悪役令息に転生したので断罪回避します!のはずが、氷の王太子からの溺愛が止まりません

水凪しおん

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第十九話「二人の英雄、最後の戦い」

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 王都は、内戦の危機に瀕していた。ダリウス大公の残党が率いる反乱軍は、王都の南半分を制圧し、王宮へと迫りつつある。一方、アレクシス率いる王国軍は、王宮を中心とした北半分を死守し、両軍は市街地を挟んで、一触即発の睨み合いを続けていた。
「このまま市街戦になれば、民に大きな被害が出る。何としても、それは避けねば……」
 作戦司令部で、アレクシスは地図を睨みながら、苦渋の表情を浮かべていた。
 その時、司令部のテントに、ルキウスが入ってきた。彼は、豪華な礼服ではなく、動きやすい軽装の鎧を身につけている。
「アレクシス、俺に考えがある」
 ルキウスは、地図の一点を指さした。そこは、王都の地下に張り巡らされた、古い水道網の入口だった。
「反乱軍の司令部は、南地区の市庁舎にあるはずだ。この地下水路を使えば、少数の兵で、敵の背後に回り込むことができる」
 それは、非常に危険な賭けだった。しかし、成功すれば、敵の首脳部を直接叩き、一気に戦局を覆すことができるかもしれない。
「……分かった。その作戦を採用しよう」
 アレクシスは、しばらく考えた後、決断した。
「私が、本隊を率いて、正面から陽動攻撃を仕掛ける。その隙に、お前は、選りすぐりの精鋭だけを連れて、地下から潜入しろ」
「いや、俺一人で行く」
 ルキウスの言葉に、アレクシスは目を見開いた。
「何を馬鹿なことを言う! 危険すぎる!」
「大丈夫だ。俺は、兵士じゃない。戦う力はない。だが、この作戦を成功させるための、別の武器を持っている」
 ルキウスは、そう言って、自信ありげに微笑んで見せた。
 その夜、作戦は決行された。アレクシス率いる王国軍が、反乱軍の陣地に、大規模な陽動攻撃を開始する。反乱軍の注意が、すべて正面からの攻撃に引き付けられている隙に、ルキウスはたった一人で、地下水路へと侵入した。
 彼が向かったのは、反乱軍の司令部である市庁舎……の、隣にある、大聖堂だった。
 大聖堂の鐘楼にたどり着いたルキウスは、隠し持っていた拡声の魔道具を取り出した。そして、王都全体に響き渡るように、声を張り上げた。
「王都の民よ! そして、反乱軍の兵士たちよ! 聞いてほしい! 私は、ルキウス・フォン・エアハルトだ!」
 その声に、戦場で剣を交えていた両軍の兵士たちが、一斉に動きを止めた。
「反乱軍は、私を、古代王家の末裔として、新たな王に担ぎ上げようとしている! だが、私は、断じて王になることなど望まない!」
 ルキウスの、魂からの叫びが、夜の王都に響き渡る。
「私の願いは、ただ一つ! この国が平和であること! そして、私が愛する人、王太子アレクシス殿下の隣で、その平和な未来を、共に歩んでいくことだ!」
 彼は、そこで一度言葉を切り、大きく息を吸い込んだ。
「考えてみてほしい! もし私が王になれば、この国は再び、血で血を洗う内乱の時代に逆戻りするだろう! それが、本当に皆の望む未来なのか!?」
 その問いかけは、反乱軍の兵士たちの心を、大きく揺さぶった。彼らの多くは、大公の甘い言葉に騙され、大義があると信じて戦っていたにすぎない。しかし、その「大義名分」であるはずのルキウス本人が、それを真っ向から否定したのだ。
「武器を捨てろ! これ以上、無意味な血を流すな! 真の平和は、偽りの王を立てることでは、決して訪れない!」
 ルキウスの演説は、反乱軍の士気を、完全に打ち砕いた。彼らは、戦う理由を失い、次々と武器を捨てて、その場に膝をついた。
 司令部でその様子を知った反乱軍の首謀者たちは、自分たちの敗北を悟り、逃亡を図ろうとした。しかし、その行く手は、すでに地下から回り込んでいたアレクシスの精鋭部隊によって、完全に塞がれていた。
 戦いは、終わった。
 一人の血も流すことなく、たった一人の青年の、知恵と言葉の力によって、反乱は鎮圧されたのだ。
 夜が明け、朝日に照らされた王都で、アレクシスとルキウスは、再び相見えた。
「……無茶をしすぎだ、馬鹿者」
 アレクシスは、そう言って、ルキウスを力強く抱きしめた。その声は、震えていた。
「心配、しただろう?」
「当たり前だ……。だが、見事だった。さすがは、私の選んだ男だ」
 二人は、しばらくの間、固く抱き合ったまま、動かなかった。
 すべての戦いは、終わったのだ。ルキウスの知恵と、アレクシスの武力、そして、二人を信じる者たちの力が合わさり、ついに、王国に真の平和が訪れた。
 その中心には、寄り添い、互いを支え合う、二人の英雄の姿があった。
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