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白熱の最強冒険者決定戦編
第107話 危うく死ぬところだったという大会後の挑戦意欲
最強冒険者決定戦は神宮司皇命の優勝で幕を閉じた。
予想通りというか、唯一のSSランク冒険者の勝率が圧倒的に高かったのは言うまでもない。
フィールドのど真ん中に表彰台が置かれ、その上に上位4名の冒険者が立っている。
3位決定戦はなかったので、剣騎と一ノ瀬が同率3位だ。
一ノ瀬はどうしても剣騎と戦いたかったらしいが、これが冒戦の伝統ということで却下されていた。個人的には2人の戦いも見たかったな。
どっちが勝つのかは本気でわからない。
表彰台に上がった一ノ瀬はかなり不服そうだったものの、剣騎の表情は晴れやかで、そのコントラストが観客にウケた。
西園寺は2位。
感情が読み取れない、いつもの威厳ある表情をしていて、彼が今何を思っているのかは誰にもわからない。
悔しいと思っているんだろうか。
神宮司くらい強い相手と戦うと、悔しいなんて感覚はなくなるような気がするが、西園寺は神宮司が公に出てくるまで日本最強の存在だったらしいし……いろいろ思うことはあるに違いない。
神宮司は1番高い表彰台で小さな胸を張り、【バトルホークス】のエンブレムが描かれている旗を誇らしげに眺めていた。
日本最強の存在に対して言うことじゃないかもしれないが、普通に可愛らしい。
今大会で神宮司のファンが大幅に増えたことは確実だな。
ファンダムの間で【ウルフパック】と【バトルホークス】の対立が起こりそうだ。
「今度の冒戦は4年後かぁ。おれはもう二度と出る気ない。もう無理や」
「……情けない」
「――ッ」
真一の弱々しい主張に反応したのは、意外にも姉さんだった。
結構ズバリと本音を言うんだな。
思ったことをそのまま言うあたり、やっぱり姉さんは姉さんだ。
「まあ4年もしたらみんな強くなるだろうし、俺たちでも少しは敵うようになってるんじゃないか? 社長とか神宮司さんにも」
ここは真一のフォローをしておこう。
「あのな、才斗。おれたちが強くなってる間にも、その倍のスピードで社長は強くなってるんやで」
せっかくフォローしてやったのに、急に諭すようなことを言われた。
少しムカつく。
「優しい優しい才斗くんは青木さんをフォローしようとしたんですよ! そんなこともわからないんですか?」
ここで楓香が頬をぷくっと膨らませた。
彼女には俺の言葉の意図が伝わっていたらしい。さすがは俺の彼女だ。
それにしても、これではまた真一が可哀そうだな。もうフォローする気はないが。
***
冒戦閉幕の翌日。
俺は早速ダンジョンに潜っていた。
ずっと体がうずうずしていた。
自分の弱さを知り、本当の強さを学んだ。
俺は大切な人を守るために、強くならなくてはならない。そのためには、1秒でも多くを自己鍛錬に費やし、ダンジョンの攻略を進めなければ……。
延期になっていたダンジョン遠征が、11月下旬に決定したと知らされた。
ダンジョン遠征では【ウルフパック】の幹部がダンジョンの未到達階層を目指して攻略を進める。今の自分を高めるのにちょうどいい機会。
今日は楓香抜きで、たった1人でダンジョンに来ている。
15階層。
準備運動にはちょうどいい。このまま20階層くらいまではソロでも行けるような気がする。
「そろそろサイクロプスが出てきそうな感じだな……」
大物モンスターの気配を感じ取った俺は、ミノタウロスの群れを殲滅しながら、闇の深い未到達エリアに足を踏み入れた。
ダンジョンは深層に行けば行くほど広くなる。
一度潜ったことのある階層でも、行ったことのない場所なんていくらでもあるのだ。
一般に、闇の深いところは危険だと言われている。モンスターが強化されるし、冒険者自身は周囲の把握が難しい分、ソロでは特に戦いにくい、と。
だが、俺にはシャドウライドがある。
闇が深いということは、影も深い。
ある意味それはアドバンテージだ。
巨大なモンスターの雄叫びが響く。
経験上、これはサイクロプスの雄叫びだ。敵を威嚇し、自分のパフォーマンスを高めるという目的がある。
サイクロプスは目が顔に1つしかない巨人で、身長は5メートルくらい。
肌は青っぽく、体は筋肉質だ。
巨大な棍棒を装備していることが多い。
暗闇の中で、自分より遥かに大きい存在が動いているのを感じる。俺に暗視能力はないが、強化された冒険者の五感で割と繊細に感じ取ることができる。
――来た!
咄嗟に剣を前に出し、攻撃を防ぐ。
案の定、剣に当たってきたのは金属製の棍棒だった。桁外れなパワーに、踏ん張る俺の足が地面に食い込む。
次の瞬間、シャドウライド。
サイクロプスの背後になるであろう位置に瞬間移動して、剣で斬り付ける。
だが――。
「――空振り!?」
感覚が狂っているのか、暗闇に翻弄されているのか。
剣は当たらなかった。
僅かな動揺。
敵が自分の力量を上回っている――それを直感した。
――15階層にもここまでのモンスターがいるとはな。
感心してる場合じゃないか。
気付けば、サイクロプスの棍棒は俺の腹にダイレクトに直撃していた。
激しい吐血。
内臓がえぐられたような気がする。気持ち悪い。
サイクロプスが吠え、俺の方に向かってきているのがわかった。よく見えないので、どうやって避ければいいのかわからない。逃げ場もない。
――ここで死ぬわけには、いかない!
なんとか立ち上がり、剣を構える。
だが――。
「きみは逃げたまえ。今のきみの状態では、このモンスターに太刀打ちできないだろう」
「あなたは……」
危うく死ぬところだった俺を助けてくれたのは、暗闇の中でも目立つほどの美しい銀髪を持つ、女冒険者だった。
どこか落ち着いていて、どこか色気があり、凛々しい声。
お尻にかかるほどの長い銀髪。
俺よりも高い身長に、抜群のスタイル。
背中しか見えないし、誰なのかもわからない。だが、この冒険者が自分よりも強いことは直感でわかった。
「ここはぼくが対処する。ミスター・黒瀬、きみはぼくのことなど気にせず逃げるといい」
《白熱の最強冒険者決定戦編 完結》
『ダンラブ』はまだまだ続く!
予想通りというか、唯一のSSランク冒険者の勝率が圧倒的に高かったのは言うまでもない。
フィールドのど真ん中に表彰台が置かれ、その上に上位4名の冒険者が立っている。
3位決定戦はなかったので、剣騎と一ノ瀬が同率3位だ。
一ノ瀬はどうしても剣騎と戦いたかったらしいが、これが冒戦の伝統ということで却下されていた。個人的には2人の戦いも見たかったな。
どっちが勝つのかは本気でわからない。
表彰台に上がった一ノ瀬はかなり不服そうだったものの、剣騎の表情は晴れやかで、そのコントラストが観客にウケた。
西園寺は2位。
感情が読み取れない、いつもの威厳ある表情をしていて、彼が今何を思っているのかは誰にもわからない。
悔しいと思っているんだろうか。
神宮司くらい強い相手と戦うと、悔しいなんて感覚はなくなるような気がするが、西園寺は神宮司が公に出てくるまで日本最強の存在だったらしいし……いろいろ思うことはあるに違いない。
神宮司は1番高い表彰台で小さな胸を張り、【バトルホークス】のエンブレムが描かれている旗を誇らしげに眺めていた。
日本最強の存在に対して言うことじゃないかもしれないが、普通に可愛らしい。
今大会で神宮司のファンが大幅に増えたことは確実だな。
ファンダムの間で【ウルフパック】と【バトルホークス】の対立が起こりそうだ。
「今度の冒戦は4年後かぁ。おれはもう二度と出る気ない。もう無理や」
「……情けない」
「――ッ」
真一の弱々しい主張に反応したのは、意外にも姉さんだった。
結構ズバリと本音を言うんだな。
思ったことをそのまま言うあたり、やっぱり姉さんは姉さんだ。
「まあ4年もしたらみんな強くなるだろうし、俺たちでも少しは敵うようになってるんじゃないか? 社長とか神宮司さんにも」
ここは真一のフォローをしておこう。
「あのな、才斗。おれたちが強くなってる間にも、その倍のスピードで社長は強くなってるんやで」
せっかくフォローしてやったのに、急に諭すようなことを言われた。
少しムカつく。
「優しい優しい才斗くんは青木さんをフォローしようとしたんですよ! そんなこともわからないんですか?」
ここで楓香が頬をぷくっと膨らませた。
彼女には俺の言葉の意図が伝わっていたらしい。さすがは俺の彼女だ。
それにしても、これではまた真一が可哀そうだな。もうフォローする気はないが。
***
冒戦閉幕の翌日。
俺は早速ダンジョンに潜っていた。
ずっと体がうずうずしていた。
自分の弱さを知り、本当の強さを学んだ。
俺は大切な人を守るために、強くならなくてはならない。そのためには、1秒でも多くを自己鍛錬に費やし、ダンジョンの攻略を進めなければ……。
延期になっていたダンジョン遠征が、11月下旬に決定したと知らされた。
ダンジョン遠征では【ウルフパック】の幹部がダンジョンの未到達階層を目指して攻略を進める。今の自分を高めるのにちょうどいい機会。
今日は楓香抜きで、たった1人でダンジョンに来ている。
15階層。
準備運動にはちょうどいい。このまま20階層くらいまではソロでも行けるような気がする。
「そろそろサイクロプスが出てきそうな感じだな……」
大物モンスターの気配を感じ取った俺は、ミノタウロスの群れを殲滅しながら、闇の深い未到達エリアに足を踏み入れた。
ダンジョンは深層に行けば行くほど広くなる。
一度潜ったことのある階層でも、行ったことのない場所なんていくらでもあるのだ。
一般に、闇の深いところは危険だと言われている。モンスターが強化されるし、冒険者自身は周囲の把握が難しい分、ソロでは特に戦いにくい、と。
だが、俺にはシャドウライドがある。
闇が深いということは、影も深い。
ある意味それはアドバンテージだ。
巨大なモンスターの雄叫びが響く。
経験上、これはサイクロプスの雄叫びだ。敵を威嚇し、自分のパフォーマンスを高めるという目的がある。
サイクロプスは目が顔に1つしかない巨人で、身長は5メートルくらい。
肌は青っぽく、体は筋肉質だ。
巨大な棍棒を装備していることが多い。
暗闇の中で、自分より遥かに大きい存在が動いているのを感じる。俺に暗視能力はないが、強化された冒険者の五感で割と繊細に感じ取ることができる。
――来た!
咄嗟に剣を前に出し、攻撃を防ぐ。
案の定、剣に当たってきたのは金属製の棍棒だった。桁外れなパワーに、踏ん張る俺の足が地面に食い込む。
次の瞬間、シャドウライド。
サイクロプスの背後になるであろう位置に瞬間移動して、剣で斬り付ける。
だが――。
「――空振り!?」
感覚が狂っているのか、暗闇に翻弄されているのか。
剣は当たらなかった。
僅かな動揺。
敵が自分の力量を上回っている――それを直感した。
――15階層にもここまでのモンスターがいるとはな。
感心してる場合じゃないか。
気付けば、サイクロプスの棍棒は俺の腹にダイレクトに直撃していた。
激しい吐血。
内臓がえぐられたような気がする。気持ち悪い。
サイクロプスが吠え、俺の方に向かってきているのがわかった。よく見えないので、どうやって避ければいいのかわからない。逃げ場もない。
――ここで死ぬわけには、いかない!
なんとか立ち上がり、剣を構える。
だが――。
「きみは逃げたまえ。今のきみの状態では、このモンスターに太刀打ちできないだろう」
「あなたは……」
危うく死ぬところだった俺を助けてくれたのは、暗闇の中でも目立つほどの美しい銀髪を持つ、女冒険者だった。
どこか落ち着いていて、どこか色気があり、凛々しい声。
お尻にかかるほどの長い銀髪。
俺よりも高い身長に、抜群のスタイル。
背中しか見えないし、誰なのかもわからない。だが、この冒険者が自分よりも強いことは直感でわかった。
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