼龍院がいた。
もしかしたら俺の心配をしてくれたのかもしれない。
それか、控え室横に設置されている自動販売機でたまたま飲み物を買っていたか。
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「……さっきのガキか」
「俺が迷ってるってどういうことですか?」
なんとなく、答えはわかっていた。
1週間前に一ノ瀬に煽られて以来、どうも気持ちがフラフラしているような感覚があった。
「てめぇはどう思う?」
「俺は……恋愛に囚われて、冒険者としての強さを追い求めることを怠っていたことが迷いだと思います」
恋愛は迷いだ。
ダンジョン冒険者に恋愛はいらない。
その言葉は、本当だった。
「馬鹿が。それが迷いなんだよ」
「……」
鬼龍院が軽蔑するような目で俺を見てきた。
それに対し、彼の言うことの意味がわからずに困惑する俺。
「知ってるか? 俺には妻と娘がいてな、世界で何よりも大切なのが、その2人だ」
「……結婚してるんですか?」
鬼龍院についての情報はほとんど持っていなかった。
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ただそれだけ。
それだけの実力を備えている冒険者なのに、まさかの妻子持ちとは。
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