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8話
しおりを挟む暗く深い闇の中、当てもなく歩いているそんな感覚。頭も身体もどこかふわふわと謎の浮遊感に包まれており、この状態に何の疑問を持つことはなかった。
俺の頭にあるのは、何処かにある出口に向かうそれだけだ。
暫く歩いていると、白い光が見えた。俺はその光が見えた瞬間出口だと思い走り出した。
その光を掴もうと手を伸ばした俺の手は何も掴めず空を切った。
そして、光は俺の元から離れていく。
「『待って』!」
反射的に出した声と誰かの声が被った。俺はその声の出所を向くとそこには、手を伸ばして泣いているレイアが居た。
『私は……………何てしてない。どうして信じてくれないの!?………ちゃん!………私を一人にしないでよ……』
ぷつぷつと何故かレイアの声は途切れて聞こえ、内容がよく分からない。
ただ、彼女が一人になってしまったのは何となく理解した。
俺は俺の女を悲しませることはしない。彼女達と一生を共にするのだから常に笑っていて欲しい。それが主人公から無理矢理奪った女だとしても、俺は彼女を彼女達を俺を選んで後悔なんて絶対にしないくらい幸せにしたい。
だから俺のすることは決まっている。俺は泣いているレイアに近づき、ニヒルに笑い告げる。
「なぁ、お前俺の女にならないか?」
そう声をかけたと同時に俺は彼女の手を引いた。そして、暗闇で閉ざされた世界は輝き始めた。
俺はあまりの眩しさに、目を細めながら最後にレイアの顔を見た。その時の表情は俺は絶対に忘れないだろう。陽だまりのような、可憐な笑顔を。
忘れないと、そう思った瞬間俺の意識は無くなった。
◇
「んあぁっー……ここ何処だっけ?」
瞼を開けると、こちらを心配そうに?見ているレイアが居た。
「私は……知らない……それより大丈夫?」
無表情ながらも声のトーンは少し落ちているので心配しているのだろうが、彼女の設定を知らない俺以外の奴だったら分からないくらいの違いだ。
「あー………そっか俺契約の時に気絶したんだっけ…別に身体に異常はないから大丈夫だな」
「それなら………良かった。急に動かなくなって……どうしようかと思った」
レイアは俺が大丈夫だと言うと、少しだけ頰を緩めた。
(相変わらず笑うと綺麗だな)
……あれ?初めて笑ったところを見たはずなのに何で既視感を覚えているんだ………そういや、さっき夢を見ていたような、そこで何かを見たのか?思い出せない。
「お前のせいなんだけど……まぁ、無事契約出来たしそんなことはいいか」
「ねぇ……レイク……契約をしてから身体が変……ポカポカする。……これは何?」
レイアはそう言うと巨大なお胸様を潰しながら、心臓の辺りを両手で抑えた。
「それは、多分俺とレイアが契約したこと出来たパスの影響だろう。レイアは以前の状態が分からんだろうが、その状態なら、前の状態で魔法を使った時よりも格段に強くなってるはずだ」
「魔法って…どうやって使うの?」
「魔法すら覚えてないのか……まぁ、契約してくれたんだそこも含めて教えてやるよ」
「ん……お願い」
「んんっ…じゃあ、精霊とは何かから教えよう。精霊とは精霊の祠の先にある精霊界に住んでいる種族だ。精霊の身体の基礎的な構造は人類と大体同じだが、人類が魔法を使うためには、魔心臓と言われる器官に精神力を流して魔力を変換する必要がある。だが、精霊は魔心臓がなくても魔法が使える。それは何んでだと思う?」
俺はただ説明を聞いていてもつまらないだろうと思い、レイアに質問してみた。
「……魔心臓以外に…精神力を変換する器官があるから……?」
「惜しいな、器官という小さい部位では無くて、正解は身体そのものが魔法を使うための媒体なんだ精霊は、そのため俺たち人類に比べて魔法を使う際の精神力の消費はかなり少ないのに威力が高い。理由は簡単で精神力を変換して作った魔力の漏れが無いからだ。人類は魔力に変換した際に身体の細胞に魔力がどうしても流れてしまい変換した魔力の七割を使うのが限界だ。だが、精霊は身体全体で魔力を生成するから余計な場所に魔力が流れないから無駄のない完璧な魔法が使えるんだ」
「……なるほど……」
「強力な魔法が使える代わりに、精霊は一つの属性魔法しか使えない。それは精神力を変換する際に魔力にその精霊が持つ適性属性が勝手に付与されるからだ。これだけ聞くと一つの属性しか使えない代償としては微妙だと思うだろうが精霊には上級魔法よりも遥かに威力の高い精霊魔法が使える。これはどう足掻こうと人類は使えない。さらに精霊は適性属性の魔法なら例え、放った魔法が敵のものだったとしても自身が操つれる。長々と説明したが、要するにレイアは無属性魔法のエキスパートってことだ」
「…じゃあ、私ってもしかして強い?」
「あぁ、かなり強いな。多分同じLevelなら今の俺じゃあ叶わないくらいには」
「Level?……」
新しく出てきた単語にレイアはまたも首を傾げた。
「そこの説明もいるか……こりゃ長くなるな」
俺はそう言って溜息を吐き、帰ったら両親に怒られるなーと遠い目になりながら思うのだった。
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