ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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フロストハウル編

第108話 平日に社長から呼び出されるという緊張感

 冒戦が終わって2日が経過。
 10月15日、火曜日。

 俺は学校を休んで西園寺さいおんじリバーサイドに来ていた。というのも、西園寺に呼び出されたからだ。

 学校を休ませてまで呼び出すなんて、かなり深刻なことに違いない。
 昨日はダンジョンで死にかけた。だが、まだ誰にも報告していない。さすがの西園寺も知らないだろう。

 問題は、助けてくれたあの冒険者だな。

 あの女冒険者があの後どうなったのかはわからないが、サイクロプスに負けたとは思えない。オーラを感じ取ればある程度相手の力量はわかる。
 その上で言うが、あの人はとんでもなく強い冒険者だ。

「あれ、才斗さいとじゃないか! 今日は学校のはずだけど……呼び出された?」

「そうじゃなきゃ来ない」

 ビルの1階で、たまたま剣騎けんきに会った。
 俺を見て驚いていたから、本当に偶然なんだろう。

 エレベーターに乗り込もうとしていたので、俺も一緒に入る。2人きりなので、例の女冒険者のことについて聞いてみてもいいかもしれない。

「実は昨日、ダンジョンで銀髪の女冒険者に助けられた」

「助けられた? 才斗がピンチに陥ったってことかい?」

「15階層の、闇が深い場所だったんだ。サイクロプスにやられそうだったところを、その女冒険者に救われた。顔は確認できなかった」

「君の窮地を救える冒険者だから、Sランク並みってことだろう? 銀髪の、Sランク並みの強さを持つ女冒険者……知らないな」

「【バトルホークス】の冒険者にはいないか?」

「いないね。一応日本のSランク冒険者は全員把握してる。外国人冒険者とか?」

「普通にネイティブの日本語だった」

「んー、じゃあAランク冒険者とか?」

 その可能性もなくはないが、あのレベルのサイクロプスをAランク冒険者が倒すのは厳しいと思う。

 実際に近くで見た限り、俺より強そうだったのは確かだ。

「なかなか興味をそそる話だけど、僕はここで失礼するよ」

「ああ、また」

 剣騎は56階でエレベーターを降りた。

 剣騎のことだ。
 独自で銀髪の女冒険者について調べたりしてくれるかもしれない。期待するわけじゃないものの、彼は一度興味を持つと徹底的に調べ上げるタイプだ。

 次会う時には有益な情報をくれるかもしれない。



 ***



 最上階の70階には豪華な社長室がある。

 西園寺は1人、社長席に腰掛けて俺を待っていた。約束の時間は午前9時だったので、遅刻はしていない。

 今は8時47分。
 10分以上前行動ができてるな。

さい君、よく来てくれた。飲み物は何がいい?」

「……コーヒーをお願いします」

 もしかして、結構時間がかかる話なんだろうか。

 少なくとも、西園寺はいつも通りだ。

 ソファに座り、西園寺が直接淹れたコーヒーを飲む。
 彼がコーヒーを淹れている間、俺は70階からの綺麗な東京の景色を楽しんでいた。

 ガラス張りなので360度景色を満喫できる。さすがは大企業の社長だな。毎日これを眺めて仕事しているのか。

美味うまい……」

 西園寺が淹れるコーヒーはとんでもなく美味しい。新たな発見だ。

「それは良かった。コーヒーを淹れるのは得意なんだ」

「……」

 なんて返すのが正解かわからない。

「そう緊張する必要はない。わざわざ平日の朝に呼び出して悪かった。実は……才君に渡したいものがあって……」

「渡したいもの?」

 これが図書カード1万円分とかだったら面白いな。
 誕生日はとっくに過ぎているので、誕生日プレゼントではないと思うが……。

「これだ」

 西園寺が手渡ししてきたのは、美容室の無料チケットだった。普通にカットにシャンプー&トリートメント、ヘッドスパ付き。
 しかも、東京で1番とも言われている美容室のものだ。

「ありがとう……ございます……?」

「予約を取るのは大変だった。休日は3ヶ月先まで埋まっていたから平日に入れるしかなかったんだ」

「もう予約が入れてあるってことですか?」

「今日の午前9時半からだ」

「ん? 1時間後?」

「そうだ。しっかりリラックスしてきてくれ」

 わけがわからないまま、俺はビルから徒歩で10分程度の場所にある、美容室フロスト&プリュームに足を運んだ。



 ***



「9時半から予約してる者ですけど……」

 いかにも高級そうな扉を開け、美容室に入る。

 出迎えてくれたのは、長い艶のある黒髪の美人美容師だった。
 身長はかなり高い。俺は171センチであることを考えると、173センチくらいはあるだろうか。

 そしてスタイルがいい。
 胸は大きすぎず小さすぎず。

 整った顔立ちは中性的で、彫刻のような美しさと凛々しさを兼ね備えている。

「こちらに」

 モデルのような歩きで案内された。

 声はどこか落ち着いていて、どこか色気がある。

「本日担当させていただく、氷室ひむろです」

「よろしくお願いします」

 俺が挨拶すると、ふっと優しく微笑む氷室さん。

 天音あまね姉さんや真悠まゆ姉さんもかなりの美人だが、氷室さんには敵わない。
 全ての動作が色気に繋がり、女の魅力を生み出している。

「こちらこそよろしくお願いします、ミスター・黒瀬くろせ
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