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四階 能天使

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 翌日の朝、もう既に影響が出始めていた。食べるものが…ない。それだけで笑夢の存在が有難いものだったと実感した。食パンを加えて登校する。お弁当も作ってくれていたから…ない。
 もしかして…俺ってダメ人間だったんじゃないだろうか。生活力皆無で…というか、笑夢が来る前ってどんな生活してたっけ?あ、洗濯したっけ?もう…駄目だ…。
 教室に入り着席する。智一がこっちに来て心配そうな顔をしている。
 「おい?!どうした?!」
 「全然大丈夫…だよ?」
 「見えないって!いつもの姿はどこにやったんだ?!」
 「はは…家に置いてきた」
 「宝物みたいに言うなよ?」
 「あれは…今思えば宝物だったんだ。」
 「こ、壊れた?!」
 智一…ありがとう。心配してくれる友人が居るだけで大分気分が違うな。智一はあたりを見回して首を傾げる。
 「ん?笑夢はどうした?」
 「今日から数日…休みだよ?」
 「そ、そうか。あいつは優等生だから大丈夫だろうけど…何かあったのか?」
 何かあったんだろうね。俺にも何も言わずに行ったよ?ちょっと用事があったって言ってただけだったよ?
 「用事があるんだって」
 「へぇ…なんだろうな?」
 「さぁ…?何も聞いてないから」
 「え?仲いい肇にも…か?」
 「うん?なんで?」
 「普通いうんじゃないか?」
 普通言うのか…?聞いちゃいけないと思ってたし、聞かなかったけど。まぁ、普通って人間にしか適応されなくない?天使に普通はないのでは…なんなら天使の普通とか、心の読みあい、超能力の応酬…すごい事になりそう。
 「それで肇は朝から元気がないんだな?」
 「う~ん…栄養の偏りじゃない?」
 「???何を言ってる?」
 「ああ、こっちの事だから気にしないで…」
 本当に、今日からどうやって生活しようかな。とりあえず…買い物に行って…行って…どうする?出来合いの物を買おう。
 昼休みになり、購買に向かう。激戦区…という言葉が正しいのか?とんでもない人の数で埋め尽くされている。正直、前が見えないし、帰りたい。とりあえずかき分けて行き、パンを数個買って教室に帰る。
 「ふぅ…」
 「弁当どうした?」
 「あれは…古に伝わりし幻術だよ?」
 「なん…だと?!」
 クラスの数人が俺らのやり取りを聞いてクスクス笑っている。いやね、俺にとっても死活問題なんだよ?本当に幻術だよ…。パンを開けて食べる。もさもさしていて食べづらい。
 「何?肇…お前パン食べた事ないの?」
 「な、なんで?」
 「草食動物みたいに食べるじゃん?もさもさしてるとか思ってる?」
 「え?!なんで…さては心が読めるのか?」
 「んなわけないだろ?顔が物語ってるぞ」
 しょうがないよ、笑夢が来てからパンなんてほぼ食べてないし。食べる時は、クルトンになってるか、スープとかシチューとかにつけて食べるかしかしてなかった。
 「うん、もさもさしてて食べづらい」
 「そういうもんだろ?」
 「え?シチューとか、スープとか、クルトンとかあるじゃん?用途が」
 「お前…貴族か何か?」
 わぁ…贅沢してたんだ。感謝は募るけど、伝えられないや。でも、今日帰ってくると思うんだ?多分だけど…。帰ってくるよね?そのままさよならなんて事は…。
 放課後になって部活に足を運ぶ。何か落ち着かなくてそわそわする。笑夢が居ないだけでこんなに影響が出るなんて。
 「どうしたの?うちが相談に乗ろうか?」
 ルトが話しかけてきてくれる。相談に乗れる人は一人しかいないんだ…。ごめんね。
 「ありがとう、大丈夫だよ」
 「今日な、肇の様子がおかしいんだよ」
 「ね?なんかそわそわしているように見えるよ?」
 「そうかな?」
 何でこんなに的確に心情を読んでくる?!もしかして…本当に俺って、顔に出やすいのか?首を傾げていると、智一は頷いた。
 「そうなのか…。」
 「なんか、最近肇の事可愛く思えてきた」
 「ごめん…俺は女性が好き」
 「違う!!そう意味じゃないだろ?!」
 「え、うちは応援するよ?」
 「ちょっ?!ルトさん?!」
 智一の狼狽えている姿はちょっと面白かった。二人のおかげで少しだけ気分が和らいだ。
 「そういえば、合宿の話したらいいってよ!」
 「うちも!良いって言われたよ!」
 「早くない?俺まだ確認取ってすらいないや…。」
 「いやな、楽しみでしょうがないんだ…」
 「水着の女性が?」
 「最低…うち、怖くなってきた」
 「なんで俺の株が勝手に下がっていくんだよ?!俺何も言ってないじゃん!!」
 ははは、確かに。何も言ってない。顔も別に…スケベな顔をしているわけでもなかった。海の楽しみって何だろう?皆で行ける事の楽しさとかかな?
 「なんか修学旅行みたいで良くない?」
 「俺さ…行ったことないよ…」
 「うちも…」
 「……え?なんで?」
 「俺…顔が怖がられてたから諦めた」
 「うちは…友達が居なかった」
 急に皆、黙り込む。智一の表情は少しだけ暗くなる。「なんかごめん」という声が聞こえた。
 「なら、今回は楽しめるじゃん?」
 「まぁ、そうだね?」
 「結果オーライだ!俺が楽しみを教えてあげよう!」
 「枕投げ?」
 「なんで…そのことを…。」
 智一はがっくりと肩を落とす。定番なんだよね…。全然楽しそうだからいいんだけどね。どういう感じで投げるんだろうな。
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